Sibusiso Mash Mashiloane  IHUBO LABOMDABU
16年にデビュー作を発表し、すでに8作品を出している
南ア・ジャズのピアニスト、シブシソ・マシュ・マシロアネ。
自主レーベルから出しているCDは、
日本に少量入荷したことがあるものの、入手困難で当方1枚も手に入れられず。
ようやく今回、5作目にあたるソロ・ピアノ・アルバムを見つけることができました。

左手がぎくしゃくした反復フレーズを繰り返す
オープニング曲の ‘Sabela Uyabizwa’ こそ、
ダラー・ブランドを思わす南ア・ジャズ独特のピアノを聞かせるものの、
内省的な静寂さに満ちた2曲目の ‘Uncertainty’ から、
シブシソの詩的世界が展開されて、ぐいぐい引き込まれていきます。
耽美的な美しさに富んだ ‘Ukuthula Makubenani’ には、息を呑みました。

こんな美意識を持つ南アのジャズ・ピアニストというのも初めてで、
稀有な存在じゃないでしょうか。ビル・エヴァンスをもホウフツさせる音楽性に、
正直驚きました。右手から生み出される瞑想的で祈りのようなメロディに、
印象主義というタームが頭をよぎりました。

84年、東部ムプマランガ州ベサルに生まれたシブシソ・マシュ・マシロアネは、
13歳の頃にピアノを興味を持ち始め、教会で演奏を始めた人。
十代後半にジャズを知って衝撃を受け、
クワズール・ナタール大学の交換留学プログラムを利用して、
アメリカ、ニュー・ジャージー州のローワン大学の音楽学部へ入学してジャズを学び、
チャーリー・パーカーを研究しています。
07年に南アへ帰国してからクラシック・ピアノを習い始め、
自己流だったピアノの基礎を学び直し、運指のクセなどを修正したそうです。

タンディ・ントゥリと同世代のポスト・アパルトヘイト世代のピアニストですけれど、
南ア・ジャズ中心地のケープ・タウンやジョハネスバーグではなく、
クワズール・ナタール州を拠点としているためか、
現地でも知名度はあまり高くないらしい。

印象派といったイメージの強いソロ・ピアノは、
ジャズやクラシックばかりか現代音楽の要素も聴き取れる一方で、
オープニング曲の反復フレーズや ‘iHubo Lasekhaya’ の循環する曲構造には、
南ア・ジャズらしい和声の特徴がはっきりと表れていて、
教会で育ったというシブシソの歌ごころに感じ入りました。
う~ん、得難い個性ですね。

Sibusiso Mash Mashiloane  "IHUBO LABOMDABU"  UnlockedKeys  CDUNLK007  (2021)