

昨年メンデス・ブラザーズを再発見して、
フォゴ島のさまざまな伝統音楽を知ることができました。
今回入手したカーボ・ヴェルデ音楽CDの中に、
メンデス・ブラザーズのレーベル、MBから出た男性シンガーのアルバムがあって、
調べてみたらこの人もフォゴ島の人。
タルルことアウグスト・メンデス・ピレスは、
53年フォゴ島サン・フィリーペ生まれで、本作が初アルバムとのこと。ソングリストには、
タライア・バシュ、ブラガ、ブリアル、カニザーデといったリズム形式が書かれていて、
フォゴ島の伝統音楽をベースとしているのがわかります。
カニザーデは仮面ダンスの音楽カニンザディと同じものでしょう。
それで思い出しましたよ、この人の07年作を持っていたことを。
棚からCDを取り出してソングリストを見ると、やはりブラガ・マリア、タライア・バシュ、
ミジュ・ナ・ピロン、ブリアル、カニザーデといったクレジットが見つかります。
カーボ・ヴェルデものでこんなに知らないリズムばかりのアルバムは初めてだったので、
記憶に残っていました。そうか、フォゴ島由来だったんですね。
02年作の初アルバムは、涼しげなアコーディオンに導かれて始まる
タライア・バシュの1曲目から、カヴァキーニョが刻むリズムに
テナー・サックスやソプラノ・サックスが絡んで、
軽快なダンス・リズムで楽しませてくれます。
プロデュース、アレンジ、エンジニアリングはラミロ・メンデスで、
バークリー卒のポップス職人の手腕は、さすがのハイ・クオリティ。
女性コーラスなども配して、ヌケのいいキレのあるサウンドを聞かせてくれます。
多彩なリズムを前面に打ち出したプロダクションが、成功していますね。
これに比べると、マルク・ゴンサルヴィスという人がプロデュースした
07年の2作目はシンセ音がチープで、だいぶ聴き劣りします。
サンビスタに似た味わいのあるタルルのスモーキーなヴォーカルは、悪くないんだけどねえ。
ちなみにこの2作目は、タルルが04年にアメリカへ渡ってから制作したアルバムです。

タルルは90年代にフォゴ島の伝統音楽グループ、
ライース・ジ・ジャルフォゴを結成したオリジネイターだとのこと。
99年にオコラから出たライース・ジ・ジャルフォゴのCDがあるので
さっそくチェックしたんですが、ここにタルルの名は見つかりませんでした。
タルルのソロ・アルバムはこの2作しか残していないようですが、
現在もアメリカで音楽活動は続けているようです。
Talulu "BRAGA MARIA" MB B0019 (2002)
Talulu "DJARFOGO ALIN TA BAI" no label no number (2007)
Raíz Di Djarfogo "CAP-VERT" Ocora C560150 (1999)