
こりゃまたスゴイものを掘り出してきたなあ。
モロッコのキーボード奏者、アブドゥ・エル・オマリが
76年に出したゆいいつのレコード “NUITS D´ÉTÉ” は、
欧米のコレクターたちの間でカルト化した人気盤でした。
17年にベルギーのラジオ・マルティコがLPリイシューして話題をさらいましたが、
これはその時以上のビッグ・ニュースなんじゃないかな。
なんといったって、ゴミ箱から放り出されたアブドゥ・エル・オマリの遺品のなかに、
驚くべき音源が詰まっていたというんだから、その発見の経緯からして運命的。
アブドゥ・エル・オマリは、大編成のオーケストラ伴奏が主流の70年代に、
ファルフィッサ・オルガン(イタリア製電子オルガン)を使って、
シャアビやグナーワなどモロッコの伝統音楽を革新するサウンドをクリエイトした、
まさしく異能と呼ぶべき才人。
サン・ラのコズミック・サウンドをホウフツさせる実験的なサウンドは、
当時のモロッコではあまりに先を行き過ぎていて、理解されはしなかったのでしょう。
エル・オマリが専業音楽家となることなく、
美容師として美容学校を開く道へと進んだことからも、それは明らかです。
けっして現地で再発見されることのなかったエル・オマリの才能は、
サイケデリック・ロック、スピリチュアル・ジャズ、電子音楽といった文脈から、
欧米のクレイジーなレコード・ディガーたちによる発掘が必然だったといえそうです。
エル・オマリが生まれ育ったアトラスの山々にこだまするエクスペリメンタルなサウンドは、
ハチロクの三連符ビートで、トランシーなグルーヴを巻き起こします。
ワー・ワー・ワトソンみたいなファンク・ギターと天上を飛び交うファルフィッサが交叉し、
湿り気を帯びたドラムスが重心の低いファンク・ビートを繰り出す、
モロッカン・エクスペリメンタル・サウンド。
よくぞゴミ箱から救出してくれたと拍手喝采したい、奇跡の逸品です。
Abdou El Omari "LOST TAPE-1980" Born Bad/Serendip Lab BB191CD/SER018












