after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

Searching for good music of the world

カテゴリ: 日本

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エラ・メイ・モースと同じ感覚を持った歌手が日本にもいたことを思い出しました。
おわかりですか? そう、ブギの女王、笠置シヅ子ですよ。
よくよく聞いてみれば、エラ・メイ・モースと笠置シヅ子の声質もよく似ているじゃないですか。

エラ・メイの“Milkman, Keep Those Bottles Quiet”なんて、
「買物ブギー」のヒントになったとしか思えないようなホーン・アレンジや、
「わてほんまによう言わんわ わてほんまによう言わんわ」そっくりの
アーティキュレーションまで出てきますよ。
服部良一は、エラ・メイ・モースをぜったい聴いていたに違いありませんね。

ところで、ぼくが持っている50年代のシングル盤では、
オリジナルどおりの「買物ブギー」が聴けますが、
現在のCDでは「つんぼ」と「めくら」の言葉が削除・編集されています。
そのため前後の意味が不明となり、歌詞の意味を取り違えている人もいるみたいですね。
意味が変わってしまうのは困りものだけれど、
かといって、障碍者を嗤いものにしたこの歌詞をオリジナルのままで出すのは、
いかに古典的名作といえど、ぼくも賛成しかねます。
もっとなんかうまい編集方法は、ないもんですかね。

[7インチ] 笠置シヅ子 『東京ブギウギ』 コロムビア AA13

KPM.JPG

ルイス・ゴンザーガのバイオーン、ラス・マイケルのナイヤビンギ、
オーガスタス・パブロのメロディカ・ダブをミックスし、
さらにそこへチンドンを紛れ込ませて、台湾と偽日本民謡を練りこみ、
東京・下町気分をふりかけた音楽をやってるバンドがあるって、知ってました?

そんなバンドが、生田恵子の「バイヨン踊り」(昭和26年)や
美空ひばりの「チャルメラそば屋」(昭和28年)をカヴァーしてるなんていったら、
ほら、ほら、聞いてみたくなりませんか。

これだけ通好みの選曲と、目イッパイ盛り込んだ音楽的アイディアを、
見事に肉体感あふれる演奏に仕上げたキウイとパパイヤ、マンゴーズ、あっぱれです。
ネーネーズの『IKAWŪ』以来の大傑作ですよ、これ。

いやー、痛快ですねえ。こんな若者たちがいるなんて、嬉しいじゃありませんか。
なんでもヴォーカルのキウイさんは、
神楽坂のお座敷で端唄や俗曲を歌ってる芸妓さんなんだそうですよ。
うまく歌おうなんていう気負いのまったくない、突き抜けた歌いぶりがすごくいい感じです。
「バイヨン踊り」のコケティッシュな表情なんて、
カルメン・ミランダみたいじゃないですか!

その「バイヨン踊り」では、(カレー味)と称しタブラを加えてビートを引き締めたり、
ペルナンブーコの笛ピファノの響きを模すなど、思わずウナるアイディアがてんこ盛り。
バンジョーを使ってジャマイカ民謡やカリブ音楽の古層に迫るあたりも、
感心させられました。サウンド・コラージュの編集もセンスがよくって、
うふふと楽しませてくれますよ。

しかもこのバンドのスゴさは、うわべのセンスの良さだけじゃありませんね。
「ビルマの竪琴」の水島上等兵のクライマックス・シーンを
ユーモアたっぷりにコラージュしたり、日本統治時代の台湾を暗示したりと、
太平洋戦争の日本のアジア侵略を明らかに意識しています。

こうした部分は、アメリカ文化にどっぷり漬かった戦後世代の音楽家たち、
たとえば細野晴臣や久保田麻琴などが、日本人のアイデンティティを模索するなかでも、
触れずに避けてきた<デリケートな場所>でした。

旧世代がタブーとしていたところにしっかりと対峙しながら、
イデオロギーの鎧を纏わず、巧みなユーモアで包み込みながら、
日本情緒を再創造したところは、あっぱれというほかありません。
イデオロギーの呪縛から解き放たれた世代の誕生に、喝采を贈りたいですね。

アメリカにはForro in the Darkなんて連中もいて、
日本でも和製フォロー・バンドが花盛りですが、
確かな歴史観をバックグラウンドに持ったキウイとパパイヤ、マンゴーズの
ヒネリの効いたアイディアやウィットは、比類なき個性といえます。
バルセロナのミクスチャー系バンドにヒケをとらぬ、
日本発のミクスチャー・バンド、要注目ですね!

キウイとパパイヤ、マンゴーズ 『TROPICAL JAPONESQUE』 まるゑゐ録製 KPM1 (2009)

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[10インチ] 伊波貞子フォーシスターズ 『琉球民謡アルバム』 マルタカ TL110

82年に沖縄へ旅行したとき、平和通りの高良時計店で買った10インチ。
そのキッチュなジャケットに目が釘付けとなり、以来ぼくの愛蔵盤となっています。
高良時計店はマルタカ・レコードの本拠地とはいえ、
80年代になってもまだ新品が残っていたのには、ビックリ&カンゲキしました。
2年前にこのジャケットから写真を借りた『OKINAWA スウィート・ガール・グループス』
というコンピレCDが出ましたけど、「琉球民謡アルバム」のこのロゴタイプでなくっちゃねえ。

のちに内地で入手したマルタカ盤LPには、こんなのも。
屋良ファミリーズのジャケがなかなかキッチュですね。

屋良ファミリーズ.JPG フォーシスターズ12inch.JPG

[LP] 屋良ファミリーズ 『琉球民謡集』 マルタカ TR5004 (1966)
[LP] 伊波貞子フォーシスターズ 『琉球民謡集』 マルタカ TRS5015 (1968)

白川軍八郎.JPG

吉田兄弟の登場で、津軽三味線ブームといっても過言ではない今日この頃ですが、
「津軽三味線の始祖」といわれる仁太坊(秋元仁太郎)の最後の弟子だった
白川軍八郎(1909-1962)の生誕100年を記念した私家盤CD-Rがリリースされました。
白川軍八郎は津軽三味線の神様とも崇められた名人。
札幌市在住の民謡研究家が蒐集した津軽民謡のSP約千枚から選りすぐったという逸品です。

軍八郎は即興演奏を交えた曲弾きの創始者で、
津軽三味線を伴奏楽器から独奏楽器へと押し上げた功績者と言われています。
歌手の三橋美智也のお師匠さんでもあったんですね。
録音年などの詳細は記載されていませんが、昭和27~28年頃録音の1曲を除き、
昭和ひと桁~10年代(15曲は戦前)の録音がほとんどのようで、7曲は初復刻とのこと。
津軽三味線独奏も3トラック収録されています。

曲弾きが発達しすぎて、いささか技巧がすぎる最近の派手な津軽三味線に比べれば、
ディープなアウラを発散させる軍八郎のプレイは、とても味わい深く聞こえます。
SPの針音も心地よく、きりりとした民謡の美しさが堪能できる意義深い復刻作です。

初代・白川軍八郎 『津軽三味線の神様 生誕100年記念』 レーベル名なし・番号なし

ゲバゲバ90分!.jpg

TV局がテープを保存しておらず、復刻はありえないと言われていた「ゲバゲバ90分!」。
40年の時を経て現存テープが発見され、DVD化がついに実現しました。
喜び勇んでDVDを注文したついでに、宮川泰さんのミュージック・ファイルも、ぽちっと購入。

なっつかしいなあ。ぼくが小学5・6年のころですよ。
テレビの現場に活気が溢れていた時代、
今では考えられないほどのエネルギーを費やした仕事だからこそなし得た、
緻密なショート・ギャグ(コントとはいわないそうです)・エンタテインメント番組ですね。

日本初のギャグ番組「ゲバゲバ」の魅力は、
子供相手ではなく、大人向けに作られていたからこそのものでしょう。
「11PM」ふうのお色気も、ちらちら見え隠れしますからね。

都会的センスのユーモアとウイットに富んだ「ゲバゲバ」に比べると、
のちのドリフの「8時だョ!全員集合」は、真逆のセンスの体育会系ギャグでした。
ぼくはドリフが好きになれなかったクチで、
やたらとイバってるリーダーのいかりやには反発ばかり覚えたし、
メンバーとの親分子分の関係も不快に思ってました。

ドリフの泥臭い笑いは、いかにも日本的だった、ってことなんでしょうね。
「ゲバゲバ」の洒落た「洋楽」センスに比べたら、ドリフはまんま「邦楽」といえます。
だからこそ、ドリフはあれほど長く愛され、大衆化したともいえるんでしょう。
その「ゲバゲバ」の洋楽センスは、宮川さんのミュージック・ファイルを聞けば、より明快です。
「ゲバゲバ」は「しゃぼん玉ホリデー」の洋楽ポップスのセンスを引き継いでたんですね。

宮川泰 『ゲバゲバ90分! ミュージック・ファイル』 バップ VPCD81254

可愛いピーナッツ.JPG

ザ・ピーナッツのデビュー50周年を記念したオリジナル紙ジャケット・コレクションが完結。
リマスターされた音質はもとより、未収録音源の発掘やデータを完備した詳細な解説など、
すみずみまで神経の行き届いた仕事ぶりは、これぞリイシューの鏡と呼びたいほど。

ぼくは初期の2枚を買いました。
ザ・ピーナッツのレコードで1枚だけ持っていた59年のデビュー作『可愛いピーナッツ』と、
「月影のキューバ」や「キサス・キサス」が入っている『ピーナッツの“ザ・ヒット・パレード”』です。

当時の「シャボン玉ホリデー」を見ていたリアルタイム世代とはいえ、
ザ・ピーナッツの歌の魅力に気付いたのはもっとずっと後のこと。
50~60年代のマレイシア歌謡、P・ラムリーやサローマを聴くようになってからのことでした。

きっかけは、90年頃に高田馬場の古本屋で見つけて買ったデビュー作の10インチ盤。
1曲目がデビュー・シングルにもなった「可愛い花」で、
聴いた途端、昔テレビで歌っていた二人の白黒映像が脳裏に浮かびました。
それにしても、デビュー曲にシドニー・ベシェの“Petite Fleur”を選ぶっていうセンス、
どんだけ「通」なのって、ウナっちゃいますね。演奏・アレンジは宮川泰です。

ぼくには和製ポップスというより、亜細亜歌謡として聞こえたのは、
ワールド・ミュージック・ブーム時代の90年代に聴いたからかもしれません。
チャイナ・ドレスと淡い色使いのジャケにもアジアン・テイストを感じる、ってコジツケですかね。
CDはオリジナル・ジャケに忠実ですが、レコード番号だけカットされています。
写真は、キングのレーベル・マークの下にレコード番号が載っている10インチ盤の方です。

[10インチ] ザ・ピーナッツ 『可愛いピーナッツ』 キング LKF1060 (1959)
[CD] ザ・ピーナッツ 『可愛いピーナッツ』 キング KICS1429

桃中軒雲右衛門.JPG  「え! いつのまに出てたの、これ。」
  思わず店頭で声をあげちゃいました。
  明治時代の浪曲師、桃中軒雲右衛門の復刻2枚組。
  「コロムビア至宝シリーズSP盤編」の1枚として、
  3年も前に出ていたのだとか。
  これだから邦楽ものって油断なりません。
  知らないうちに出てて、気付いた時は
  もう廃盤なんてこともあるからねぇ。

桃中軒雲右衛門のフルCDはこれが初めてのはず。(ですよね?)
たたみかける迫真の語りに、ぐいぐい引き付けられてしまいます。
くぅーっ、この節回しのコクがたまんないねぇー。
ぼくの場合、こういうコブシを聴いてる時って、言葉がぜんぜん耳に入りません。
仇討ちものなどのストーリーなんてのは正直どうでもよくって、
コブシ音楽という純音楽的な観点から楽しんでいます。
世界中のコブシ音楽を聴く時とおんなじで、コブシの抑揚や発声にだけ集中するんです。
意味のある言葉なんかが頭に入ってくると、ジャマというかうっとうしいんですよねえ。
文芸じゃなくって音楽なんですよ。
せっかく意味がわかる日本語を聞きながら、
それを無視する聴き方が身に付いてしまったのは、
ワールド・ミュージック・リスナーの性(さが)かもしれません。

桃中軒雲右衛門 『<浪花節>桃中軒雲右衛門』 コロムビアミュージックエンタテインメント COCJ33688/89

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