
エッジの立ったンゴニの響きに、
粗削りな女グリオの歌声がのってくる20数秒で、はや破顔一笑。
もう大好物なんですよ、こういうの。
ジェリ(グリオ)が面々と変わることなく伝えてきた、
オーセンティックなマンデ伝統音楽です。
叔父のババ・シソコやサンバ・トゥーレのアルバムで
ンゴニをプレイしてきたジメ・シソコのデビュー作。
20年にイタリアのジャズ・レーベルから出ていたんですね。
ジメの妻で歌手のアイチャタ・バに、リズム・ンゴニのブバカル・M・ジャバテ、
ベース・ンゴニのシディ・バ、ムクタル・シソコのパーカッションの4人による
ジャマ・ジギというグループを率いた名義のアルバムで、大勢のゲストが参加しています。
まず嬉しいのが、17年5月に亡くなったズマナ・テレタの参加。
生前の録音がいまなお時折出てくるズマタですけれど、
やっぱりズマタのソクがアンサブルに加わると、サウンドがぐっと深まりますよねえ。
滋味たっぷりのひび割れた音色が、たまりません。
ババ・シソコやサンバ・トゥーレも参加していますが、ぼくがシビれたのは、
‘Djuku Ya Magnie’ で歌っているサディブ・カンテという人。
最近の若いグリオから聴くことのできなくなった古い節回しで歌う人で、
味のあるヴォーカルを聞かせてくれます。
ジメ・シソコが弾くンゴニはアクースティックあり、アンプリファイドありで、
粒立ちの良いピッキングは、一級のプレイーヤーの証ですね。
またジメはタマも演奏し、ドゥンドゥンバやシェケレほかの
パーカッション・アンサンブルで聞かせる ‘Bi Tiew’ で
見事なタマの演奏を聞かせるほか、
ラスト・トラックではジメ一人によるタマ独奏を聞くことができます。
このアルバムは録音・ミックスがバツグンに良くて、
マンデ伝統音楽でこんなにキレッキレのサウンドが聞けるのはひさしぶり。
レコーディングは19年夏にバマコのボゴラン・スタジオで行われ、
同年9月にイタリアでミックスされたとあります。
しかし17年5月に亡くなったズマナ・テレタが参加しているのだから、
もっと前に録音したトラックも交じっているということなのでしょうね。
Djime Sissoko & Djama Djigui "KABAKO" Caligora 2272 (2020)