
藤井風と米津玄師の二人は、
日本のポップスをこれまでとまったく異なるステージに引き上げた天才ですね。
藤井風が天才ぶりが「自然児」だとすれば、
米津玄師の天才ぶりは「巧手」の一語に尽きます。
米津は現代日本の希代のメロディ・メーカーといえるでしょう。
ほとばしる感情を、これほど見事にメロディに落とし込める人を知りません。
4年ぶりの新作は、多彩な物語を紡いだ20編の楽曲を集めた作品。
業を背負いながら生きる覚悟を秘めた歌詞にうなりつつ、
振り幅の大きい音楽性に圧倒されます。
1曲1曲の完成度がすさまじくて、これだけ性格の違う曲を並べて、
アルバムとして成立させる剛腕ぶりに、感嘆せざるをえません。
米津のソングライティングは、職人芸的な頭脳プレイではなく、
フィジカルなエモーショナルな表現にこだわっているのが感じられて、
歌唱・アレンジ・サウンド・デザインのひとつひとつに、その痕跡がみられます。
踏切の警笛をコラージュする「とまれみよ」のアイディアなど、
やるせなさ、息苦しさ、もどかしさといった、
さまざまな焦燥を表現する巧みさにヤラれます。
ピアノ弾き語りをイメージしたバラードの「地」では、
伸びやかにまっすぐに歌う米津の歌いぶりの合間に、
椅子の軋み音が聞こえるのは、耳残りするように録音しているのでしょう。
米津の(「歌いぶり」というより)ヴォーカル表現に胸をかきむしられるのは、
聴き手の感情を揺さぶる演出のねらいに、
ものの見事ハマってしまっている証拠ですね。
曲ごとに発声を変え、演劇的なニュアンスも巧みに織り込んで
ヴォーカル表現にダイナミクスをつけていく技量は、
藤井風とはまた別種の天才でしょう。
そんなヴォーカル表現を支えるソングライティング、
アレンジを含めたサウンド・デザインに、
圧倒的な説得力を宿した傑作です。
米津玄師 「LOST CORNER」 ソニー SECL3118 (2024)









