Tito Paris  FIDJO MAGUADO
ティト・パリスが87年に出したデビュー作を手に入れました。
シンガー・ソングライターとばかり思っていましたが、
なんとデビュー作では歌っておらず、ティトがギター、カヴァキーニョ、
ピアノ、シンセサイザー、パーカッションを多重録音したインスト・アルバムで、
ヴァイオリンのみアオ・マルティンという助っ人が参加しています。

そういえば、ティトが19歳でリスボンに渡ったのは、バナが経営していたレストラン、
モンテ・カラのハウス・バンド、ヴォス・デ・カーボ・ヴェルデに雇われたからで、
キャリアの始めは、ミュージシャンとしてスタートしたんですね。
その後作曲を始め、バナやセザリア・エヴォーラに曲を提供して
ティト・パリスのネーム・ヴァリューが上るようになり、
やがて自身でも歌い始めるようになったんでしたっけ。

このデビュー作はまだ作曲を始める以前のマルチ奏者時代の作品のようで、
ティト・パリスの自作曲はなく、カーボ・ヴェルデの歴史的詩人の
エウジェニオ・タヴァレスやB・レザの曲ほか、多くの伝承歌が取り上げられています
(ただしD.R.表記はアテにならないので、本当に伝承歌かどうかはわかりませんが)。
カーボ・ヴェルデ独立当初の国民議会議長を務めた
アビリオ・ドゥアルテが作曲したモルナもありますね。

ソングリストには13曲あるのにCDは5トラックと表示されるので、
あれれと思ったら、ソングリストの10~13曲目が1~4トラックで、
5トラック目が1~9曲目までをメドレーにしたものと判明。
CDのバックインレイもディスク面も間違って書かれています。
なお、サブスクではメドレーを Rapzódia De Mornas と書かれているのみで、
各曲の記載はありません。せっかくなので下に書いておきましょう。

Rapzódia De Mornas (19:33)
5.1 Noti Di Mindel (B. Leza)
5.2 Sês Odjos É Pret Doçe (D.R.)
5.3 Grito D' Povo (Abílio Duarte)
5.4 Ponta Do Sol (D.R.)
5.5 Papa Joaquim Paris (D.R.)
5.6 Serenata (Ney Fernanndes)
5.7 Fidjo Maguado (Jotamonte)
5.8 Hora Di Bai (Eugénio Tavares)
5.9 Dispidida  (D.R.)

前半コラデイラ、後半メドレーがモルナという趣向のアルバムで、
前半のコラデイラ・ナンバーはエレクトリック・ギターをメインに、
後半のモルナ・メドレーはピアノをメインに弾いています。
エレクトリック・ギターはエフェクターを通さないアンプの生音なので、
アクースティックに近いサウンドで、
全体に生音主体の爽やかな音作りとなっています。

カーボ・ヴェルデ音楽のインスト・アルバムで最初に感動したのが、
93年に出たマルチ弦楽器奏者のバウのデビュー作だったんですけれど、
あれより6年も前にこんなステキな作品が出ていたとは知りませんでした。

Tito Paris  "FIDJO MAGUADO"  Zé Orlando/Sons D’África  CD036  (1987)