
社会人になって2年目の82年頃だったと思うんですけど、
当時一家に一台となりつつあったヴィデオを買うかどうか迷っていた時に、
背中を押す決め手となったのが、イエロー・マジック・オーケストラでした。
彼らの初のワールド・ツアー、79年ロス・アンジェルス公演のヴィデオ・ソフトが、
ビクターから出ていたんですね。
すでにさんざん目にしていた映像だったので、
これが家でいつでも好きなだけ観れるとあって、矢も盾もたまらずヴィデオを購入したんでした。
その映像を繰り返し観ていたのは、その2年前の大学4年の頃。
当時付き合っていた彼女との待ち合わせに、
新宿高野の最上階にあったフルーツパーラーをよく使ってたんですけど、
そこに大きなプロジェクターがあって、
イエロー・マジック・オーケストラの30分弱のライヴ・ヴィデオを、
いつもBGMがわりに繰り返し映写してたんです。
これが観たくて、いつも彼女との待ち合わせの1時間前に行っては、
画面釘付けだったんですけど、
何に釘付けだったかといえば、渡辺香津美のギター・ソロ。
このライヴのキモは渡辺香津美だったんですね。彼がいたからこそ、
図らずもYMOメンバー3人のミュージシャンシップがムキ出しになり、
当時の3人が否定していたグルーヴを巻き起こす結果になっていたのです。
3人がどんなにジャストなビートで演奏しようとしても、
香津美がめちゃくちゃニュアンス豊かで有機的なソロを弾くので、
3人もそれに巻き込まれていってしまうところが見どころとなっていました。
もうおわかりかと思いますが、
これが『PUBLIC PRESSURE 公的抑圧』のもとになったライヴです。
レコードの方は、契約の関係で渡辺香津美のギターがカットされ、
坂本龍一がシンセをオーヴァーダブして出されましたが、
ヴィデオがOKだったのは、ぼくにとってはラッキーでした。
「千のナイフ 1000 Knives」では、起承転結を見事に構成してみせる香津美のソロに煽られ、
香津美に引き継がれた坂本が必死に長いソロを弾いてみたり、
「東風 Tong Poo」では、チャック・レイニーをホーフツとさせる細野さんのベースにのって、
香津美が生涯ベストといってもいい、神がかり的なソロ・パフォーマンスを繰り広げます。
正直ぼくはYMOにはまったく興味が持てませんでしたが、
このライヴはテクノでもポップでもありゃしない、もろにフュージョンだったわけで、
(今月号のミュージック・マガジンで高橋健太郎さんは「ジャズ・ファンク」と形容してますね)
だからこそ、ぼくはこのライヴに即ホレこんだのでした。
その後このライヴ、映像の方はDVD化され、音源の方もディスク化されましたが、
非YMOファンのぼくの大のフェヴァリット・アルバムとなりました。
79年のツアーのライヴは、ほかにも『FAKER HOLIC』にまとめられましたが、
香津美のソロ・パフォーマンスでこの時以上のものは、残念ながら聞けませんでした。
やっぱり、この79年8月4日のグリーク・シアターには、
香津美に何かが降りてきていたのかもしれません。
[DVD] YMO 「YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR」 東芝EMI TOBF5024
Yellow Magic Orchestra 「LIVE AT GREEK THEATER 1979」 アルファ ALCA5150