Damily & Toliara Tsapiky Band  FIHISA
ダミリ一座の来日でマダガスカルのツァピキが日本に初上陸して、はや9年。
18年に出たダミリの前作は、フランスのスタジオ録音のせいで
サウンドがクリーンになりすぎていて、ガッカリだったんですが、
今作はツァピキ本来の野性味をあらわにしたアルバムに仕上がりました。

いまはフランスに暮らすダミリとバンド・メンバーですが、
23年にマダガスカルに暮らすダミリの母親メロが亡くなったことから、
埋葬儀式に参列するためにメンバー全員で帰郷して、
あわせてレコーディングする計画がもたれようです。
今回はいつものメンバーに、アコーディオン奏者が新たに加わっています。
ジャケットのアンブレラの中央に掲げられている写真がメロのようです。

儀式の1ヶ月前にメンバーとエンジニアほかスタッフたちは
マダガスカルに到着してリハーサルを行い、トゥリアラでコンサートを開きました。
そして儀式が行われるトンゴボリに向かおうとしていたところ、
巨大サイクロンのフレディがマダガスカル南東部を直撃して、
未曽有の大混乱となってしまいます。

空路も道路も寸断され、トンゴボリで合流する予定のチームも
バラバラとなってしまい、それぞれが目的地を目指して、
洪水に見舞われ荒れ放題の陸路を向かうことになります。
葬儀の祝宴はすでに始まっていて、予定より5日遅れてようやく全員到着。
埋葬儀式で盛り上がる村の一角に、
藁葺き小屋の移動式レコーディング・スタジオが組み立てられました。

ヴォーカル・マイクとギターはインド製のラウド・スピーカーに、
ベースとアコーディオンは中国製のカラオケ・コンソールに接続するという、
現地マナーのツァピキのセッティングが整えられ、
当初録音に6日間を予定していたのに、わずか10数時間しかないという
最悪の条件下で3曲が録音されました。
そしてほうほうのていで全員がトゥリアラに戻り、
疲労困憊の末に残り3曲をワン・テイクでレコーディングし、
壮絶なプロジェクトが終了したといいます。

こうしてレコーディングされた本作は、
ツァピキの息吹をイキイキと伝える見事な録音となりました。
マダガスカルのみならず南部アフリカに甚大な被害をもたらした
巨大サイクロンと闘いの末にたどりついた埋葬儀礼という祝祭。

メンバーたちの緊迫感が伝わってくる激しい演奏と歌いぶり、
儀式に集まった人々のざわめきも聞こえる生々しさは、
この音楽が生きている現場の環境を
パッケージすることに成功した証左となっています。

Damily & Toliara Tsapiky Band  "FIHISA"  no label  DAMILY01  (2025)