
ラテン・ジャズを初めて聴いた、というか、初めて聞かされたのは、
プエルト・リコのピアニスト、ノロ・モラーレスのアンソニア盤。
セリア・クルースに夢中になった2・3歳よりもう少し後のことで、
小学生に上がったか上がらないかくらいの頃の話。
もちろん父がかけていたレコードですよ。
当時ラテン・ピアノといえば、ペペ・ハラミジョの人気が高かったんですが、
父もぼくもノロ・モラーレスの方がお気に入りでした。
のちにそのレコードを父のレコード棚で再発見したのが高校生の時。
ジャケットをまったく記憶していなかったので、
見覚えのないジャケットからレコードを取り出して、
あの懐かしいサウンドが飛び出してきた時の身体の震えは、今も忘れられません。
オーケストラ・スタイルのアフロ・キューバン・ジャズよりも、
ボンゴ、コンガ、ティンバレス、マラカス、ギロがちゃきちゃきとリズムを刻んで、
ピアノが跳ね回る「ピアノ・イ・リトモ(ピアノ&リズム)」のスタイルが
大好物だったんですよねえ。
いまも手元にあるノロのCDは、全部小編成のものばかり。
クラシック・ピアノの鍛錬が聴き取れる鮮やかな運指とタッチが、
軽快なパーカッション・アンサンブルのなかでキラキラと輝くラテン・ピアノが、
自分のなかでは最上位なのです。

戦後まもない45年から51年までの小編成録音をまとめた
“RUMBA RHAPSODY” は、そんなぼくには最高の編集内容でした。
64年のマルベラ盤 “EN SU AMBIENTE” もいいんだけれど、
ボレーロ中心に寄ったレパートリーがちょっと残念。
アンソニア盤はグァヒーラ、ボレーロ、チャチャチャ、グァラーチャ、ルンバ、
モントゥーノ、アフロと多彩なリズムを楽しめるのが、子供心にもヒットしたのでした。
当時自分もピアノを習っていて、6年間もスパルタ・レッスンに耐えたんですが、
あまりの厳しさに心が折れてやめてしまい、
その後ピアノに触るのも嫌になってしまったのは、残念な幼児体験でした。
ノロ・モラーレスみたいなピアノを教えてくれる先生がいたら、
どんなに良かったかと思いますけど、
昭和30年代の日本に、そんな先生いるわけないもんねえ。
Noro Morales "HIS PIANO AND RHYTHM" Ansonia HGCD1272 (1960)
Noro Morales "RUMBA RHAPSODY" Tumbao Cuban Classics TCD036
Noro Morales "EN SU AMBIENTE" Disco Hit DHCD9156 (1964)