

ペルー山岳音楽の至宝ともいうべきハイメ・グアルディアの新作というので、
おおっと前のめりになって手に入れたら、すでに2年前に出ていたんですね。
ったくもー、ハイメくらいの大物の新作、ちゃんと流通させてほしいなぁ。
チーチャとか流行のイロモノ・グローカルばっかりに目を奪われていないでさ。
思わず愚痴っちゃいましたけど、
ペピータ・ガルシア・ミロという女性歌手とデュオをしたこの新作、パッケージがとても凝っています。
観音開きになっている表紙の扉を開けると、ブックレットを収めたホルダーが現れ、
ホルダーを開くとその下にCDが収められているという作りになっています。
実に手の込んだデザインで、手作り感の伝わる趣味の良さに嬉しくなっちゃいますねえ。
パッケージ好きとしては、パッケージ内のデザインや美しい写真を多数添えたブックレットともども、
丁寧な仕事を施したアート・ディレクションに、喝采を贈りたくなります。
そんな制作者の愛情がいっぱいに伝わるこのアルバム、
ギターのホセ・グアルディア、アルパのグレゴリオ・コンドリ、
ヴァイオリンのチマンゴ・ラレスという3人の名手を加えた楽団編成で、
ハイメとペピータが、ウァイノやヤラビなどの伝統的なレパートリーを歌っています。
古老然としたハイメの渋い歌と、スウィートなペピータのハイトーンの歌声が絶妙なバランスで、
「アンデスの魅惑」というタイトルそのままに、みずみずしい山岳音楽を彩りよく飾っているのでした。
アルパやヴァイオリンが加わったことで、サウンドにはアヤクーチョの民俗色が濃く表れていますが、
ハイメの卓越したチャランゴ演奏とペピータの土臭さのない澄んだ歌声は、
むしろ音楽を洗練へと引っ張る作用をしていて、
フォークロアな大衆音楽が芸術的洗練を極めた好サンプルともいえそうです。
音がとても良いので、気になってクレジットを見てみたら、
レコーディングはリマで行われていますけれど、ミックスとマスタリングはバルセロナとなっていて、
制作陣のこのアルバムへの力の入れようが、はっきりとわかりますね。
その後、このアルバムと同じメンバーによるコンサートが行われ、
2010年1月28日、リマの日系ペルー人劇場(!)でのライヴがDVD化されています。
巨体のハイメが小さなチャランゴを胸元高く抱えて弾く姿は、
KONISHIKIがウクレレを弾く姿そっくり。
かなりのご老体とお見受けしますが、プレイはまったく衰えておらず、
キレ味するどいリズム感に圧倒されます。
中盤でペルー南部アプリマック県出身のギター弾き語りの名手、
マヌエル・シルバが登場して2曲歌うのは、DVDだけのお楽しみ。
アルパとヴァイオリンのデュオ演奏もあったりと、
スタジオ盤とはまた違った演目が楽しめ、ファンにはこのDVDも必携でしょう。
ハイメ翁がお元気なうちに、ぜひ生で聴きたいものですけど、来日を望むのは無理でしょうか。
Jaime Guardia Y Pepita García-Miró "ENCANTOS ANDINOS" Cernícalo Producciones no number (2009)
[DVD] Jaime Guardia Y Pepita García-Miró "ENCANTOS ANDINOS : CONCIENTO EN EL TEATRO PERUANO JAPONÉS" Cernícalo Producciones no number (2010)