
南アから届いた旧作CD50枚の話題は、今回でおしまい。
最後はお気に入りのポップ・シンガー、ゾンケの18年作を取り上げましょう。
ゾンケにゾッコンになったきっかけは3作目の “INA ETHE” でしたが、
ゾンケにとってもあのアルバムがダブル・プラチナ・ディスクを獲得して、
大きな成功を呼んだ作品だったんですね。
ゾンケのデビューは南アではなくドイツで、99年にハノーファーで始まった
テレビのドキュメンタリー・プロジェクトにソロ・シンガーとしてフィーチャーされ、
06年にデビュー作 “SOULITARY” を制作しています。
南ア本国ではリリースされなかったものの、なんと日本盤が出ていて、
これはまったく知らなかったなあ。日本コロムビアからリリースされたんですって。

07年に出たセカンド作の “LIFE, LOVE ’N MUSIC” が、南アでのデビュー作。
“INA ETHE” を先に聴いてしまった後では、もろにクラブ・ミュージック仕様の
サウンド・プロダクションは聴き劣りすると言わざるを得ません。
全編でハウスぽい四つ打ちのビートが支配していて、
この時代にさんざん流行ったサウンドですね。
デビュー作もこんなクラブ・ジャズぽい内容だったのかなあ。
というわけで、ゾンケのアダルトな魅力を引き出したのは、
クインシーがニックネームの鍵盤奏者アレックス・D・サミュエルのおかげのようです。
アレックス・D・サミュエルは、 “INA ETHE” 以降のアルバムすべてに参加して、
ゾンケ独特のジャジーなサウンドをクリエイトしています。

4作目の “WORK OF HEART” では、いつものアンニュイなムードばかりでなく、
悲しみを乗り越えるかのような希望を託した曲が目立ちます。
アルバムを制作する前に、ゾンケの姉ルル・ディカナを亡くした後であったことが
反映されたようですね。
そして18年の本作は、“INA ETHE” 以降もっとも完成度が高く、
シャーデーの傑作 “LOVE DELUXE” にも匹敵する作品に思えます。
そういえば、日本のレコード会社が
「南アのシャーデー」という形容をリラに与えていましたけれど、
その形容はリラよりゾンケにこそふさわしいですね。
都会の夜を演出する大人の愛の物語9篇。
南ア・ポップでとびっきりラグジュアリーな作品です。
Zonke "L.O.V.E" Sony CDSAR015 (2018)
Zonke "LIFE, LOVE ’N MUSIC" Kalawa Jazmee/Universal CDRBL394 (2007)
Zonke "WORK OF HEART" Sony CDSTEP151 (2015)