Paulinno Vieira  M’CRIA SER POETA
パウリーノ・ヴィエイラといえば、
80年代にカーボ・ヴェルデ音楽のエレクトリック化を図った天才プロデューサー。
かつてオスティナートが出したシンセサイズされたカーボ・ヴェルデ音楽のコンピでも、
ジャケットのアートワークが示すとおり、パウリーノの仕事を大きく取り上げていました。
https://bunboni.livedoor.blog/2017-09-08

セザリア・エヴォーラの大ヒット作をはじめ、80~90年代に
ものすごい数の作品をプロデュース、アレンジしたパウリーノですけれど、
96年に音楽業界から身を引いて、すっかり過去の人となっていました。
いまでは弟のトイ・ヴィエイラの活躍の方が目立つようになり、
パウリーノの仕事が忘れられていただけに、
海外から再評価されるようになったのは、意義深いことでしたね。

一方、マルチ奏者としては寡作家だったため、
ぼくもこれまでソロ作を聴いたことがなかったんですが、
パウリーノの初ソロ作と思われる84年作のCDを手に入れて、ビックリ。
モルナやコラデイラなどカーボ・ヴェルデの伝統歌謡をエレクトリック化したアルバムで、
その伝統とモダンの融合ぶりの鮮やかさは、感動ものです。

これを聴いてすぐに思い浮かんだのが、
バイーアから登場して70年代MPBシーンを沸かせた
オス・ノーヴォス・バイアーノスやア・コルド・ソン。
ロック世代のセンスと伝統をしっかり踏まえた足元の確かさが共通していて、
なによりサウンドのフレッシュさに、目を見開いてしまったんでした。
Reencontro
これを聴いていて、ずいぶん昔に入手して愛聴した
パウリーノ参加のセッション・アルバムを思い出しましたよ。
82年にバナのレーベル、モンテ・カラから出たセッション・アルバムで、
ヴォーカルにバナとジョシーニャ、クラリネット/サックスにルイス・モライス、
ピアノにシコ・セラというカーボ・ヴェルデのオール・スター勢揃いで、
ギター/オルガン/ドラムスにパウリーノ・ヴィエイラが参加したアルバムです。

セッション・アルバムの体で出たレコードですけれど、
その実態はバナが経営するレストラン、モンテ・カラのハウス・バンドとして
再結成されたヴォス・デ・カーボ・ヴェルデ。パウリーノ・ヴィエイラは
バナからヴォス・デ・カーボ・ヴェルデへの参加を求められ、
74年パウリーノはリスボンへ渡り、18歳でプロ・デビューしたのでした。

新しいサウンドを求めたバナの思惑通り、
パウリーノのエレクトリック・ギターはグループに新風をもたらし、
翌75年ミンデロへ帰ることになったルイス・モライスに代わって、
グループの音楽監督を任されることとなりました。
82年に出た本作には、カーボ・ヴェルデへ帰国したルイス・モライスも参加していて、
いわばヴォス・デ・カーボ・ヴェルデの同窓会アルバムだったのかもしれません。

ルイス・モライスのサックスが奏でるスローなモルナが、途中から倍テンポになって、
パウリーノ・ヴィエイラがサンターナ風ギターを弾きまくる ‘Slow Sanatana’なんて、
パウリーノでしかできない芸当。
ほかにも、サンバの大名曲 ‘Juízo Final’ のカヴァーも聴きもの
(D.R.のクレジットはヒドイねー。もちろんネルソン・カヴァキーニョ作)。

このアルバムを出した82年にパウリーノはヴォス・デ・カーボ・ヴェルデをやめていて、
その2年後の84年に同じバナのレーベル、モンテ・カラから出たのがこのソロ作です。
まずビックリは、ギター、ピアノ、ハーモニカ、シンセサイザー、ドラムス、ベース、
カバサ、トゥンバ、ヴォーカル、コーラスすべてパウリーノが一人で演奏していること。
ホーン・セクションとストリングス・セクション以外すべてパウリーノの多重録音で、
それでいてこのグルーヴ感はスゴイ。そして全曲パウリーノのオリジナルです。

‘Prêce Di Um Fidjo’ でギター・ソロにユニゾンでスキャットするかと思えば、
‘Dia Já Manxê’ のスラップ・ベースとシンセのリフで強力なグルーヴを生み出し、
‘Grande Fogue’ ではサイケデリックなギターが大爆発。
なんだか同時代のペペウ・ゴメスとオーヴァーラップしますよ。

かと思いきや、モルナの ‘M'Cria Ser Poeta’  ‘Odie Ê Pobreza’ では
甘い歌声を聴かせ、歌がめちゃくちゃ上手いのには驚きました。
こんなに歌える人がセザリア・エヴォーラをプロデュースしてたなんて、皮肉ですねえ。
多重録音なのに音楽がせせこましくなくて、演奏がとてものびのびとしている。
その軽やかなフットワークは、まさしく70年代のバイーア新世代に通じるものがあります。
いやあこれ本当に、名作『アカボウ・ショラーレ』に匹敵する作品なんじゃない?

Paulinno Vieira  "M’CRIA SER POETA"  Zé Orlando/Sons D’África  C112  (1984)
Reencontro  "REENCONTRO"  Zé Orlando/Sons D’África  CD129  (1982)