
じゃがたらから40年。
アフロビートの消化にかくも時間がかかるものなのかと、眩暈がしました。
アフリカ音楽に感化された人間にとって、
日本人で同じ志を持つ音楽家を応援したくなるのは人情なれど、
残念ながらアフロビートを取り入れようとした日本のバンドで、
支持できるバンドに出会えたことはありませんでした。
思えばジャズのミュージシャンがヒップ・ホップを咀嚼するのだって、
ものすごく時間がかかったんだからねえ。
83年のハービー・ハンコックの『フューチャー・ショック』や、
92年のマイルズ・デイヴィスの『ドゥー・バップ』から、
ロバート・グラスパーの『ブラック・レディオ』まで
30年から40年という時を要したんだもんなあ。
日本人で初めてアフロビートを我がものとしたのが、このアジャテです。
江戸祭囃子とアフロビートとの融合だなんて、想像さえしませんでした。
しかもそれはアイディアの勝利などでは決してなく、
音楽家が積み重ねてきた音楽体験が地に足付いたものだからこそ、
実った果実だということを強く実感させるバンドです。
4作目を数えるという新作を聴くまで、このバンドの存在に気付かず、
不明を恥じて19年の前作も一緒に買いました。
リーダーのジョン今枝が、ガーナやブルキナ・ファソへ遊学して
現地の葬儀を実体験し、そのエネルギーを自分も表現したいと考えたことが、
バンド結成の動機になったとのこと。
旧世代の音楽家が、自分の文化とは異質の音楽(=アフロビート)に
衝撃を受けてそれを学び取ろうとしたのに比べると、
気負いがなく、余計な憧れや不要なコンプレックスも介在せずに
素直にその音楽と向き合っている、そんな新しい世代の強みを感じます。
異国の音楽に共感できる部分や通じ合える要素を見出して、
自分たちの音楽の営みの中に表現しようとするアティチュード。
異国の音楽も日本の伝統音楽も、
あらゆる音楽を等価で参照するデジタル世代だからこそ、
到達できた地平なんですね。
篠笛を吹く音楽家との出会いも、そうした共感にもとづいているから、
アイディア先行でアタマでっかちになりがちだった
旧世代の教養主義とは無縁の、風通しの良さがあるんじゃないでしょうか。
竹で自作したギターやシロフォンなどを取り入れているのも、
音楽家個人の感覚に忠実な試みなので、しっくりと音楽になじんでいて、
なんら違和を感じさせません。
前作のラストにボーナス・トラックとして収録されたライヴ演奏が素晴らしくて、
客席のポータブル・レコーダーで録音したという
音質の難も忘れて、夢中になりました。
次作はライヴ盤を期待したいな。
それにしても、中西レモンやすずめのティアーズにも思ったことだけれど、
ワールド・ミュージック旧世代が彼我の差ばかりを意識して、
同じ地平に立つことすらできなかったのに比べ、
新世代の彼らは同じ地平に立ち、みずからの身体感覚で
てらいなく音楽を実践するしなやかさを持っていて、まぶしく見えますよ。
大谷翔平の名言「憧れるのをやめましょう」は、
音楽の世界でも通じていたんですね。
Ajate 「DALA TONI」 アジャテワークス/ライス AER3146 (2024)
Ajate 「ALO」 アジャテワークス AJT007 (2019)