after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

Searching for good music of the world

カテゴリ: 北アメリカ

Ella Mai  DO YOU STILL LOVE ME
22年のマイ・ベスト・アルバムにも選んだ文句なしの傑作の前作から4年。
https://bunboni.livedoor.blog/2022-12-31

う~ん、変わりませんねえ。
長年のコラボレーターであるマスタードが全曲プロデュース。
すでに確立しているエラ・メイ・ワールドを全面展開しながら、
しっかりと成熟している軌跡もみせてくれます。

自身の内面を見つめたパーソナルな世界を吐露しながら、
より深みを増した感情表現によって、普遍的な世界観を聴き手に届け、
共感の架け橋を築いている。
この才能を持つ者こそが、優れた歌い手と呼ばれるのですよね。

エラ・メイって、いわゆる歌の上手い人じゃないと思うんですよね。
このアルバムでも、どの曲も同じ歌い方をしていて、
ある意味で彼女の唱法は、単調と言われてもしかたないでしょう。
それなのに、その歌声からこぼれてくる表現力といったら、どうです。
やるせなさの天才ですよ。

ゲストを誰も呼ばずにエラ・メイ一人が歌い、
曲のテンポも落として、より内省的で親密さを前面に押し出した本作は、
彼女がR&Bシーンのなかで確固たる地位を築いた、
ゆるぎない自信のあらわれでしょう。
今の彼女にはダンス・トラック、いりませんね。

Ella Mai  "DO YOU STILL LOVE ME?"  10 Summers/Interscope  602488220002  (2026)

James Blood Ulmer  Live at Moers Festival James Blood Ulmer  Live in Germany
ひょんなことから、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーのブートCDの存在を知り、
ブートレグ専門のお店をのぞいてみたら、あるわ、あるわ。
結構な数が出ているんですねえ。
90年代後半以降、ウルマーはハーモロディックな曲をやらなくなってしまい、
これじゃただのブルース・ロックじゃん!みたいな作品ばかり出すようになって、
すっかり興味を失ってしまったんですよね。

とはいえ、コロンビアと契約して飛ぶ鳥を落とす勢いだった
80年代前半のライヴなら、そりゃあ聴きたくなりますよ。
というわけで、今思えばウルマーの絶頂期だった、
80年のメールス・ジャズ・フェスティヴァルのライヴと、
81年のドイツ、ブレーメンでのライヴを買ってみました。

80年のメールス・ジャズ・フェスティヴァルのライヴは、
ミュージック・リヴェレイション・アンサンブル名義の歴史的傑作
“NO WAVE” がレコーディングされるひと月前の録音。 
もちろんメンバーも同じ、デイヴィッド・マレイ、アミン・アリ、
ロナルド・シャノン・ジャクソンという布陣。

“NO WAVE” 所収曲は ‘Time Table’ 1曲で、
79年のソロ・デビュー作 “THE TALES OF CAPTAIN BLACK” から 
‘Woman Coming’ ‘Nothing To Say’ の2曲、
80年の “ARE YOU GALD TO BE IN AMERICA?” から
‘Time Out’  ‘Layout’  ‘Interview’ の3曲を演奏しています。

いやぁ、ウルマーとマレイの一騎打ち!て感じのライヴですね。
二人が交互にだけでなく、同時に弾きまくり吹きまくりのインプロを繰り広げます。
マレイがぶひゃぶひゃ、ぴーぴーと、アイラーばりの雄叫びをあげまくっていて、
いやぁ痛快としか言いようがないですね。
これを聴いたら、“NO WAVE” のマレイが行儀よく思えるほどですよ。

そして81年のドイツ、ブレーメンのライヴは、
アミン・アリ、カルヴィン・ウェストンとのトリオ。
ライヴの日付が3月24日とあるので、
10月15日に “FREE LANCING” が出るちょうど半年前ですね。
‘Jazz Is The Teacher’ でスタートし、“FREE LANCING” の曲を
演奏して、ラストを ‘Are You Glad To Be In America?’ で締めるというセットリスト。 
カルヴィンのドラムスがキレまくりで、畳みかけてくるウルマーのギターと
息の詰まるバトルは圧巻です。

あぁ、このトリオで観れなかったのは、ためすがえすも残念だったなあ。
83年のウルマー初来日時は、当初このメンバーが予定されていたのに、
会場に着いて幕が上がってみたら、ベースがいなくてヴァイオリンと
新顔のドラマーというメンバーだったのにはがっくりしたからねえ。
そんな痛恨の思い出が残るだけに、このドイツのライヴ盤は感慨深いものがあります。

James Blood Ulmer  "HARMOLODIC JAZZ PREACHER"  Blue Mark Music  BMM001
James Blood Ulmer  "LIVE INGERMANY 1981"  Necromancer  NRRCD2160

Charlie Palmieri and His Orchestra  ADELANTE, GIGANTE
「ラテン・ピアノで忘れられない1曲は?」という問いに始まって、
ノロ・モラーレスのアンソニア盤にたどり着いたんですけれど、
その質問のぼくのアンサーは、
チャーリー・パルミエリの ‘Tema De Maria Cervantes’ でした。
73年の “ADELANTE, GIGANTE” に収録されたこの曲を超すラテン・ピアノを、
半世紀を過ぎた今なお、ぼくは知りません。
大学1年生の時に出会ったこの曲は、衝撃そのものでした。

歌手のビティン・アビレスとオーケストラを擁した本作で、
インスト演奏のこの曲は異色のトラックでした。
管楽器抜きで演奏したこの曲を聴いたとき、
ノロ・モラーレスのアンソニア盤収録の曲と同曲とはすぐには気付きませんでした。

どこかで聞いた覚えがあると、ずーっとひっかかっていて、
ノロ・モラーレスにたどり着けたのはだいぶ経ってからでした。
というのもチャーリー・パルミエリのレコードには、
マリア・セルバンテス作曲とクレジットされていたため、
ノロ・モラーレスに考えが及ばなかったんですね。

チャーリーが作者とクレジットしたマリア・セルバンテス(1885-1981)は、
ハバナの芸術一家に生まれた作曲家兼ピアニスト、歌手としても活躍した人。
ボラ・デ・ニエベに多大な影響を与えた人で、
ボラとはコンサートやショーでも共演を果たしていますが、
音源や映像が残されていないのは悔まれます。
しかしこの曲はマリア・セルバンテスの曲をノロが変奏した曲なので、
作者としてはノロ・モラーレスが正解なのでした。

で問題は、チャーリーが演奏したこのカヴァー・ヴァージョンです。
衝撃的だったのは、ボンゴとコンガが叩き出す正確無比なタイム感です。
当時はウチコミなんてものが世の中には存在しませんでしたが、
人間が演奏しているとは思えないほど、スウィングしない機械的なビートでした。

そのスクエアなリズムにのるチャーリーのピアノは、突っ込んだり、もたったりと、
自在なリズム感で凄まじいまでのグルーヴを巻き起こして、聴く者を翻弄します。
長いパッセージを弾く場面など、何度聴いても息を呑んでしまいます。
タッチもこれまた自在で、ガーンと鍵盤を激しく叩いて和音を響かせたり、
ふわりと柔らかなコードを奏でたりと、もうどんだけ表現力あるんだかという感じで、
その雄弁さには、タメイキがもれるばかり。

ティンバレスがソロをとり、チャーリーのピアノがバッキングする場面では、
今度は雄弁なリズム感で弾いていたピアノが一転、ボンゴとコンガと一緒に
正確無比なスクエアなリズムを演奏して、ティンバレスに自由なソロを演奏させています。
このスウィングしない精密なビートと、スウィングしまくるソロ楽器のビートの対比は、
ラテン・ジャズならではの厳格なグルーヴといえます。

ラテンとジャズの大きな違いって、このリズムに対する厳格さじゃないのかな。
裏拍や裏・裏拍で取るラテンの精密なリズムって、
融通無碍に4拍が伸び縮みするジャズとはまるっきり異質だよね。

それにしてもいまでも残念でならないのは、
チャーリーがラテン・ジャズのアルバムを作ってくれなかったこと。
こんなインストをアルバム1枚でやってくれたら、
ラテン・ジャズ屈指の名盤となったこと間違いなしだったのになあ。

Charlie Palmieri and His Orchestra  "ADELANTE, GIGANTE"  Alegre  CLPA7013  (1973)

Nas + DJ Premier  LIGHT-YEARS
うぉー、ナズとDJプレミアのジョイント・アルバムがついに!
20年越しの実現なんですか。感慨深いものがありますねえ。

ギャング・スターのリユニオン・アルバムでも告白しましたけれど、
90年代のイースト・コーストのヒップ・ホップで
ようやくヒップ・ホップに開眼できた当方なので、
この記念碑的アルバムのリリースは楽しみにしていましたよ。

巨匠の風格すら感じる仕上がりは、一時代の歴史を築いた両者だからでしょう。
本作で聴き取れるのはストリート感ではなく、成功者の自信であり貫禄。
プレミアが生み出す硬質で鋭利なサウンドと
ざらついたナズのフロウとライムのコンビネーションは、間違いなく最高峰です。

ウィルソン・ピケットの ‘Get Me Back on Time, Engine Number 9’ を
サンプリングした ‘GiT Ready’ なんて、プレミアの真骨頂じゃないですか。
これぞブーンバップといったチョップの職人技には、シビれるねえ。
重厚さと洗練を併せ持ったサウンドは、
2020年代の今もってヴィヴィッド。
オールド・スクールじゃなくって、レジェンダリーなクラシックですよ。

続く ‘NY State of Mind Pt. 3’ にもウナりました。
言わずと知れたナズのデビュー作のヒット曲ですけれど、
なんと今回は、誰もが知ってるビリー・ジョエルの ‘New York State of Mind’ の
冒頭パートを、切り刻むこともなしにまるごとサンプリングしています。
年齢を重ねたいまの二人だからできたことでしょうねえ。
Nas + DJ Premier  LIGHT-YEARS  Jewel Case
最後に嬉しいのが、CDのジュウェル・ケースに描かれたグラフィック。
このグラフィックはLPにはなく、CDとカセットのみ。
CDラヴァーにはたまらないプレゼントです。
ソフトケースへの入れ替え不可ですね。

Nas+DJ Premier  "LIGHT-YEARS"  Mass Appeal  MSAP186D2CD  (2026)

Jill Scott  TO WHOM THIS MAY CONCERN
圧倒的。
ストーリーテラーとして語るべきことのある人の確信に満ちたヴォイスの力。
てらいなく、淀みなく、あいまいさもない。
伝えるという一点に感情を凝縮したその歌いぶりに、
魂を揺さぶられぬ者などいないでしょう。

ですが。
正直に告白すれば、ジル・スコットは苦手としていたタイプでした。
彼女の強力なヴォイスを聴いていると、
自分の矮小な男のダメさ加減をグサグサ指摘されているようで、
いたたまれず穴にでも入りたくなる気分に陥るんですよね。

黒人女性が置かれてきた歴史の積み重ねが、
ジルのソウルフルな歌声にはくっきりと刻印されていて、
日本人男性のこちらがおいそれとは近づけない距離の遠さをおぼえます。

そんなわけでジルのアルバムは、お気楽にサウンドだけ
エンジョイするのをずっとためらってきたんですが、
11年ぶりのアルバムというので、うっかり聴いてしまったからには、
買わずにはおれませんでした。

ニュー・オーリンズ・ファンク、スウィング・ジャズ、ゴーゴー、アフロビートなどなど、
目まぐるしいほど多彩なサウンドを詰め込みながら、それが散漫にならず、
ジルの歌声がしっかりとプロダクションを束ねているところがスゴイ。

そしてどこかざらっとした舌ざわりを残すのも、
表面ばかりきれいにつるつるとしたサウンドが主流な昨今、貴重ですね。
この圧倒的な存在感には、ただただこうべを垂れるだけです。

Jill Scott  "TO WHOM THIS MAY CONCERN"  Blues Babe  no number  (2026)

T’Monde  PETIT PARADIS
ルイジアナの音楽遺産を届けるインディ・レーベル、ヴァルクールから
これぞ100%ケイジャンと呼びたい素敵なアルバムが届きました。

アコーディオンのドリュー・サイモン、フィドルのケリー・ジョーンズ、
ギターのメーガン・コンスタンティンからなるトリオ。
11年に結成されて以来、グラミー賞に10回ノミネートされていて、
本作は4作目とのこと。

ぼくは初めて聴きましたが、フィドル・チューンなどダンス・ミュージックに
寄りがちなケイジャン・ミュージックの中で、
フレンチ・クレオールの歌の魅力を伝える稀有な3人組です。

3人はケイジャンの音楽一家に育った生粋の音楽家とは違って、
ドリューとメーガンはルイジアナ出身であるものの、
ケイジャンを始めたのは10代後半と遅く、
ケリーはノース・キャロライナ出身で、
ルイジアナに越してきてからケイジャン・フィドルを習得したという、
いわば後学でケイジャンの沼にはまった人たちだそうです。

取り上げられている曲の出典はまったく知らないんですが、
ルイジアナに伝わる古い伝承歌を多く取り上げていると思われます。
ケリー作曲のオリジナル2曲のほか、ビル・アンダーソンの ‘Once A Day’ と
マール・ハガードの ‘I've Got A Yearning’ というカントリー名曲も歌われています。

たった3人の演奏なのに、この豊かなサウンドはどうでしょう。
てらいのない歌いぶりも3人3様で、ア・カペラも聴きものです。

T’Monde  "PETIT PARADIS"  Valcour  VALCD0060  (2025)

Avail Hollywood  GROWN MAN BLUES
この声!
ディープでざらっとした肌触りを残すこの歌声だけで、ご飯3杯いけちゃう人です。
21年の “MISSISSIPPI RIVER” にヤラれて、すっかりファンになり、
https://bunboni.livedoor.blog/2022-06-20
今年出たばかりの新作におぉ!と飛びつきました。
(でもその前に2作出てたことに気付かなかったんだけど)

今作のコンテンポラリー・サザン・ソウルのプロダクションは極上。
インディ・ソウルでこのクオリティは、かなりのハイ・レヴェルですね。
ギターやキーボード類の手弾きの生演奏とウチコミのバランスがとても良くて、
インディ・ソウルが全部このぐらいのサウンドで聞けたら理想的なんだけどねえ。
このレヴェルのプロダクションの作品はそうそうないのが、じっさいのところ。

今回もインディ・ソウルをいろいろまとめ買いしたんだけど、
ジェフ・フロイドのEP “MY LOVE” の第1集と第2集をカップリングしたCDも、
ジェフの塩辛いヴォーカルは最高なのに、いかにもチタリンなサウンドが難でした。

アヴェイルのディープなサザン・フィールをたたえた歌声に、
身も心もゆだねるしかないアルバムで、今回も堪能しました。
配信にはないCDのみのボーナス・トラック
‘If You Don't God Stil Working On Me’ で聞かせる
冒頭のトーキングするパートは、まるでプリーチャーのよう。
やっぱりゴスペル仕込みの声に敵うものはないですね。

Avail Hollywood  "GROWN MAN BLUES"  Nlightn  no number  (2026)

Ari Lennox  VACANCY
ワシントンD.C.出身のR&Bシンガー、アリ・レノックスの新作。
誰だっけ?とディスコグラフィをのぞき、ドリームヴィルから出た
19年のデビュー作と22年のセカンドの写真を見て、あぁ、この人かと。
試聴した記憶はあるんだけど、どちらも刺さらなかったみたい。
何が物足りなかったのかまでは覚えていないけれど、
でもこの3作目には即反応しましたよ。

全15曲というヴォリュームたっぷりの内容。LPはなんと2枚組ですよ。
オープニングの ‘Mobbin’ in DC’ のイントロから、
エレピ、トランペット、ギターがなめらかに流れ、
ソウルクエリアンズをホウフツとさせるネオ・ソウルにヤラれました。

タイトル曲をはじめ、官能性に富んだ楽曲が並んでいるんだけれど、
ぼくが魅力を感じるのは、アリの伸びやかな歌声に官能と呼ぶには
まだ熟れ切っていない部分がそこかしこに残っているところ。
そこに人間臭さというか、強さともろさが同居しているのをおぼえます。
 
ドゥーワップ・ヴォーカルがループする ‘Under The Moon’ の
オールド・スクールなテイストも、70年代ソウルの味わいと
ネオ・ソウルが合体したような ‘Soft Girl Era’ でも、
すべてはアリの声のテクスチャがもっとも映えるような音作りになっていますね。

意外っだったのはレゲエの ‘Company’ で、
なんとブジュ・バントンとデュエットしてるんですね。
ブジュ・バントンというと、ホモフォビアな姿勢で大ブーイングされた
ティーンエイジャー時代しか知らなくて申し訳ないんだけれど、
こんなせつないオトナな曲を歌えるシンガーになったのか。
ひさしぶりにいいレゲエを聴かせてもらいました。

Ari Lennox  "VACANCY"  Interscope  602488057257  (2026)

John Ellis & Double Wide  FIREBALL
うわー、こんなバンドがいるんだ!
サックス、トロンボーン、トランペット、スーザフォン、ピアノ、ドラムスの5人組。
ニュー・ヨークで活動するリーダーのサックス兼クラリネット奏者ジョン・エリスは、
ノース・カロライナ州に生まれ、ニュー・オーリンズ育ちという南部魂の持ち主。

ジョンはニュー・オーリンズのスゴ腕スーザフォン奏者マット・ペリンと出会って、
ニュー・ヨークとニュー・オーリンズを架け橋するバンドを結成したいと熱望し、
ニュー・オーリンズの音楽名家マルサリス一家の六男でドラマーの
ジェイソン・マルサリスを招いて、07年にダブル・ワイルドを結成。
08年に初アルバムを出し、今作が4作目のようです。

15年の3作目からジョン、マット、ジェイソンの3人に、
ニュー・ヨーカーのピアニスト、ゲイリー・ヴェルサーチと、
カルフォルニア出身のトロンボーン奏者のアラン・ファーバの5人となっています。

本作のクレジットを見ると、19年9月にブルックリンでレコーディングされていて、
25年7月になってようやくミックスしてマスターが制作されたとあります。
なんでそんなに長く寝かせちゃったんでしょうね。

全曲ジョンのコンポーズなんだけれど、
ウィットとユーモアに富んだ楽曲が多くて楽しい。
ジェイソン・マルサリスがブラシを叩きながら口笛を吹く ‘The Whistler’ は、 
口笛とピアノがユニゾンでテーマを奏で、サックスとトロンボーンがバックで
ハーモニーを付けるというユニークなアレンジ。

ゲイリー・ヴェルサーチが曲のムードに合わせて、
ピアノ、オルガン、アコーディオン、ローズ、ウーリッツァと弾き分けていて、
楽想に豊かな彩りを添えています。

ポスト・バップなアプローチをみせるタイトル曲は、
メロディとハーモニーの動きが練られていて、
かすかなアヴァンな香りもまぶして、サスペンスを感じさせる仕上がり。
ヴェルサーチのアコーディオンとジョンのソプラノ・サックス、
マットのスーザフォンが絡みあうインプロが聴きものとなっています。

昔大好きだった、どくとる梅津バンドを思い出しちゃいました。
ユーモアとペーソスあるジャズ・バンド、ダブル・ワイルド。いいバンドです。

John Ellis & Double Wide  "FIREBALL"  Sunnyside  SSC1805  (2026)

Gio & Dorise Blackmon  Juju Child
素性知らずのジェオヴァニ・サントスの『シランダ』と一緒に、
ジェオヴァニが参加しているもう1枚のアルバムに、
これまた「グリオ」なんて気になるワードを冠したアルバムを見つけたので、
一緒にオーダー。

ソングリストにはA面5曲、B面4曲と記されていて、
A面にはジオ・ブラックモンというシンガー(兄らしい)と
ドライス・ブラックモン(妹らしい:23年に他界)というギタリストをフィーチャー、
B面はジュジュ・チャイルドというブルース・ギタリストがフィーチャーされています。
いずれもニュー・オーリンズのミュージシャンのようですが、
聞いたことのない名前ばかり。

CDのソングリストを見て、がっくり。
A面は、「サニー」「ルート66」「リトル・ウィング」「明るい表通りで」
「バイ・バイ・ブラックバード」と、手垢にまみれたスタンダードばかり。
やれやれ、21世紀にこのレパートリーですかと、タメイキが出ますね。

B面もブルースの大有名曲の「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」に、
ルイス・ゴンザーガの代表曲の「アザ・ブランカ」「バイオーン」と
これまた凡庸を絵に描いたようなレパートリー。聴く前から萎えました。

で、期待なしに聞いてみたんですが、あれ?悪くないじゃないですか。
A面はジェオヴァニのリード・ギターにドライス・ブラックモンのリズム・ギターのみを
バックにジオが歌っているんですが、ケレン味がなくていい感じ。
適度に力も抜けているけど、レイドバックしすぎてもいない歌いぶりに好感。
ジミヘンの「リトル・ウィング」が気に入りました。
ジェオヴァニのオーソドックスなジャズ・ギターも、ピリッとしたプレイを聞かせています。

B面はベース、ドラムスも付いたバンド編成。
ジュジュ・チャイルドはブルース・シンガーとしてはユルすぎるというか、
「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」をこんなにヌルく歌われてもなあという感じ。
のしゃらんと歌う「アザ・ブランカ」や「バイオーン」の方が、この人に合ってるね。
1曲インストでファンク・ブルースをやっているけれど、
ブルース・ギターもあんまり達者じゃないな。

ちなみにタイトルの「グリオ」は、ジェオヴァニ・サントスが
ニュー・オーリンズの地元の音楽家を支援して文化遺産を継承するプロジェクトとして、
西アフリカ文化の口頭伝承を担ったグリオの名を借りたのだそうです。
このアルバムもそのプロジェクトの中の1枚とのこと。
率直言ってたいしたアルバムじゃありませんが、シンプルなA面は好感がもてます。
たまにはこんなアルバムも悪くないですね。

Gio & Dorise Blackmon / Juju Child  "THE GRIOT SERIES VOL.1"  G7b5 Music  no number  (2022)

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