

ブラジル音楽のメインストリームがすっかりオルタナティヴになってしまって、
MPBとずいぶん縁遠くなっちゃいました。
20年代に入ってからのデータベースを見たら、MPBはたった6枚しかなくて、
本当にぜんぜん聴いていないんだな。
そんなことに気付かされたのは、ひさしぶりにMPB王道といえそうな
シンガー・ソングライターのアルバムがまとめて3作日本に初入荷したから。
リオのニテロイに生まれバイーアで育ち、現在はサンパウロで活動する
ギリェルミ・ネヴィスの18・20・24年作がそれで、すべて自主制作盤です。
サンバ、ボサ・ノーヴァ、ショッチなどブラジル音楽の多彩なリズムをベースに、
セルジオ・サントスを思わせるボサ&ジャジーな作風の楽曲が素晴らしい。
特にぼくが気に入ったのが18・20年作。
24年最新作ではギタリストのジョアン・カマレロが音楽監督とアレンジを務めていましたが、
18・20年作では、ほとんどの曲のアレンジをフレッジ・マルチンスが手がけています。
フレッジ・マルチンスは、17年にリスボンへ渡ったブラジル人シンガー・ソングライター。
先日カーボ・ヴェルデのナンシー・ヴィエイラと共演したアルバムを制作し、
7月には来日も予定されているフレッジですが、
そのためこの2作はサン・パウロのほかリスボンでもレコーディングされています。
フレッジがアレンジした曲では、フレッジがギターも弾いています。
センシティヴな楽曲を少ない音数で引き立てるフレッジのアレンジが効果的で、
さりげないボサ・ノーヴァ気質のギリェルミの歌いぶりとベスト・マッチング。
ギリェルミの妹エレーナ・ネヴィスや娘のドーラ・ネヴィスとデュエットする曲もあって、
心があたたまります。
18年作にインスト演奏の曲が1曲あって、これがもうめちゃくちゃ泣ける曲。
なんてジェントルなメロディ。フィーチャーされるナイロール・プロヴェッタの
柔らかなクラリネットの音色が優美そのもの。
さらに弦楽5重奏が加わって夢見心地に誘います。
この曲はギリェルミとエドソン・アルヴィスの共作で、
エドソンがギターとアレンジをしています。
オーセンティックなMPBの良さをこれほど凝縮した作品は、いまや希少といえますね。
Guilherme Neves "PESCADOR" no label GPN012018 (2018)
Guilherme Neves "AFOXADO" no label GPN012020 (2020)