after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

Searching for good music of the world

カテゴリ: 南部アフリカ

David Ze 1975
アンゴラ独立闘争が最高潮に達した時代に録音された、
アンゴラ音楽の金字塔たるダヴィッド・ゼーの唯一のレコードがリイシュー!!!
フランスの新進リイシュー専門レーベル、ジャジーベルから、
LPとCDの両方のフォーマットで出すというビッグ・ニュースに、
昨年末から首を長くして待っていたんですが、
結局CDの発売は見送られてしまいました(シクシク)。

とはいえアンゴラ盤LPのリイシューは、世界初という画期的な出来事。
75年に出たオリジナルのCDA盤はシングル・ジャケットでしたが、
ゲートフォールド仕様にして往時の写真や簡単な解説を載せています。

ダヴィッド・ゼーことガブリエル・ダヴィッド・ジョゼ・フェレイラは、
44年ルアンダ生まれ。
3つ年上の歌手ウルバーノ・デ・カストロと出会って歌手を志し、
アンゴラ独立闘争時代に反植民地主義思想を打ち出す歌手として活動を始めます。
当時新進のグループだったジョーヴェンス・ド・プレンダに加入して、
72年にデビュー・シングルを出しました。

その後アンゴラ解放人民軍(FAPLA)兵士の士気高揚と、
アンゴラ改革のための労働運動を国民に広める役割を担った
アリアンサ・ファプラ=ポヴォに、ウルバーノ・デ・カストロや
アルトゥール・ヌネスらと共に加わり、多くの革命歌を歌います。

75年独立後は新大統領のアゴスティーニョ・ネトから厚遇され、
MPLA政権下で文化省の音楽局長という要職に就き、
モザンビーク、サントメ・プリンシペ、ギネア=ビサウの独立記念式典で歌い、
ネトの国内外のツアーにも同行しました。

しかし、77年5月27日に勃発したクーデター未遂事件の際、
ゼーは正体不明のグループによって誘拐され、ウルバーノ・デ・カストロや
アルトゥール・ヌネスらとともに殺害されてしまいました。
この時のクーデター失敗による報復の嵐で数千人が犠牲となりましたが、
犠牲者に関する公式な記録は存在せず、ゼーの遺体も発見されていません。

2018年に設立されたM27協会は、1977年5月27日の政治的粛清の犠牲者を
追悼する遺族団体で、政府に対して事件の真実と情報開示を求め、
犠牲者の詳細な調査や遺骨の身元確認を要求しています。
今回のリイシューはゼーの遺族のみならず、
M27協会の全面的な支援を受けて実現したもので、
解説には協会への謝辞が載せられています。

本作の伴奏はコンジュント・メレンゲ(オス・メレンゲス)が務めていて、
アンゴラ音楽黄金時代の頂点といえるセンバ、ラメントを聴くことができます。
ゼーが暗殺された後、ゼーの歌は長く発禁・放送禁止となっていましたが、
27年に及んだアンゴラ内戦終結後、再びゼーへの注目が集まり、
多くの歌手たちがゼーの曲をカヴァーするようになりました。
David Zé  Memorias 19
04年にはアンゴラ国営ラジオ局がアンゴラ音楽黄金時代のパイオニアたちの
録音をリイシューしたシリーズ “MEMÓRIAS” の一枚として、
ゼーの音源39曲が2枚組CDにまとめられました。
おそらくゼーのほぼすべての録音で、今回のCDA盤も全曲収録されています。

これまで欧米のディガーたちから無視され続けてきたアンゴラ盤が、
突如リイシューされることになったきっかけは、ダミアン・マーリーとナズが
本盤収録の ‘Undenge Uami’ を ‘Friends’ にサンプリングしたからでしょう
(“DISTANT RELATIVES” 所収)。
当時のアンゴラでリリースされていたのはもっぱらシングル盤で
LPは珍しかっただけに、ゼーの本作はその意味でも貴重な一作だったのです。

[LP] David Zé  "MUTUDI UA UFOLO / VIUVA DA LIBERDADE"  Jazzybelle  JB010  (1975)
David Zé  "MEMÓRIAS"  Rádio Nacional De Angola  RNAPQ19

Asher Gamedze & A Semblance  OF RETURN
もっともシリアスなケープ・タウン・ジャズを聞かせる
バンド・リーダー/ドラマーのアッシャー・ガメゼの4作目を数える新作は、
また新たなるプロジェクトで制作されています。

デビュー作と2作目はピアノレスの2管カルテット、
3作目はブラック・ラングスを名乗る10人編成のアンサンブルでしたが、
今作はクインテットでア・センブランスと称しています。

60年代のミンガス・ジャズを想起せずにはおれない
ガメゼの汎アフリカ解放闘争のスローガンを掲げる政治的ヴィジョンは、
今作でも不変。黒人意識運動の最前線にいて殉教した
反アパルトヘイト活動家スティーヴン・ビコのエッセイ集 “ON DEATH” に
着想を得た ‘Stranger No Death’ から、アルバムはスタートします。

ガメゼが「集会の実践」と呼ぶ、集い、音を奏で、新たな集合知を探求する試みは、
今作ではルーズなファンキーさと解放感を呼び込んだようです。
15分を超す長尺なトラックがいくつもあった前作と比べて、
今作の軽快なリズムや土臭いグルーヴは、
これまでのガメゼのアルバムにない親しみやすさがあります。

前作に続いて参加しているパーカッションのル・スレイエンとガメゼが、
アンサンブルに躍動感を与え、前作でも活躍していたノブレ・アシャンティの鍵盤が
鋭いリフで印象的なフックを与え、サイケデリックなシンセ・ソロも披露しています。

スポークン・ワードのグループ・リーディングがリードする ‘Distractions’ の
ブラッキーなグルーヴの上に乗るアブストラクトなトランペット・ソロがカッコいい。
続く ‘Of The Fire’ はオルガンの熱い響きと割り切った8ビートのジャズ・ロックが
印象的。ここでもキーガン・スティーンカンプのトランペット・ソロが耳残りします。

しっかりと構成されたコンポジションと、
与えられたスペースで存分に披露されるインプロヴィゼーション、
それを支える揺るぎないグルーヴが絶妙なバランスとなっている本作、
コンシャスな南ア・ジャズの頂点といえる作品です。

Asher Gamedze & A Semblance  "OF RETURN"  Northern Spy  NS175  (2026)

Madala Kunene & Sibusile Xaba Madala Kunene  KING OF THE ZULU GUITAR LIVE VOL.1
伝説化した南アのギタリスト、フィリップ・タバネに10年間師事した
新進ジャズ・ギタリスト、シブシル・シャバが
ズールー・ギターの重鎮マダラ・クネネとの共演作を出したと聞いて、興味をおぼえました。

フィリップ・タバネが生み出したマロンボ・ミュージックは、あまりに線が細く、
当方まったく評価をしておらず、シブシル・シャバにも魅力をおぼえません。
でも「ズールー・ギターの王」と称されるマダラ・クネネの方には、
まさしくマロンボに欠けているズールーらしいアーシーな力強さがあって、
そこに惹かれるものがあります。

51年にダーバン近郊の街ケイトー・マナーに生まれたマダラ・クネネは、
強制立ち退きでタウンシップへの移住を強いられ、
アパルトヘイト下で苦しんだ世代の音楽家です。
7歳の時からダーバンの海岸で手製のギターを弾き歌って地区の人気者となり、
音楽家となる強い意志をもって演奏活動を続けるも、思うような活動はできず、
アパルトヘイトが終焉した90年になって、ようやくデビュー・アルバムを出します。

マスカンダのミュージシャンとは違い、もとが手作り楽器を弾き歌っていた
ストリート・ミュージシャンから身を立てた音楽家なので、
マスカンダのギタリストとは異質の独自の個性を持っていて、
まさにワン・アンド・オンリーのズールー・ギタリストといえます。

その際立って個性的なギターが海外のプロデューサーに注目され、
マダラ・クネネの個性を生かしたとは言い難い作品が続きました。
ドラムンベースまでやっていたのにはさすがに呆れましたが、
そうした不遇なキャリアのなかで、弾き語りをドキュメントした95年作は、
マダラの素の姿を捉えた貴重なアルバムでした。

反復フレーズをひたすら繰り返すエネルギーと奔放な歌に
ズールーの逞しさを聞かせる一方で、
時折挟まれるつづれ織りのようなリックや、
ギターの音量コントロールには、繊細な表現をみせます。
そもそもズールー・ギターと総称するような呼び名を、
マダラのギター・ミュージックにあてるのは無理があるように思いますね。

その独創的なギターはマダラ独特のもので、
このアルバムもアフリカ音楽ファンより、ヤスミン・ウィリアムズのような
ギター・ミュージックに興味のある人向けの作品といえます。

Madala Kunene & Sibusile Xaba  "kwaNTU"  Mushroom Hour Half Hour/New Soil  M3H012/NS0147CD  (2025)
Madala Kunene  "KING OF THE ZULU GUITAR LIVE VOL.1"  B&M Music  BNETCD001  (1995)

Mbuso Khoza  IFA LOMKHONO
日本未入荷の23年のアルバム、これはまったく気付かなかったなあ。
ンドゥドゥーゾ・マカティーニとコラボしたズールー人シンガー、ムブソ・コーザの作品。
ズールー人シンガーといっても大衆歌謡の歌手ではなく、ムブソ・コーザは、
俳優、舞台監督、文化活動家として活動するズールー文化のアンバサダーです。

ズールーランドにもっとも古くヨーロッパ人が入植したエスホーの旧市街に生まれた
ムブソ・コーザは、幼い頃からズールー文化のただなかで育ち、
ズールーのルーツと深く結びついた歌を通して、
物語を伝えることに情熱を注いできた歌手です。

舞台芸術の分野においては、
ズールー王国のシャカ王と王位継承をかけた戦いの物語で、
南ア史上最高額の制作費を誇った連続テレビ・ドラマ
『シャカ・イレンベ』の制作にサウンドトラックの音楽面やその他で関わり、
教会を舞台にした権力闘争をテーマとしたテレビ・ドラマ
「ウムコカ」では、俳優として出演しています。

本作はンドゥドゥーゾ・マカティーニがプリプロをしてレコーディングに臨んだ作品で、
そのしっかりとした制作ぶりが実った力作となっています。
バックはンドゥドゥーゾ・マカティーニのピアノに、前回記事の作品に参加していた
ノルウェイ人ベーシスト、マグネ・トルモッドゥサーテルに、
アヤンダ・シカデのドラムス。もう一人のドラマー、ティノ・ダンバと
アヤンダ・シカデがレパートリーを半数ずつ分け合ってプレイしています。

このほか、リンダ・シアカカネのテナー・サックス、ンダボ・ズールーのトランペット、
ジョエル・クレインのギター、そしてウハディ(楽弓)、イシトロトロ(口琴)、
ンビーラを演奏するンドゥミソ・ムシャリが伴奏を務めています。
ンドゥミソ・ムシャリと共作した3つの短いインタールードを除いて、
全曲ムブソ・コーザとンドゥドゥーゾの共作。

ズールーの祖先が伝えてきた物語を、
民族の境界を越えて届けようとする強い意志が感じ取れるこの作品、
ムブソのコクの深い声が祖先の響きを運び、
ズールーの言語や文化を超えた永遠の叡智と共鳴しあうのを感じます。

ンドゥドゥーゾをはじめとするジャズ・ミュージシャンたちが奏でるジャズ表現が、
ズールーの伝統音楽と親密な対話を行って物語を膨らませ、
歌の内容を知る由もない者に、訴えかけてくる力をもたらしています。
ちょっとこれ、まったく日本未紹介というのが遺憾すぎる(気付かず申し訳なし)
スゴイ作品ですよ。

Mbuso Khoza  "IFA LOMKHONO"  Ropeadope  RAD730  (2023)

Karl-Martin Almqvist Ababhemu Quartet  THE TRAVELERS
昨年来日した南アのジャズ・ピアニスト、ンドゥドゥーゾ・マカティーニ。
ンドゥドゥーゾが参加した近作はチェックしていたつもりだったんだけど、
これは見逃してたなあ。

スウェーデンのヴェテラン・サックス奏者カール=マルティン・アルムクヴィストに、
ノルウェイ人ベーシスト、マグネ・トルモッドゥサーテル、
ンドゥドゥーゾの古くからの盟友ドラマー、アヤンダ・シカデが組んだ
北欧・南ア合同カルテット。

ンドゥドゥーゾの15年作 “LISTEN TO THE GROUND” のレコーディングに
このメンバーが揃って共演し、これをきっかけにザ・アバベム・カルテットを結成。
22年のイースタッド・スウェーデン・ジャズ・フェスティヴァルで初お披露目をして、
その数日後にレコーディングしたのが本作だそう。

レパートリーはカール=マルティンの曲が6曲、ンドゥドゥーゾとマグネの曲が1曲ずつで、
コンテンポラリー・ジャズ・マナーの演奏となっています。
カール=マルティンの量感たっぷりのテナー・サックスの音色がいいですねえ。
ソプラノ・サックスも音色が太くって、逞しいなあ。
ンドゥドゥーゾがゴンゴン鳴らすパワフルな左手のハーモニーと、相性抜群です。

南ア・ジャズの色彩は特にないものの、
スケール感のある雄大なンドゥドゥーゾのピアノと、
カール=マルティンのストロングなサックスのコンビネーションが、
南アと北欧のダイナミズムを引き出した作品となっています。

Karl-Martin Almqvist Ababhemu Quartet  "THE TRAVELERS"  Ropeadope  RAD733  (2024)

Steve Dyer  MULTIPOLAR
24年にひさしぶりのアルバムを出した
南アのサックス奏者/プロデューサーのスティーヴ・ダイアー。
昨年10月に続いて出た新作から、スティーヴの創作意欲の高まりが伝わってきました。

全9曲、スティーヴが書き下ろした新曲。
インナー・スリーヴに各曲に込めたスティーヴのメッセージが記されています。
貪欲な権力によって分断される世界に危機感を表明しつつも、
新進気鋭の若い才能を信じる年長者のまなざしや、
夢を追い求めて挑戦し革新を続ける人々への敬意、
祖先への帰属意識といったスティーヴの世界観にもとづく哲学が滲む作品です。

スティーヴの娘ブシ・ダイアーとナンディ・ズールーが短いリフレインを歌う
1曲目の  ‘Revolving Earth’ を聴いて、
ふとコルトレーンの『クル・セ・ママ』が思い浮かびました。
スティーヴの思索的な作風はコルトレーンの系譜を継いでいるんじゃないでしょうか。

今作は息子のボカニ・ダイアーは不在で、プレトリア出身の若手テボホ・コベディが
起用されているんですが、この人のピアノ、いいですよ。
ヒラメキのある個性的なフレージングを持っていて、才能を感じさせます。
ドラムスは前作に続きスフェレロ・マジブコとシンフィウェ・ツァバララーが起用され、
ツイン・ドラムスを聞かせるトラックもあります。
ベースにはシェーン・クーパー、テンビンコシ・マヴィンベラ、
ヴィウェ・ムキズワナが起用。こちらもツイン・ベースを聞かせるトラックがあります。

弦楽四重奏を加えたトラックがあるなど、各曲の表情は多彩で、
アブドゥラー・イブラヒムの作風を思わす ‘Genesque’ や、
スティーヴがリズム・ギターも弾くフォーキーな ‘Ancestral Home’ もあります。
ベスト・トラックは、ツイン・ドラムスとベース、ピアノをバックにした ‘Forefathers’。

テボホ・コベディの右手の反覆フレーズをベースに、8分の6拍子をグルーヴさせる
ベースとドラムスのサイクルが自由に変化していき、
やがてピアノも右手の音程を崩しながら、左手で自由な即興をするなど、
複雑なレイヤーをかたどっていきます。
スティーヴのサックスだけがひょうひょうと吹いていて、
豊かなテクスチャを生み出しています。

Steve Dyer  "MULTIPOLAR" Ropeadope  RAD770  (2025)

The Kasambwe Brohers
ここ数年マラウィのストリート・バンドのリリースが続くのは、どういう風の吹き回し?
こんな素朴極まりないローカルなサウンドに、
次々と欧米のレーベルが関心を寄せるというのも、不思議な現象。

今回新たにラインナップに加わったのは、
マサチューセッツ現代美術館が発足させたレーベルの初作品。
実はこのアルバム、デジタル/LPリリースのみでCDリリースはありません。
プロモCDをいただいたので書いております。申し訳ありません。

カサンブウェ・ブラザーズは、マラウィ第2の都市ブランタイア郊外の
ンディランデの市場で路上演奏しているストリート・ミュージシャン。
87年に結成されたババトニ(大型ベース)、ギター、ドラム・キットの3人組。
92年に録音したカセットがヒットしてマラウィ全土で評判となり、
当時マラウィでもっとも海賊版が出回ったカセットとなりました。
メンバーの3人はいずれもまだ十代の少年で、
カワイイ声がチャーミングだったんです。
MOYO WANGA  NDILIBE AMBUYE
このカセットは、当時マラウィの音楽をプロデュースしていた
スコットランドのインディ・レーベル、パムトンドが制作したもので、
もう1本のカセットと2イン1でCD化されたことがあります。
実はこのCDを持っていて、ジャケットにカサンブウェ・ブラザーズの3少年が映っています。
パムトンドはマラウィの音楽を世界に発信していたゆいいつのレーベルで、
当時レーベル元から直接購入して、
「君は唯一の日本のお客さんだ」」と珍しがられてました。

現在のメンバーは代替わりしていて、
ババトニ奏者のコンザニ・チクワタが、オリジナル・メンバーの2兄弟の弟とのこと。
新メンバーとなったカサンブウェ・ブラザーズをフックアップしたのが、
マラウィのミュージシャンを録音しているフランス名誉領事のリュック・デシャン。

デシャンはヘン・ハウス・スタジオのプロデューサー、
ハーラン・スタインバーガーと協働してレコーディングを企画し、
マサチューセッツ現代美術館がカサンブウェ・ブラザーズの3人を
マサチューセッツへ招聘し、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、
フリューゲルホーンの5人のサポート・ミュージシャンを加えて
レコーディングしたのが本作です。

マダリッツォ・バンドやギャスパー・ナリとだいぶ違う印象を受けたのは、
マラウィのローカル臭さは十分に感じられるものの、
野趣なニュアンスが薄く、親しみやすく聴きやすさがあることでした。
これはパムトンド盤のオリジナル・メンバー時代から変わっていませんね。

アメリカ人サポート・ミュージシャン5人が加わるまでもなく、
フォークロアにとどまらない音楽性が3人にはあります。
まずメンバーにギターがいるのが違います。
さらにババトニも、一弦ではなく四弦ということから、
民俗楽器といえど大型バンジョーという楽器特性を生かして、
西洋楽器のベースと同じ役割を果たしています。

パムトンド盤の写真を見ると、オリジナル・メンバーのギターはハンドメイドで、
マダガスカルのカボスによく似ていますけれど、
今のメンバーが使っているのは市販のギターです。
ロンウェ、マクワ、マンガンジャというマラウィの伝統リズムを使っているのだそうで、
自分にはそのヴァリエーションが判別できませんけれど、
いずれも軽快なダンス・リズムで、すがすがしいグルーヴ感があります。

最後にこのプロモCDですが、一般販売用となんら遜色ない出来で、
きちんとデザインされた見開きのパネル仕様となっているんですね。
クレジットだってちゃんと載っているし。
いわゆるプロモCDというと、ペーパー・スリーヴならマシな方で、
なかにはジャケットなしのプレスシートのみ、なんてのも珍しくありません。
なんでこんなにしっかり作っていながら、販売しないのかなあ。もったいなあ。

The Kasambwe Brothers  "THE KASAMBWE BROTHERS"  MASS MoCA  no number  (2025)
The Kasambwe Band, Kathumba and Thyolo Jazz, Namoko and Chimvu Jazz  "MOYO WANGA : NDILIBE AMBUYE"  Pamtondo  PAM005/006CD

Carlos Lamartine  HISTÓRIAS DA CASA VELHA
これはお宝! 貴重なCDを発見しました。
アンゴラ独立前の時代から活躍するカルロス・ラマルティーネの初期録音集。
独立前後に活躍したアンゴラの歌手やバンドの編集盤は、
国営ラジオ局の「ポエイラ・ノ・キンタル」シリーズで20タイトル以上も出たんですが、
カルロス・ラマルティーネはそのなかに選ばれなかったんですよねえ。
https://bunboni.livedoor.blog/2015-04-14

99年にアンゴラのR.M.S.から出た本CDは、
73年ヴァレンティン・デ・カルヴァーリョに初録音したンゴラ盤シングルの2曲を筆頭に、
73年から77年にかけてCDAから出したLPやシングルに加え、
81年録音の5人の歌手のコンピレーションからカルロス・ラマルティーネの2曲が
最後に収められていて、ほぼ全録音集といえる編集になっているんじゃないでしょうか。
Carlos Lamartine  Memorias
カルロス・ラマルティーネのアルバムは、拙著『ポップ・アフリカ800』では
97年の “MEMÓRIAS” をセレクトしたんですが、
本作の解説によると、あのCDはカルロスのカムバック作だったんですね。

カルロスの初期録音といえば、ブダの “ANGOLA 70’S  1974-1978”、
アナログ・アフリカの “ANGOLA SOUNDTRACK 2”、
ポルトガルで出たCDブック仕様の4枚組アンソロジー2タイトル
“ANGOLA - AS 100 GRANDES MÚSICAS DOS ANOS 60 E 70” 
“ANGOLA SAUDADE 60 - 70” で各1曲ずつ聴ける程度しかなかったので、
まとめて20曲も聴けるのは、超貴重です。

ファットな逞しい歌声で歌われる哀愁味たっぷりのボレーロが、この人の真骨頂ですね。
アンゴラ人好みの泣きのメロディの佳曲が多く、センバのみならず、
アンゴラ大衆歌謡の名曲を数多く生み出した作家だったことがよくわかります。
メレンゲをやっているのも、70年代前半のアンゴラらしいレパートりーですね。
ざっくばらんとした歌いぶりには、庶民的な味わいが濃厚に映し出されていて、
この時代ならではの得難い魅力を湛えています。

ちなみに、Discogs には別ジャケットのポルトガル盤が載っていて、
このアンゴラ盤は掲載されていませんね。
サブスクにもそのポルトガル盤ジャケットで配信されているほか、
チョクウェ人の仮面を配した75年シングル盤のジャケットで、
同内容のアルバムが配信されています。

Carlos Lamartine  "HISTÓRIAS DA CASA VELHA"  R.M.S.  CD00.10-2
Carlos Lamartine  "MEMÓRIAS"  Sons D’África  CD0229-2  (1997)

Aldo Milá  KETA! KETA
ジャケットの強烈な絵に惹かれて購入した、20年以上前のアルバム。
アルド・ミラは、93年からリスボンに暮らすアンゴラ人シンガー・ソングライターとのこと。

軽快に刻まれるディカンザと、
硬い打音を響かせるコンガが耳残りするセンバ 'Kalumba'  'Ritual De Muamba' に、
泣きのオブリガードをギターラとヴァイオリンが奏でるボレーロ 'Canção Para Minga' 、
カヴァキーニョ、クイーカの入ったサンバ 'Cachaca D'Angola' 、
そしてこなれたレゲエを聞かせる 'Malta Rasta'  'Aiwa' など、レパートリーは色彩感豊か。

ソングライティングの才もさることながら、
全曲生演奏のプロダクションがハイ・クオリティで、
フルート、サックス、エレクトリック・ギターのさりげないオブリガードなど、
キラリと光る場面があちこちに散りばめられていて、飽きさせません。
00年代のアンゴラ音楽のプロダクションはまだ貧弱でしたけれど、
このアルバムは水準以上のサウンドを聞かせてくれます。
Aldo Milá  MULEMBA
データベースに打ち込んでいたら、この人の99年作を持っていることが発覚。
棚から出してみたものの、まったく記憶になくて、あらためて聴いてみたら、
センバほかアンゴラの伝統リズムを生かしたソングライティングに
キラリと光るセンスを感じさせるアルバムでした。
アンゴラのポピュラー音楽の開祖、ンゴラ・リトモスにオマージュを捧げた曲があったり、
マディンバというアンゴラの木琴(共鳴器のひょうたんが細長く大型なのが特徴)を
フィーチャーした曲があって、それが気に入ったんだっけ。ようやく思い出しましたよ。

ただしプロダクションがなんとも貧弱で、シンセなど鍵盤系のチープな音色が致命的。
そうしたプロダクション面を改善できたのが、03年作といえそうです。
ちなみに、サブスクには08年作 “HERANÇA” という作品だけがあがっていますね。
センバもあるけれど、もっと幅広にアフロ・ポップを展開している好作です。
これ、CD出てるのかなあ。

Aldo Milá  "KETA! KETA!"  Mila Musica  no number  (2003)
Aldo Milá  "MULEMBA"  Cantinho Da Música  no number  (1999)

Gasper Nali  ABALE NDIKUWUZENI  Gasper Nali  CHULE CHULE IWE
マラウィがこんなに続くというのも珍しいなあ。
新たに届いたのは、大型1弦ベース、ババトニを弾き歌うギャスパー・ナリの新作。
ババトニの演奏といえば、マダリッツォ・バンドの新作が届いたばかり。
https://bunboni.livedoor.blog/2025-06-28

北部マラウィ湖の港湾都市カタベイの小さな町に生まれたギャスパー・ナリが
デビュー作を出したのはもう10年も前で、
マダリッツォ・バンドよりデビューは先でした。
ぼくにとっては10年ぶりのアルバムでしたが、18年にLPのみで出していたようです。

デビュー作ではマラウィ湖をバックに3メートルもあるババトニを抱えていましたが、
10年ぶりの本作は、竹藪のなかでなにやら思索中。
ギャスパー・ナリはマダリッツォ・バンドとはまた違う得難い個性の持ち主なので、
これを機に取り上げておきましょう。

両作ともギャスパーがババトニを弾くほか、
牛革を張ったベース・ドラムをキック・ペダルで演奏し、
スウェーデン人プロデューサーのマティアス・ストールナケが
ギター、キーボード、パーカッションでサポートするだけという、いたってシンプルなもの。

どの曲もいかにも南部アフリカらしさに溢れた陽性のメロディで、頬がほころびます。
ギャスパーの人懐っこいヴォーカルがめちゃめちゃフレンドリーで、
聴く者をハッピーな気分にさせますね。
新作のアルバム・タイトル曲は童謡をアレンジした曲だそうで、
なるほど親しみやすさは、そんなところにも理由があるんですね。

遊びゴコロに富んだポップなメロディと弾むようなリズムが心地いい、
アフリカン・フォーキーなアルバムです。

Gasper Nali  "ABALE NDIKUWUZENI"  Spare Dog  SDR005-1  (2015)
Gasper Nali  "CHULE CHULE IWE"  Spare Dog  SDR012  (2025)

↑このページのトップヘ