Steve Turner  CURIOUS TIMES
これぞイングランド節!
深いバリトン・ヴォイスでゆるやかにこぶしを回しながら歌う、
旨味たっぷりの歌いぶりにやられました。
いかにもイングランドらしい、きりりとしたシンギングに背が伸びますよ。

理髪師で船乗りの祖父から受け継いだという
コンサーティーナ弾きのスティーヴ・ターナーの9作目を数えるという23年作。
冒頭のブロードサイド・バラッド ‘When Ladies Go A-Thieving’ で、
いきなり耳を鷲掴みにされました。
続いて歌われるのはチャイルド第20番の ‘The Cruel Mother’ で、
語り部たるバラッド歌いのお手本のような歌唱を聞かせてくれます。

スティーヴが弾くコンサーティーナに、独特のギターでアクセントをつけているのが
マーティン・カーシー。けっしてスティーヴの歌やコンサーティーナをジャマをせずに、
名手らしい存在感を示すところはさすがです。
このほかバリトン・ギター、シンセサイザー、チェロが控えめに加わり、
ハーモニー・ヴォーカリストの3人が彩を添えます。

伝統ど真ん中に位置する正統派の音楽に需要がなくなり、
聴く機会がますます減っているのは、イングリッシュ・バラッドに限った話ではなく、
多くの音楽の世界で見られる共通の現象のように思えます。
だからこそこんな頑固一徹、オーセンティックなアルバムを聞けるというのは、
いまやめちゃくちゃ貴重に思えてなりません。

Steve Turner  "CURIOUS TIMES"  The Tradition Bearers  LTCD1007  (2023)