
マレイシアのR&Bシンガー、ダヤン・ヌールファイザが
マレイ伝統歌謡に挑戦したのは思いもよらず、驚かされました。
続編まで出したところにダヤンの本気度が表れていましたけれど、
その続編 “BELAGU II” が大力作で、ドギモを抜かれましたね。
マレイシアから伝統歌謡がすっかり聞こえなくなっていた時期だけに、
このアルバムにはカンゲキしました。
もちろんその年の個人ベスト10にも選びましたよ。
あれから2年、化粧箱ボックスに収められた豪華な新作が届きました。
封入された17枚のカードには、ダヤンがさまざまなポージングで収まっていて、
どれもジャケットにするのにふさわしいフォト揃いなのに、
化粧箱の表には、あえてブレた写真をチョイスするという、
ディレクションのセンスに脱帽。
そんな写真のムードが暗示するかのように、
本作はなんとバラード・アルバムです。
いかにもマレイシアン・ポップらしい、哀感のあるバラード・ナンバーが揃っていて、
ダヤンの確かな歌唱力が発揮されています。
ちょっとクセのあるダヤンの歌いぶりは、つぶやくような歌の表情がとても豊かで、
歌の説得力を増すのに役立っていますね。
1曲目の ‘Hakikat Cinta’ がまさにそれで、
切々としたダヤンの熱唱にグッときてしまったんですが、
なんとこの曲、99年のデビュー作のオープニング曲だったんですね。
セルフ・カヴァーで再演した今回も1曲目に置くあたり、
きっと思い入れのある曲なのでしょう。
きっと思い入れのある曲なのでしょう。
こういう作風って聴き覚えがあるなあと思ったら、ファウジア・ラティフや
シティ・ヌールハリザに提供していた作曲家アドナン・アブ・ハッサンの曲なのですね。
アドナン・アブ・ハッサンはダヤンの99年のデビュー作のプロデューサーでもあっただけに、
16年に亡くなったアドナンへの追悼の意も込められていたんでしょうか。
デビュー作での同曲を YouTube で聴いてみたんですが、ういういしさ満点。
こういう曲を歌うには、まだつたなさを感じさせる歌いぶりで、
やはり円熟した現在ならではの再演でこそ、この曲の良さが引き出されたと感じます。
伝統歌謡ばかりでなくバラードもいける、いまやR&Bシンガーの域を超えた、
マレイシアを代表するポップ・シンガーとしての器の大きさを示した作品です。
Dayang Nurfaizah "JANJI" DN & AD Entertaintment no number (2024)