
レユニオンのセガのヴェテラン・アコーディオニスト、ルネ・ラカイユが
70歳にして初のアコーディオン・ソロ・アルバムを出しました。
ルネの兄ルノー・ラカイユが作曲した ‘Séga Gingembre’を除き、
すべてルネの自作セガで、演奏はアコーディオン1台のみ、
歌なしのオール・インストゥルメンタルです。
ルネが子供時代に聴いていた音楽をオマージュした作品で、
レユニオンの音楽遺産であるセガを、
父親や兄たちと一緒に演奏していた時代を振り返ろうとしたとのこと。
ルネが子供時代に熱心に聴いていたのは、
レユニオンの名アコーディオニストである
ルル・ピトゥやクロード・ヴィン・サンだそうです。
ルル・ピトゥやクロード・ヴィン・サンだそうです。
アコーディオン1台だけで聞かせるセガ・アルバムというのはこれまでになく、
わずか25分ほどのアルバムながら、とても爽やかに聴くことができました。
これまでいろいろ聴いたルネ・ラカイユのアルバムでは、一番聴きやすいかも。
というのは、ルネ・ラカイユのアルバムって、かなりの数があるんですけれど、
正直気に入ったアルバムが、ひとつもないんですよね。
『ポップ・アフリカ800』にも、ルネ・ラカイユはセレクトしていないし。
身もふたもなく言ってしまうと、
ぶっきらぼうでシロウト丸出しなルネの歌が、台無しにしちゃっているんですよ。
なので、オール・インストの本作が聴きやすいのも当然なんですが。
またルネの音楽性についても、歌謡セガやダンス・ミュージックのセガといった
レユニオン音楽の伝統を踏襲したスタイルというのとは少し違い、
さまざまな文化圏の音楽家との共演を通じて、
いろいろな音楽要素を取り入れた作品が多いんですね。
ところがそうした音楽的成果が実らずに、雑然とした仕上りになってしまった
残念なものが多くて、そうしたところもぼくのなかでルネの評価が低かった理由。
ルネ・ラカイユは70年代前半にリュック・ドナットのグループ、アド=ホックで活動した後、
アラン・ペテルスとセガやマロヤをロックと融合させる実験的なグループ、
レ・カメレオンで演奏していたという人なので、
伝統的なセガを演奏するだけでは満足できず、
サイケデリックなロックやジャズなどにも果敢に挑戦してきたのでしょう。
ちなみに、レ・カメレオン時代の曲はエレクトリック・マロヤの編集盤
“OTE MALOYA” の1曲目で聴くことができ、
この曲ではルネはアコーディオンではなく、ギターを弾いています。
とまあ、ぼくのなかでは評価の低かったルネ・ラカイユですが、
手元にそれなりにCDが残っているのは、仕上りが不満でも、
意欲を買える作品が多かったから。
本作はそうした過去作とは打って変わった異色作ですね。
René Lacaille "TI GALÉ" Lamastrock/Dobwa LAM114-389 (2024)