Muluu Baqqalaa  DAMMAA SHOOLEE KIYYAA.jpg Muluu Baqqalaa  AKKANA DUBBIIN.jpg

こちらも在外エチオピア人の新作。
オーストラリア、メルボルン郊外フィッツロイに居を移した
オロモ人シンガー・ソングライター、ムル・バッカラの
デビュー作 “DAMMAA SHOOLEE KIYYAA” と、
2作目の “AKKANA DUBBIIN” を2イン1CD化した作品です。

注目はムル・バッカラがオロモ人だということ。
これまで在外エチオピア人歌手というとアムハラ人ばかりで、
オロモ人歌手とは初めての出会いなんじゃないかしらん。
オロモ人シンガー・ソグライターといえば、記憶に新しいのは、
20年に暗殺されたハチャル・フンデサでしょう。
https://bunboni.livedoor.blog/2021-10-19

オロモ人はエチオピア人口の3分の1を占める最大の民族でありながら、
長年抑圧され、迫害を受けてきた民族です。
ムル自身も幼少期に家族や親戚が拷問を受けたり、
死刑に処された隣人がいたりという過酷な体験をしていて、
そうしたトラウマが彼女に音楽表現へと向かわせたそうです。
YouTubeで観ることのできるムルのヴィデオには、
銃を手にして歌っている姿もあり、その歌の内容が察せられます。

19歳で学業を離れて音楽界入りし、07年にデビュー・シングルをリリース。
以後22枚のシングルを出しているというくらいだから、
エチオピア時代にオロモ・コミュニティで確固とした人気を築いたようです。
17年にオロモ・コミュニティの招きで、オーストラリアでコンサートを行い、
オロモ・ディアスポラの集まりで演奏するうちに、
多くの友人が政治犯として投獄されたことを聞き、
帰国するのはあまりに危険と、そのままオーストラリアに残ることにしたのですね。

デビュー作の “DAMMAA SHOOLEE KIYYAA”、
2作目の “AKKANA DUBBIIN” ともに、
エチオピア時代に残したシングルをまとめたアルバムらしく、
クレジットがないので詳細は不明ですが、YouTube のクレジットを参照すると、
おおむねクロノロジカルに並べられていると思われます。

過去15年近くにリリースした曲を集めてCD化することができたのも。
安全なオーストラリアという地に移ったからこそなのかもしれません。
CDリリースしたのは、「亡命中の音楽」を名乗る非営利レーベルで、
スーダン、中国、ケニヤ、エリトリアといったアーティストを手がけていて、
多文化主義を掲げたオーストラリアのレーベルならではでしょうか。

デビュー当初と思われる “DAMMAA SHOOLEE KIYYAA” の前半などは、
オロモらしいずんどこビートの似たような曲調が続き、
プロダクションの貧弱さは否定できません。
しかし “AKKANA DUBBIIN” になると、サウンドにヴァラエティが出て、
ギターやサックスが印象的な場面も多く出てきます。

そしてなんといっても、ムルのキレのある歌いっぷりがいいんです。
若さ溢れるデビュー時から、力量のある歌いぶりで、
コブシ回しの固さも歌にグルーヴを与えていて、聴きごたえがあります。

オーストラリアでの新録音も期待したい、オロモ・ディアスポラの逸材です。

Muluu Baqqalaa "DAMMAA SHOOLEE KIYYAA / AKKANA DUBBIIN" Music In Exile MIE028 (2023)