
ベネスエーラ音楽の原稿依頼を受けたのをきっかけに、
昔さんざん愛聴したCDをいろいろ思い出して、連投してしまいましたが、
今回でいったん打ち止めにしましょう。
最後にご紹介するのは、女性ヴォーカル・カルテットのマレンベ。
日本で紹介されたことはおそらく皆無だと思いますが、
知られないままでいるのは、あまりにもったいないグループです。
はじめて聴いた時、クァルテート・エン・シーみたいなグループが、
ベネスエーラにもいる!と驚愕しました。
マレンベは、クアトロ奏者のラウル・デルガードのヨーロッパ・ツアーに参加した
サロメ・メンデスとローラ・ストルビンガーが出会ったことで、
誕生したヴォーカル・グループ。
クラリス・ブリセーニョ、ニンファ・ゴンサレスの4人にメンバーが固定して、
87年に初LPを出しました。ぼくが持っているのは2作目となる95年のCD。
ベネスエーラにはセレナータ・グアヤネサという
老舗の名ヴォーカル・グループがいますけれど、
マレンベとの決定的な違いは、その高度な芸術性にあります。
ベネズエーラのフォークロアをレパートリーとしているのは
セレナータ・グアヤネサと同じでも、
対位法を駆使した複雑なハーモニー・アレンジを施し、
そのアーティスティックな姿勢は野心的ともいえます。
さらに驚くべきは、このレコーディングがオーヴァーダブなしの
同時録音で行われたということで、その息の合ったハーモニーから
すさまじい集中力が伝わってくるのも、むべなるかなです。
このCDを聴けば、ぼくばかりでなく誰もが「ベネスエーラ版クァルテート・エン・シー」と
受け止めるんじゃないでしょうか。
クァルテート・エン・シーのコーラス・アレンジには、
ルイス・エサという天才が腕を振るいましたが、
マレンベはアレンジと音楽監督を務めたヒルベルト・レボジェードがキー・パーソン。
クアトロを演奏するニンファを除くマレンベの3人は楽器を弾かず歌専門で、
音楽監督のヒルベルトがギター、クアトロ、鍵盤を演奏するほかは、
コントラバス、パーカション、サックスが控えめに伴奏を付けるのみで、
コーラスを前面に押し出しています。
4人それぞれが特徴のある声を持っていて、
4人でぴたりと合わせる時のハーモニーの立体的な美しさや、
4人がバラけてモアレのように声がレイヤーする対位法のラインには、
思わず息を呑みます。
柔らかな女声が織りなすコーラスは極上というほかありません。

アルバム・ラストは、ベネスエーラ民衆文化の父
シモン・ディアスの代表曲となった ‘Caballo Viejo’ 。
スペイン語圏のみならず、世界中に知られたトナーダ名曲ですね。
オリジナルは80年の “GOLPE Y PASAJE” 収録曲でしたけれど、
ジプシー・キングが替え歌にした「バンボレオ」で一躍有名になった曲であります。
カエターノ・ヴェローゾからフリオ・イグレシアスまでカヴァーしたこの曲、
ぼくの一番好きなカヴァーがこのマレンベのヴァージョンです。
Malembe "PURO MELAO" Lyric CD93038 (1995)
Simón Díaz "GOLPE Y PASAJE" Cálidos Producciones Artísticas FD88120081298 (1980)


















