
脱帽。
こんなチャーミングな音楽をやっている人たちが日本にいるなんて。
木琴、バンジョー、コントラバス、ドラムスの4人のインスト・バンド。
ラウンジー・ミュージックのような肩の凝らない親しみやすさがあって、
メンバーが書くオリジナル曲は、めちゃくちゃキュート。
トイ・ミュージックを思わせるほっこりとした感触があります。
グループ名の由来であるフォックストロットやラグタイムといった
古い音楽の香りはしつつも、ノスタルジーを強調しているわけじゃありません。
風通しのいい軽やかな演奏ぶりにうっかり聞き逃しそうになるんですが、
各メンバーの技量は相当なものですよ。じっくりメンバーのソロを聴くと、
とんでもないテクニックを披露しているのがわかります。
バイオをみると、木琴の小山理恵はクラシックや現代音楽のマリンバ奏者で、
卓上木琴に興味を持って、日本で唯一の卓上木琴奏者になったといいます。
バンジョーの小寺拓実はブルーグラスのバンジョー奏者で、
18年に全米バンジョー・コンテストで準優勝を果たしたという猛者。
初老のコントラバス奏者、手島昭英もブルーグラスのプレイヤーで、
ドラムスの吉島智仁はポール・モチアンを敬愛するジャズ・ドラマー。
クラシック、ブルーグラス、ジャズとバックグラウンドの違う4人が出会って
この音楽が生まれたというのも、聞けば納得できますね。
唯一無比の音楽性がむちゃくちゃ個性的なグループ、というかコンボかな。
小寺が作曲した「Foxology」なんてビバップそのもので、
レッド・ノーヴォ・トリオのギターをバンジョーに代え、
ドラムスを加えたらかくやといった仕上がり。
最初に聴いた時は、あまりの斬新さに笑いがとまりませんでしたよ。
8月には全曲カヴァーの「VOL.2」をリリース予定とのこと。
ラグタイムにモダン・ジャズ、ショーロ、ショパンの曲もやるようで、
めちゃ楽しみです。
きつねのトンプソン 「THE FOX IN TIGER’S CLOTHING VOL.1 FOX」 プレハブ PFR002 (2025)