
ペルー、アヤクーチョ地方の自然と先住民ケチュア人の営みを、
フォルクローレの様式が登場するよりも前の、
歌の原初にさかのぼって表現しようとする秩父在住イルマ・オスノの2作目。
ちらっと試聴しただけで、こりゃあ傑作だと確信し、
発売日に催される記念ライヴの会場で買おうともくろみました。
ヴォイス・パフォーマーと呼ぶにふさわしい、その類い稀なる歌声は、
デビュー作やさまざまな音楽家との共演で承知していましたけれど、
今作ほど自由闊達な発想のアレンジがイルマの歌声を引き立て、
相乗効果をもたらした作品はなかったんじゃないですかね。
日本人音楽家との共演によって、フォルクローレという様式に回収されることなく、
実験的な音処理もいとわずに、解き放たれた音空間で
ケチュアの魂に迫ろうとしています。
ライヴでも日本人音楽家の柔軟な音楽性が、
鮮やかなコラボレーションに結実していました。
なかでも、チューバ奏者高岡大佑との相性はバツグン。
高岡は板橋文夫オーケストラや渋谷毅エッセンシャル・エリントンなどでの
ジャズにとどまらず、即興や音響のフィールドに拡張して活躍しているミュージシャン。
八丈島の自然環境の中で、チューバの即興演奏をフィールド・レコーディングした
作品も出しているような音楽家です。

また、清水悠のエレクトリック・ギターにも瞠目しましたよ。
アヤクーチョ県ビクトル・ファハルドのカルナバルの曲で、
メロディをいったん解体して分散和音でギター演奏するアレンジを施していて、
ハーモニクスを効果的に使った曲解釈にはウナりました。
この曲、CDではライヴ以上に大胆なパフォーマンスを清水は繰り広げています。