
モロッコからグナーワの音楽家が3人来日して、
横浜元町でリラの夜を再現するというのだから、ちょっとびっくり。
イヴェント情報に疎くって、たいてい事後に知り地団駄踏むのが毎度なので、
事前に情報をキャッチできたのはラッキーでした。
来日するのは Younes Hadir、Karim Bazzi、Ahmed Baska という3人で、
知らない名前ばかり。ネット検索してみると、Younes Hadir のフェイスブックに、
ラッパーみたいなヒップ・ホップ・ファッションの兄ちゃんが出てきて、
別人かと思ったらどうやら本人らしい。メンバーで一番若そうにみえたが、
これでグナーワ名人マアレムの称号を持っているというんだから、わからないもんだなあ。

Karim Bazzi は、モロッコ文化をプロモートする非営利団体
アソシエーション・オヴ・ピュア・エナジー・モロッコ(APEM)の主宰者とのこと。
3人のうちゆいいつの黒人の Ahmed Baska を検索すると、
グナーワ・ハルワのCDジャケットが出てきた。
え!これ持ってるぞ、と棚から取り出したら、ジャケット写真の中央に
Ahmed Larfaoui "Baska" と書かれて映っているのが彼らしい。
イヴェント当日にCDを持参して確かめたら、間違いなくご本人。
「なんでこんな昔のCDを持ってるんだ!」とアフマドがめちゃ喜んで、
ほかの2人も「見せて、見せて!」と大騒ぎになりました。
イヴェントは、カリム・バジの短いMCで始まり、
ゲンブリを弾き歌うユネス・ハディールと、
カルカベとコーラスを受け持つカリム・バジとアフマド・バスカの3人に、
日本人グナーワ演奏家の山田一博と朝倉佳恵がカルカベでサポートします。
そこにサプライズ・ゲストで、セネガルの4人が参戦。
2週間前に日本ツアーを終えたばかりのグリオ・シンガー、サリウ・ニングに、
https://bunboni.livedoor.blog/2017-02-04
サリウのバンドでタマを演奏するママ・ンジャイとダンサーが2名。
サリウはジェンベを演奏していました。

エッサウィラのグナーワ・フェスティヴァルでドゥドゥ・ンジャイ・ローズと共演するのを
ヴィデオで観たことがあり、グナーワとセネガルの親和性を感じたものですけれど、
じっさいこのイヴェントでもゲンブリとタマが掛け合う即興は、見事なものでした。
あと気付いたのが、ゲンブリのフレーズに合わせて、
アフマド・バスカが足のステップをぴたり合わせてダンスしてみせたところ。
足を踏むリズムがゲンブリのフレーズと一緒だとは、これは生を観ないとわからない。
タップと違って、足をぎゅっと踏みつけるようなステップが興味深かったです。
会場のクリフサイドというハコも、秀逸でした。
終戦の翌46年に建設された山手舞踏場というダンスホールだったそうで、
風合いのある社交場というしつらえは、リラの夜の儀式の演出にぴったりでした。
横浜元町というロケーションも良かったなあ。
あえて苦言を呈するなら、
単にグナーワを演奏するだけのコンサートではなく、
「灌頂儀礼」という冠のあるイヴェントを企画したのにも関わらず、
リラの儀式の解説や紹介などがいっさいなかったこと。
楽しく踊って、ちょっと風変わりな国際交流の体験気分を味わうだけでいいの?
宗教儀礼をエキゾティックな興味だけで消費してしまう態度は、
異国文化への敬意を欠いてはいませんかね。
Gnawa Halwa "RHABAOUINE" Blanca Li 08662-2 (1994)