Cheikh Ibra Fam  Adouna
いやぁ、ほんとにいい声だなあ。
セネガル出身のシンガー・ソングライター、
シェイク・イブラ・ファムの新作を聴いて、感じ入っちゃいました。
前作でも伸びのあるヴォーカルが強い印象を残しましたが、
クンバンチャに移籍して出した今作、ますますその魅力が増していますよ。

クンバンチャのサイトにシェイク・イブラ・ファムの詳細なバイオが載っていて、
それを読むと彼はシェイクの称号をいただくとおり、案の定バイ・ファルで、
7歳から伝統宗教の合唱団に参加して、カシーダを歌っていたそうです。
最初にその名前を見た時、シェイク・イブラヒマ・ファルを連想しましたけれど、
やはりその名にちなんで父親が命名したんだそうです。

詩を書く父と絵を描く母のもとに生まれ、
オーティス・レディング、アリサ・フランクリンなどの北米ソウルや、
オルケスタ・アラゴーン、ジョニー・パチェーコなどのラテン音楽が
日常的に流れるという家庭環境に育ち、
本作にも参加している叔父のギタリスト、コリー・シセの影響もあって、
音楽の道へ進むのは自然のなりゆきだったようです。

ダカールの港町ムブールに生まれ、ティエス、ルフィスク、カオラックと
セネガル各地を転々としたあと、音楽家を志してからは
イタリアの音楽アカデミーで正規な音楽教育を受けたとのこと。
すんごいエリートなんですね。
そして前回の記事にも書いたように、ルディ・ゴミスの代役として
オーケストラ・バオバブのシンガーを務めて世界各国をツアーして回り、
現在はレユニオンに暮らしているという、
ノマドな人生を送っている人です。

バイ・ファルの精神に裏打ちされ、豊かな人生経験を映した歌を、
コンテンポラリーなサウンド・プロダクションが鮮やかに演出していて、
多彩な音楽を消化したイブラ・ファムの音楽性を余すことなく
披露しているプロデュースが見事です。

今作のプロデュースは、前作でアレンジとミックスに腕を振るっていた
ハキム・アブドゥルサマド。R&Bシーンで長く活躍してきた人なので、
キゾンバやアフロビーツといったアフロ・ポップの扱いも巧みですね。
イブラ・ファムの音楽性をよく理解しているからこそ、
楽器の起用やリズムの配置も適材適所で、
わかっているなあとウナる仕事ぶりを聞かせてくれます。

最後にこのCD、ブックレットが付いておらず、
クンバンチャのサイトのデジタル・ブックレットが案内されています。
配信時代のフィジカルの存在意義って、
ブックレットなどのテキスト情報と考えていただけに、
これには少々戸惑っております。

Cheikh Ibra Fam  "ADOUNA"  Cumbancha  CMBCD177  (2026)