
昨年初めて石当あゆみというサックス奏者を知って、
ノー・ウェイヴが蘇った!とコーフンしたんですが、
年明け1月3日に出た新作を聴いて、ますますその感は強まりましたよ。
新作はドラムスとギターのベースレスのトリオ編成なんですが、
ロナルド・シャノン・ジャクソンとジェイムズ・ブラッド・ウルマーのコンビを思わす、
ケヴィン・シェイのドラムスとジョージ・ドラグンズのギターにブッとびました。
だけど、レーベル元の577がこのトリオを紹介するテキストには、
「パンク」としか表現していないんですね。
ぼくにはオーネットのプライム・タイムとしか聞こえないんだけどなあ。
ケヴィン・シェイは、90年代からアヴァン・ジャズや
実験音楽のシーンで活動してきたヴェテランで、
ヴァーノン・リード、マーク・リーボウ、メルヴィン・ギブス、
グレアム・ヘインズなどとの共演歴を持っている人だそう。
一方、ジョージ・ドラグンスはハードコア・シーンで活躍するギタリストで、
灰野敬二あたりと近い音楽性の持ち主のよう。
シェイとドラグンズは、90年代半ばにエクスペリメンタル・ロック・バンドの
ストーム&ストレスのメンバーとして一緒に演奏した同士で、
どうやら二人ともオーネット・コールマンとはホントに関係なさそう。
それなのに、なんでこれほどハーモロディックなトーナリティを聞かせるのか。
う~ん、ナゾだなあ。
石当のサックスは、もはやサックスとはわからないほど
エフェクトでめちゃくちゃに加工していて、シンセやワウワウやリコーダーなど、
さまざまな楽器の音色を模倣しています。
ドラムスとギターが奔放に暴れ回る後方で、
もごもご、ぷかぷかと珍妙な音色を繰り広げたり、
空を切り裂くようなエッジの効いたシンセの音色で、
ダビーな空間を生み出していったり、
たえずアンサンブルに緊張をもたらす役回りをしているんですね。
オーネットと違うのは、はっきりとしたメロディのあるテーマがなく、
オーネット・ミュージックの「おもしろうてやがて悲しき」みたいな
ユーモアやアイロニーとは無縁なところでしょうか。
3人の混沌とした即興は、やはりオーネットではなく、
ハードコア・パンクのザ・メステティックスの方が近いのかも。
奔放でアナーキーだけれど、どこか整合感のある集団即興。
定型のビートから外れたリズムで煽り立てる変幻自在なドラミングがもたらす、
ハーモロディック的快感が、ぼくにとってこの音楽の最大の魅力です。
Ayumi Ishito "ROBOQUARIANS, VOL. 2" 577 5934-2 (2025)