
2年前、中西レモンの『ひなのいえづと』を聴いて舌を巻いた、
あがさのプロデュースとアレンジ能力。
https://bunboni.livedoor.blog/2022-10-06
そのあがさと、ブルガリア民謡を現地で学んで、
ブルガリア国営テレビや国営ラジオの民謡番組に出演した経歴を持つ
佐藤みゆきが組んだすずめのティアーズの初アルバムが、
これまたトンデモな傑作。
江州音頭とブルガリア民謡が接続するわ、
神奈川県の洗濯歌にブルガリアの洗濯歌が接続するわ、
秋田の門付けの祝い歌とセルビア民謡が接続するわ、
アンコにトゥバの歌が挟み込まれるわ。
その奇抜なアイディアに驚くばかりなんですけれど、
そこになんら作為を感じさせないところがイイんだな。
この二人の良さは、その自然体ぶり。
探求心のままに世界の音楽を吸収してきたのであろう、
個人の出会いの偶然の産物が、
音楽をとてもしなやかにしています。
伝統を背負ったり、ルーツに縛られる者にはできない身軽さですね。
研究の末といった知に傾いたところがないのもイイ。
歌の由来に共通項を見出して、全く異質の音楽を接続しても、
心にスッとその歌と演奏が入り込んでくるのは、
ネラっていない、意図を持たない、良い意味での無邪気さゆえでしょう。
先日すずめのティアーズと中西レモンの3人のライヴを体験して驚いたのは、
あずさが弾くナイロン弦ギター。中西レモンのアルバムを聴いたときには、
ジャズ・コードやテンション・ノートを使っていないように聞こえたんですが、
じっさいのライヴを観たらバリバリ使ってました。
フラット・セブンス、ナインス、サーティーンス、ディミニッシュ、
さらにパッシング・ノートまで効果的に使い、奄美民謡の「糸繰り節」なんて、
めちゃジャジーになってましたけれど、ジャズ・コードが悪目立ちしないんですね。

ブラジル音楽のハーモニーから
学び取ったコード感覚なのかも。
あずさと地声による
二声のポリフォニーで歌う、
佐藤めぐみの声の良さにも
感じ入りました。
佐藤の声には華があり、
中西レモンに負けない
強い声を持っています。
あずさはギターとフレーム・ドラム、
佐藤はブルガリアの縦笛カヴァルと
メロディカと錫杖を演奏。
佐藤の歌ぢからと選曲を、
あずさのアレンジとプロデュース能力で
まとめあげる、すずめのティアーズ。
日本の音楽もワールド・ミュージック時代
からのナレッジが積みあがり、演者自身の
スキルが上がったのを実感します。

すずめのティアーズ 「SPARROW’S ARROWS FLY SO HIGH」 ドヤサ! DYS007 (2024)