after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

『ミュージック・マガジン』7月号にディノ・ディサンティアゴのインタヴュー記事を寄稿しました。ぜひお読みください。

カテゴリ: 北アメリカ

Resavoir & Matt  Gold  HORIZON
陽を浴びた水平線の海がきらきらと反射して、
そのまばゆさに目が眩みそうになるジャケットが、
あますことなく中身の音楽を伝えていますね。

マルチ奏者ウィル・ミラーのプロジェクト、レザヴォアの新作。
レザヴォアの初作にめちゃくちゃ心を奪われたくせに、なぜか2作目を聞き逃してしまい、
ギタリストのマット・ゴールドと共同名義の新作はすぐさま買いましたよ。

ラフ・スケッチのような楽曲がいいなあ。
もう少し曲を作り込んだら、センチメンタルやメランコリックになりそうな手前で、
さっと切り上げてしまうようなトラックメイキングが効果を上げていて、胸に沁みるんです。
ソプラノ・サックスやフルートの響きなんて、もう涙が出そう。

フルートとフレンチホルンとオーボエという
斬新な組み合わせのホーン・セクションと、ストリングス・セクションと
シンセサイザーがレイヤーされる ‘Dewy’ の美しさには圧倒されました。
マット・ゴールドがペダル・スティールを弾く曲も、桃源郷サウンド。

そして驚いたのは、‘Diversey Beach’ にフィーチャリングされたフィメール・ヴォイス。
日本語の歌詞にえっ?と驚いたら、なんと歌っているのはメイ・シモネス。
レザヴォアの音楽性とベスト・マッチングで、メイ・シモネスの起用は大正解ですね。

空間に音を点描するようなサウンドスケープは、
まさしくアンビエント・ジャズの魅力そのものといえる快作です。

Resavoir & Matt Gold  "HORIZON"  International Anthem Recording Co.  IARC0096  (2025)

Kneebody  REACH
6年ぶりとなるニーボディの新作。
ベン・ウェンデル、ネイト・ウッド、シェーン・エンズリー、アダム・ベンジャミンという
21世紀ジャズの才人4人が集まったスーパー・グループも、はや活動歴24年。
もうそんなになるんですねえ。

カーヴェー・ラステガーの脱退で、ネイト・ウッドがベースも弾いている今作、
YouTube でその様子を見ると、ドラム・スローンに座ったままベース弾くって、
なんか曲芸ぽくて笑っちゃうんだけど。
う~ん、やっぱベーシストはちゃんと入れた方がいいと思うんだけど、
これで演奏が成立しちゃうんだからスゴイよな。

ベッカ・スティーヴンス、グレッチェン・パーラト、マイケル・マヨ、 
ジェラルド・クレイトン、ジョッシュ・ディオンと
大勢のゲストを迎えていた前作とは大きく様変わり、
今作はゲストなしで4人のみで演奏。先鋭的な要素は抑え気味で、
むしろシンプルに演奏しているような印象さえありますね。
もちろんこの4人がプレイしているから、トランペットやサックスのソロなんて、
十分テクニカルではあるんだけれども。

ちょっとローファイなビート・メイキングも、シンプルに力強いサウンドにするために、
あえて複雑さを避けてるような印象も受けます。
かつて曲中でテンポやリックやセクションを次々と変化させていく
インプロヴィゼーションに、新しいミュージカル・コミュニケーションを提示していた
彼らですけれど、今作ではアンサンブルとして場面を動かしていくことを
重視したようで、バンドの一体感が強調されています。

初期ウェザー・リポートに通じるバンド・コンセプトで、
エレクトリック・ジャズにヒップ・ホップとビート・ミュージックを横断させたサウンドは、
唯一無二のプログレッシヴなエレクトリック・ジャズ・バンドとして前進し続けています。

Kneebody  "REACH"  GroundUp Music  no number  (2025)

Mei Semones  Animaru
ブルックリンから J-POP みたいな音楽が出てくる時代が来るとは。
日本人の母を持つという女性シンガー・ソングライターのデビュー作。
「ジャズとボサ・ノーヴァにインスパイアされたインディーJ-POP」とは、
ご本人の言ですけれど、それがすべてを言い尽くしていますね。

メイ・シモネスが弾くギターに、ベース、ドラムス、ヴィオラ、ヴァイオリンという編成で、
ジョアン・ジルベルトに影響されたようなつぶやきヴォーカルのボサ調ばかりでなく、
ハードな質感のマス・ロックみたいな曲もやっています。
日本語英語まじりの歌詞がとても自然体で、
音楽同様どこにも力の入っていないところが、新人ばなれしてますね。

この気負いのなさが魅力で、それでいて音楽はめちゃくちゃ高度。
1曲目の ‘Dumb Feeling’ 、そして3曲目の ‘Tora Moyo’ でも、
いきなり凝ったバップ・フレーズのギター・イントロで始まるんだけど、
こんなリックをさらっと弾くなんて、ただもんじゃないと思ったら、
バークリー音楽大学でギターを学んだんですと。恐れ入りました。
ちなみに ‘Dumb Feeling’ のイントロは、
チャーリー・パーカーのリックと ‘Polka Dots and Moonbeams’ を
組み合わせたんだそう。

楽曲のハーモニー・センスがバツグンに良くって、
ヴィオラとヴァイオリンの弦をレイヤーしたアレンジにも、ウナらされました。
ヘッド・アレンジなのかもしれないけれど、アレンジャーの資質も相当に高そう。

すでに来日公演もしていて、今年のフジロックにフル・バンドでやってくるそうです。
もし単独公演もやるんだったら、観に行きたいな。

Mei Semones  "ANIMARU"  Bayoet  BR066  (2025)

Alvin Cobb, Jr  YOU’LL NEED THIS LATER
バンドキャンプで見つけたシカゴを拠点に活動するジャズ・ドラマーのデビュー作。
本人の自宅とおぼしき住所からサイン入りで送られてきた本作は、
昨年出た自主制作盤。アルヴィン・コブ・ジュニア・トリオとして共に活動している
メンバーのベーシスト/ヴォーカリストのケイティ・エルンスト、
ピアニストのジュリアス・タッカーに、ギタリストのアーロン・デイが加わっています。

ジャズ・ドラマーの作品ながら、
歌/スキャットとナレーションが全面的にフィーチャーされていて、
ベーシストのケイティ・エルンストが7曲で歌うほか、
4人のゲストが各1曲づつ歌っています。
アルヴィン自身がアルバムのオープニングとラストでナレーションをしていて、
ほかに7人ものナレーターがフィーチャリングされています。

本作はアルヴィンの自伝的作品とのことで、
イントロに救急車のサイレンがコラージュされる ‘Change Lanes’ は、
アルヴィンが14年に遭遇した交通事故を表現したものとのこと。
ノーラ・アデのスポークン・ワードのバックで、アルヴィンがドラム・ソロを披露してみせる
‘Before You Go’ なんてのもユニークな演出だなあ。

ストーリーテリングを組み込んで入念にディレクションされたコンポジションは
場面展開も激しく、リズム展開など相当に工夫が凝らされていますね。
メンバーたちの短いながらも効果的なインタープレイや、
アンサンブルがグルーヴして盛り上がる場面も、巧みに織り込まれています。
コンポジションはポップともいえる親しみやすさがありつつも、
フュージョンとは一線を画し、
ジャズとしか表現できないサウンドをデザインしているところが、すごくイマっぽい。
これもまた新しいジャズ表現だなあと、ウナってしまったのでした。

Alvin Cobb, Jr  "YOU’LL NEED THIS LATER"  no label  no number  (2024)

Ronald Shannon Jackson & The Decoding Society  LIVE IN WARSAW
これは、めっけもん!
捨て値を付けられてたロナルド・シャノン・ジャクソンの94年ライヴ盤を救出してきたら、
ジェフ・リー・ジョンソンのギターが炸裂していて、ひゃっほー!!!
え~、こんなアルバムがあったのかあ。

ロナルド・シャノン・ジャクソンについては、これまでも記事にしましたけれど、
今回話題にしたいのは、ジェフ・リー・ジョンソンのほう。

フリー・ファンクとか、パンク・ジャズとか呼ばれていた80年代に、
ジェイムズ・ブラッド・ウルマーやジャン=ポール・ブレリーなどとともに
ぶいぶい言わせてたアヴァン系ギタリストなんですが、
ぼくがひいきにしていたケルヴィン・ベル同様、知名度は低かった人です。
13年に50代半ばの若さで亡くなってしまい、
のちにぼくと同じ年の生まれだったことを知った時は、ショックだったなあ。
James Carter  LAYIN’ IN THE CUT
ジェフ・リー・ジョンソンのギターが活躍しているアルバムでは、
ジェイムズ・カーターの “LAYIN’ IN THE CUT” (00) が忘れられません。
マーク・リーボウとのツイン・ギターで、両者の個性が引き立ったプレイが聴きものでした。
しかもこのアルバムのリズム・セクションは、
ジャマラディーン・タクーマとカルヴィン・ウェストンという、
ジェイムズ・カーターとしては異色の顔合わせだったんです。
このメンバーを集めたからこその演奏に快哉を叫んだんですが、
これ一作で終わったのは、ためすがえすも残念でした。

で、そのジェイムズ・カーターが、ロナルド・シャノン・ジャクソンの
デコーディング・ソサエティのメンバーとして、このワルシャワ・ライヴで
ジェフ・リー・ジョンソンとともに演奏しているんですよ。
ジェフ・リー・ジョンソンはアヴァン系のフリー・ファンクなプレイから、
オーソドックスなハードバップ・スタイルとさまざまなタイプのギターを弾いていて、
あらためてこの人の引き出しの多さに圧倒されます。

ベースがまたスゴ腕で、ンゴレ・ポコシという人が弾いているんですが、
誰それ?と調べてみたら、カメルーン出身のジャズ・ベーシスト。
デコーディング・ソサエティのベースといえば、
かつてはメルヴィン・ギブスが担っていただけに、
その席を任されるのもナットクの実力者です。
このライヴで面白かったのが ‘Now's The Time’。
デコーディング・ソサエティがチャーリー・パーカーの曲をやるとは意外です。

ジェフ・リー・ジョンソンのギターは芸幅がとにかく広くて、
これと決まったスタイルがなかった人でした。
ジョージ・デューク、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ジル・スコット、
マライア・キャリー、エスペランザ・スポールディングなどなど、
ロック、ブルース、R&B、ファンクの現場で引く手あまただったのは、
どんなスタイルでも対応できるスキルゆえで、
強烈な個性は求められなかったのでしょう。
Jeff Lee Johnson  THISNESS
そんな彼の特徴がよく表れていたのが05年作の “THISNESS” で、 
ストリングス・アンサンブルを加えた室内楽あり、ジミ・ヘンドリックスばりのロックあり、
アクースティックのデルタ・ブルースあり、フランス語のポエトリー・リーディングありと、
とても同じギタリストが弾いているとは思えないトラックの連続に、
頭がクラクラします。

ブラインドで聴いたら絶対当てられないギタリストという気がしますが、
一筋縄ではない個性は、唯一無比だったと思います。

Ronald Shannon Jackson & The Decoding Society  "LIVE IN WARSAW"  Knit Classics  KCR3035
James Carter  "LAYIN’ IN THE CUT"  Atlantic  83305-724352357123  (2000)
Jeff Lee Johnson  "THISNESS"  Hope Street  HS10048  (2005)

Jeff Floyd  KEEP TRYIN
ジェフ・フロイドは、しゃがれた塩辛いヴォイスに、
いやおうなくサザン・フィーリングがまとわりつくシンガー。
オーティス・クレイやボビー・ウーマックに影響されたとおぼしき歌声は熱血そのもので、
オーソドックスなソウルもコンテンポラリーなR&Bもどちらもいける人です。

以前はウィリアム・ベルのレーベル、ウィルビーから作品を出していましたが、
本作はミュージック・アクセスというレーベルに移って23年に出したEPの5曲に、
昨年出したシングル8曲を追加したアルバムとなっています。
EPはサブスクにあるんですけど、このフル・アルバムはサブスクに上がっていませんね。

いなたいロウ・ダウンなファンクの ‘Keep Your Fet Wet’ が
バンド演奏なのが嬉しいなあ。
ホーン・セクション付きで、ジェフのMCでサックス・ソロが披露されたり、
グルーヴィなベース・ラインやギターのリズム・カッティングなんて、もうサイコー。
6曲目の ‘Cookie Jar’ もこの曲と同じバンドによる演奏と思われます。

アルバム・ラストでは、ジェフと同郷のフロリダ、ジャクソンヴィルのバンド、
スペシャル・フォーミュラ・バンドをフィーチャーしたりと、
生演奏を聞けるのがチタリン・ソウルではなかなかに貴重なアルバムです。

Jeff Floyd  "KEEP TRYIN’"  Music Access Inc.  no number  (2025)

Willie Clayton  DOUBLE PLAY SOUL AND BLUES    Willie Clayton  DOUBLE PLAY SOUL R&B
2作同時リリースされたウィリー・クレイトンの新作。
向かうところ敵なし、チタリン・サザン・ソウルの帝王であります。
前々作、前作ともレヴューしましたが、イキオイは止まりません。

オールド・スクールなサザン・ソウルに寄せた
“DOUBLE PLAY SOUL AND BLUES” と、
ヒップ・ホップのアプローチもありの現行R&Bに寄せた
 “DOUBLE PLAY SOUL R&B” という、
タイトルに偽りなしのダブル・プレイであります。

力量のあるヴォーカルをいかんなく発揮した “SOUL AND BLUES” に、
メロウな官能性を際立たせた “SOUL R&B” と、
トップの座は誰にも譲り渡さぬヴェテランの凄味が、
すみずみまで行き渡っています。

いったいこの人の絶好調ぶりはどこまで続くんでしょうか。
ファンとしては嬉しい悲鳴であります。
一度チタリンのクラブへ行ってみて、この目で観てみたいなあ。

Willie Clayton  "DOUBLE PLAY SOUL AND BLUES"  Endzone  no number  (2025)
Willie Clayton  "DOUBLE PLAY SOUL R&B"  Endzone  no number  (2025)

Sir Charles Jones  LOVE MACHINE PT.2  Sir Charles Jones  THE ELITE KING
ごひいきのチタリン・サーキット・ソウル・シンガー、
サー・チャールズ・ジョーンズの新作2作。
インディ・ソウルも配信がメインになってしまい、
限定生産のフィジカルの入手は超困難。
おかげでここ4・5年くらいのサー・チャールズのアルバムも買い損ねてました。
前回買ったのが18年作だから、だいぶ間が空いちゃったなあ。

今回入手したのは、昨年夏ごろに出たEP “LOVE MACHINE PT.2”  と、
11月に出たフル・アルバムの “THE ELITE KING”。
なぜか配信には “LOVE MACHINE PT.2” がないんですけど。
「パート2」なのは、01年に出たサー・チャールズの2作目、
 “LOVE MACHINE” の続編ということのようです。

ところでR&B作品でよくわからないのが、EPとフル・アルバムの違い。
EP扱いの “LOVE MACHINE PT.2” は全10曲、40分40秒収録
フル・アルバムの “THE ELITE KING” は全12曲、47分15秒収録
曲数も収録時間もほとんど変わらないのに、どういう仕分けなんでしょうか?

それはともかく、まずEPから聴きましょうか。
1曲目は、スタジアムでのライヴのような観客の歓声をかぶせたニセ・ライヴ仕立て。
狂おしく歌うエモーショナルなサー・チャールズ・ジョーンズ節に、
ニンマリしてしまいます。
オープニングもメロウなトラックですけれど、
2曲目もチタリンにあるまじきラグジュアリーな曲で、たじろいじゃいました。

2曲連続でトロけていると、3曲目でいきなり横っ面をハタかれるような
イキのいいブギー・ファンクなディスコ・ナンバーに、目を覚まされます。
サザン・フィーリングがしたたり落ちる ‘Hold Me Forever’ もたまらない。
しわがれ声のブルージーな味わいを、
メロウなサウンドに包んでシックに仕上げていて、もうサイコーかよ。

一方、サー・チャールズのフェイスブックによると22作目だというフル・アルバムは、
ノッケの3曲のサザン・グルーヴにヤラれます。この骨太な味わいは、
チタリン・サーキット・ソウルじゃなけりゃあ、味わえません。
メンフィスのアンダーグラウンド・シーンで活躍するラッパーのアル・カポネや、
バトン・ルージュ出身のラッパーのブージー・バッダスといったラッパーの起用は、
サー・チャールズの芸風を拡げていますね。

メロウに攻めたEPとは趣向を変え、フル・アルバムは
ハードエッジなプロダクションあり、軽快なステッパーありのヴァラエティに富んだ内容で、
バラディアーとしての魅力も十二分に示しています。
シルクのリード・シンガーだったゲイリー・ジェンキンスを招いた ‘Love We Share’ や、
レ・ジットのリード・シンガーのロイ・アンソニーを招いた ‘Sorry’ も聴きものですね。

ヴェテランらしい力量と余裕を示した傑作。
今後サー・チャールズの代表作として名を残す作品となりそうです。

Sir Charles Jones  "LOVE MACHINE PT.2"  ONErpm  no number  (2024)
Sir Charles Jones  "THE ELITE KING"  ONErpm  no number  (2024)

Oz Noy + Andrew Synowiec
いや~、なんてキモチのいい、胸をすくギター・アルバムでしょうか。
イスラエル出身のオズ・ノイとロス・アンジェルスのセッション・ギタリスト、
アンドリュー・シノウィックの共演、ならぬ競演作。

ツイン・ギターが思い切りバトルしていて、
二人が遠慮なしにギターを弾き倒す演奏ぶりが、快感至極です。
ジャズもロックもブルースもファンクも縦横無尽に弾きこなす
実力派二人だからこその、丁々発止の演奏ぶりは、ギター好きのツボにはまりまくり。
これだけロック色濃いフュージョンはひさしぶりだなあ。

二人を支えるリズム・セクションが強力ですからねえ。
なんたって、マーヴィン・スミッティ・スミスとアドリアン・フェローの二人が
バックアップしてるんだから、そりゃあ怒涛の展開にもなるわけです。
ずいぶん昔に、マーヴィン・スミッティ・スミスがどんだけ好きかって書きましたけれど、
ここでも手数の多いプレイぶりで、トリッキーな変拍子も
楽々こなすタイトなドラミングを聞かせています。

Andrew Synowiec  FUN
今回バンドキャンプのアンドリュー・シノウィックのページから買ったんですけれど、
アンドリュー・シノウィックの22年作もオマケで一緒に送ってくれました。
こちらはオルガン、ベース、ドラムス、パーカッションの編成で、
さらにロック色濃い演奏となっていて、フュージョンのニュアンスはなし。
トーパティ・ブルティガのロック・センスに通じるサウンドといえそう。
面白いのは、シタールを弾いているとしか思えないトラック(6曲目)があること。
クレジットにはないので、どうやらギターの音をシタールふうに加工しているらしい。

ロック・フュージョン・ギター好きなら、大スイセンできる2作です。

Oz Noy + Andrew Synowiec  "RECREATIONAL SUBSTANCE"  House Of Syn Studio  no number  (2025)
Andrew Synowiec  "FUN"  House Of Syn Studio  no number  (2022)

Jeremy Pelt  TOMORROW’S ANOTHER DAY   Jeremy Pelt  WOVEN
大寒波が襲った1・2月の早朝ウォーキングには、
トランペット奏者のアルバムが大活躍しました。
トランペットの響きが凍てつく冷気のなかでキリッと立ち上り、
身体が引き締まるんですよ。

ルデーリのデビュー作、ルビーニョ・アントゥネスの18年作、
ジエゴ・ガルビンのデビュー作を連続でかけて、
0度近い外気に負けじと歩く日々が続きました。

どれもブラジルのジャズばかりですけれど、
そんな時にタイミング良く、ジェレミー・ペルトの新作が届きました。
昨年出た前作では、人力テクノ・ドラムスのパイオニアで、
エレクトロニック・サウンドの重要プロデューサーでもある
ディアントニ・パークスをプロデューサーを起用して、めちゃカッコよかったんですが、
取り上げそびれたので新作と一緒に書いちゃいましょう。

ジェレミー・ペルトはハード・バップ系の伝統ジャズをやってた人ですけれど、
エレクトリック路線に一時期転向した後、またアクースティックに回帰したりと、
自身の領域を広げてきた人ですね。
前作 “TOMORROW’S ANOTHER DAY” は、
3曲でプロデュースを務めたディアントニが叩く
ビートメイカー的なクールなドラミングがとにかくカッコイイ。

全曲ディアントニがプロデュースしたらかくやという気もしたんですけれど、
ペルトが思いっきりソロをとる純然たる4ビートの曲なんかもあったり、
さまざまなサウンド・ヴァリエーションが楽しめるのが、このアルバムの良さでした。
ソロよりもサウンド重視の、フレディ・ハバードのCTI作品みたいな(例えが古い)。

それに対してディアントニの抜けた今作では、
前作で印象的だったサンプリング・ループは聴かれなくなってしまいましたけれど、
モジュラー・シンセ奏者が加わるほか、ヴォーカリストも1曲起用して、
エレクトリック・ジャズ/フュージョン寄りのサウンドを聞かせます。
一方、バラードでは美しいアクースティックな・サウンドを展開していて、
エレクトリック/アクースティックのバランスが見事な作品に仕上がっています。

Jeremy Pelt  "TOMORROW’S ANOTHER DAY"  Highnote  HCD7358  (2024)
Jeremy Pelt  "WEVEN"  Highnote  HCD7363  (2025)

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