
自分が注目しているアーティストが来日するなんてことは、ほぼほぼないというのが、
世間とズレた音楽嗜好を持つ人間の悲しき現実なので、
カナダ在住タイ人ドラマーのサリンが来日するというニュースには飛び上がりましたよ。
サリンの “RAMMANA” は、去年のベスト・アルバムでまっさきに掲げた作品。
そのサリンをコットンクラブが呼んでくれるとは思わなかったなあ。
取材前日のライヴを観たんですけれど、プレイ中ずーっとニコニコしていて、
こんなにずっと笑顔でプレイするドラマーも珍しいんじゃないですかね。
心の底からプレイするのが楽しくってしょうがないといった感じで、
観ていてとてもとてもすがすがしい思いがしました。
そしてプレイの方もスゴかった。
これまで観た女性ドラマーでは、ダンプスタファンクでやってきたニッキー・グラスピーの、
ビリー・コブハムばりのパワフルなドラミングに驚愕したことがありましたけれど、
別な意味でサリンのドラムスにも驚かされました。
小柄な身体から繰り出される強力なキック。
ドラミングが全体にとても精緻で、音量のバランスがバツグンにいいんです。
複雑なフィルを叩く場面などでは、さすがに笑顔が消えて、
すごく集中した表情を見せるんですけれど、そうした時でも、
ビートからの接続や手足のコンビネーションが崩れず、
速い連打やタム回しで音の流れを作っていくのに、ウナらされました。
そうした高い演奏力は、名のあるドラマーに師事して習得したのではなく、
完全独学で誰にも師事したことがないっていうんだから、またまたビックリです。
今日び石を投げればバークリー卒というドラマーばっかりですけれど、
こういう人が野良から出てくるってのが嬉しいよなあ。
その実力をどう身につけてきたのかという話もユニークなら、
プロ入り当初の音楽も予想外で、そのあたりの話は
ミュージック・マガジンの今月号に書いたので、ぜひ読んでみてください。
“RAMMANA” にカンゲキして、21年のデビュー作も聴いてみたら、
まったく志向の違うネオ・ソウル~ファンク・アルバムだったのには、へ~え。
全曲シンガーやラッパーをフィーチャーした歌ものとなっていて、
もろにディスコな曲もあれば、ジャジーなネオ・ソウルあり、
ラテン・ソウルあり、ファンク・ロックありとヴァラエティ豊かなアルバムとなっています。
感心したのは楽曲が粒揃いで、どの曲もフックが利いていること。
“RAMMANA” でもサリンの作曲能力が示されていたけれど、
キャッチーな ‘In Tune With The Moon’ なんて、
ヒット・チャートを賑わせたって不思議ないよねえ。
ドラムスのプレイで注目は ‘Reality’。 曲はジャジー・ソウルなんだけど、
トニー・アレンをまんまトレースしたアフロビート・ドラミングを聞かせます。
なんでもこの頃からアフロビートを賢明に練習していたんだそうで、
この曲が初のお披露目だったそうです。
全8曲わずか30分足らずで終わってしまい、
もっと聴きたい!と思わせる、ポップな訴求力に富んだ快作です。
Salin "COSMIC ISLAND" Salin Music no number (2021)








