after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

Searching for good music of the world

カテゴリ: インド洋

Ti Fock  GAYARNATIR.jpg Ti-Fock  SWIT LOZIK.jpg

エレクトロニック・マロヤのコンピレで
ひさしぶりにチ・フォックと再会したんですけれど、
そういえばチ・フォックって、どうしてるんだろう。近況がぜんぜん伝わってきませんね。
https://bunboni.livedoor.blog/2019-08-01

チ・フォックはジスカカンと並ぶ、現代マロヤの重要アーティスト。
マロヤをフューチャリスティックに変貌したサウンドで、
伝統マロヤを革新したイノヴェイターです。
なかでも、ジャズの語法も借りながら、大胆にマロヤのサウンドをリクリエイトした
94年の“SWIT LOZIK” は、レユニオン音楽史に残る一大傑作でした。
安直なエレクトリック化やフュージョン化がはびこっていた90年代当時のレユニオンで、
アクースティックでプログレッシヴなサウンドを生みだした才能は突出していました。

でも、あれ以降、チ・フォックの活動が聞こえなくなってしまって、
あらためて調べてみると、11年にアルバムを出していたことが判明。
早速オーダーしてみたら、これはスゴイ!
なんともチ・フォックらしい才気あふれる力作じゃないですか。
11年といえばマロヤ再評価で盛り上がっていた時期だというのに、
なんでこのアルバムは輸入されなかったんだろう。

全編で繰り広げられるサイケデリックなサウンド・プロダクションは、
チ・フォックの面目躍如。歌詞カードには、全曲「シャンソン・ワールド・ミュージック」と
クレジットされていて、マロヤといっさい名乗らないところが面白いなあ。
しかし、聴いてみれば、どの曲も横揺れのビートをベースとした、マロヤであることは歴然。
カヤンブが入っていない曲でも、しゃかしゃかと鳴るカヤンブのリズムが聞こえてくるのは、
打ち込みやエレクトロのビートが、マロヤのリズムを下敷きとしているからですね。

エレクトロを大胆に取り入れ、トランス・ミュージックばりのダンス・ビートを放つ一方で、
サウンドの要所にルーレやカヤンブなどの打楽器、アコーディオンやギター、
女声のウルレーションなどの生音をガチンコでぶつけたプロダクションがスゴイ。
ヘヴィーなエレクトロなサウンドと打楽器の生音が互いにゆずらず、
肉感的な生々しさをグイグイと打ち出してくるんですよ。

いわゆるアンビエント・テクノといった方向には寄らず、
レユニオン伝統音楽の太い幹を感じさせるところが、頼もしいじゃないですか。
さりげなくアフロビートの要素も絡ませた2曲目も白眉。
クセのある声でねちっこく歌う、チ・フォックのロック的なヴォーカルも痛快です。

例のエレクトロニック・マロヤのコンピレには、初期の曲のリミックスなんかじゃなくて、
このアルバムから選曲したら良かったのになあ。
誰からも気付かれずにいたサイケデリック・エレクトロニック・マロヤ。
今からでも遅くないというか、今こそ聴くべき大傑作、
バイヤーさん、ぜひ日本に輸入してください。

Ti Fock "GAYAR NATIR" Sedm/Oasis CD44915 (2011)
Ti-Fock "SWIT LOZIK" Sedm/Oasis 66956-2 (1994)

DIGITAL KABAR.jpg

レユニオンのエレクトロニック・マロヤについては、
以前ラベルのデビュー作を取り上げたことがあります。
https://bunboni.livedoor.blog/2016-03-07

ラベルは「マロヤ・エレクトロニクス」を標榜していましたけれど、
マロヤだけでなく、もっと幅広いクロス・カルチュアルな音楽性を持っていて、
そこに注目したんですけれど、このアルバムは、マロヤど真ん中といった
「エレクトロニック・マロヤ」の名にふさわしいトラックがコンパイルされています。

エレクトロニック・マロヤのDJジャコ・マロンがリミックスした
パトリック・マナンのオープニング曲は、前半エレクトロ、後半生音という仕掛け。
後半の打楽器とコーラスのコール・アンド・レスポンスになっても、
エレクトロがいつ消えたのかわからないくらい、
シームレスに繋がっているところがミソ。

インド洋音楽のエレクトロニック・ミュージックの新進レーベル、
ババニ所属のブーグズブラウンのトラックは、
モザンビークの木琴ティンビラのダンス・リズムとかけ声に、
生のパーカッションとエレクトロニック・ビートを幾層にもレイヤーして、
アフロ色をぐっと濃くしているところがスゴイ。
エレクトロが伝統要素を倍化させて、漆黒のグルーヴを生み出しています。

パリのアフロ・エレクトニック・レーベル、マウィンビ所属の
ロヤことセバシチャン・ルジュンヌの‘Malbar Dance’ は、
マロヤに溶け込んでいるタミール音楽の成分をぐっと表に出しています。
マロヤのトランシーなビートに、タミール人男性歌手の浮遊するヴォーカルを絡ませ、
親指ピアノをカクシ味に使っているところも聞き逃せませんね。

パーカッションの生音と打ち込みが交錯するビートが、
ニュアンス豊かなグルーヴを生み出しているところがいいんです。
オール・エレクトロなトラックもなかにはあるんですけど、
ビートが幾重にも交差する複雑なリズムを作っているところは、
さすがレユニオン人!といった感じ。
あ、でも、アルバム最後に置かれた単調な四つ打ちハウスのJ=ゼウスのトラックと、
クワルドの純然たるエレクトロは、マロヤ要素皆無で蛇足感は拭えず。

ジスカカンと並びマロヤをモダン化した立役者のひとり、
チ・フォックの初期85年作の曲や、
サルム・トラディシオンの05年作の曲をリミックスしたトラックもあり。
サルム・トラディシオンは、フランスのコバルトから世界デビューする以前、
レユニオン地元のレーベルに制作したデビュー作で、
ディレイ・マシンを効果的に使っていたのが印象的でした。
エレクトロニック・ミュージックに接近するかと少し期待していたんですけれど、
コバルトではそういう試みをせず、残念でした。

タイトルの「カバール」とは、マロヤを演奏し、人々がダンスすることで、
レユニオン文化が共有される「場」のことだそうです。
現代のダンスフロアで共有されるのが、デジタル・カバールというわけですね。

Patrick Manent, Boogzbrown, Loya, Jako Maron, Ti Fock, Agnesca, Zong, Labelle, Salem Tradition and others
"DIGITAL KABAR: ELECTRONIC MALOYA FROM LA REUNION SINCE 1980" InFíne IF1052

Sadaj'
インド洋のレユニオン島から、意欲的なグループが登場しました。
ポルトガル語の「サウダージ」にちなんだグループ名、
サオダージを名乗る女性2人に男性3人の5人組。
レコーディングではもう一人男性が加わって、デビューEPがリリースされました。

いちおうマロヤのグループということなんですが、
EPを聴いてみればわかるとおり、トランシーなパーカッション・ミュージックではなく、
汎インド洋にフォーカスを当てたヴォーカル・ミュージックを展開していて、
感覚がすごく新しいんです。伝統的要素をハイブリッドに再構築した音楽ですね。

マロヤは、世界遺産に認定されて以来、一気に注目を集めるようになりましたけれど、
アフロ系住民による「奴隷の音楽」という側面ばかりが強調されて、
ややもするとアフリカ音楽のように受け止められているキライがあります。
しかし、マロヤはアフロ・ミュージックではなく、
インド洋でアフリカとアジアがブレンドされたクレオール・ミュージックなんですよね。
そのアジア成分は、奴隷解放後にアフリカ奴隷に代わる労働力として、
渡ってきたインド人契約労働者がもたらした音楽にあります。

かつてグランムン・レレが、タミール系の古謡をレパートリーとしていたように、
年季奉公のインド人たちが伝えた歌や楽器が、マロヤには溶け込んでいます。
そんなマロヤのアジア的な側面を、グッと拡大しようというのが、
サオダージのネライのようです。

冒頭の‘Pokor Lèr’ では、シンセを通奏低音で鳴らしたうえに、
インドの両面太鼓ドール(クレジットにはアッサム地方のドールとあり)
が打ち鳴らされます。
手拍子や小シンバルが折り重なるサウンドはまさしくインド的で、
カヤンブがシャカシャカと振られる横揺れのリズムが特徴的な従来のマロヤとは、
すいぶんと異なるサウンドなのは、すぐわかるでしょう。

8分の5拍子の曲で聞かせる男声の低音部合唱は、
台湾先住民の音楽を連想させ、サオダージがインド洋音楽を、
遠い祖先がアジアからインド洋へと渡ってきた
オーストロネシアの音楽として捉えているのがよくわかります。
台湾から南下して、フィリピン、インドネシア、マレイ半島に渡り、
さらにインド洋を越えてマダガスカル島に到達して、
さらに東の太平洋の島々に拡散したとされるオーストロネシア人の音楽とは、
こういうものなのではないかという、サオダージ流の仮説でしょう。

ライヴでは、アボリジニのディジュリドゥも使っているというサオダージ。
そのミスティックなサウンドには、彼らの音楽的冒険が存分に発揮されていて、
とても惹かれます。

Saodaj’ "POKOR LÈR" Kadadak Music no number (2018)

Grace Barbe  Kreol Daughter.jpg

拙著『ポップ・アフリカ800』の選盤で泣く泣く外したCDが、
最近エル・スールに入荷したのを、常連のお客さんのツイートで知りました。
ひさしぶりに目にしたもので、懐かしくなって、
CD棚からひっぱり出して聴き直したんですけど、う~ん、いいアルバムですねえ。
ああ、やっぱり入れたかったなあ。悔しさがまた込み上げてきます。

いい機会なので、ここで取り上げておこうかな。
インド洋のセーシェル出身の女性歌手、グレース・バルベのアルバムです。
6歳の時に母親とともにオーストラリアに移住し、その後またセーシェルに戻り、
現在は西オーストラリアのパースに暮らして、歌手活動をしています。
セーシェルとオーストラリアを行き来したことによって、
故郷のセーシェルのアフロ・クレオール・ミュージックに自覚的になったんでしょうね。

セーシェルの歌手というと、フォークぽいシンガー・ソングライターばかりが目立ち、
教会系の健全フォークといった感じの退屈なアルバムが多いんですけれど、
この人の08年のデビュー作は、違いましたね。
1曲目からグルーヴィなアフロビートが飛び出すので、ちょっとびっくり。
続く2曲目は、メロディカをフィーチャーした
オーガスタス・パブロばりの本格的なレゲエで、
セーシェルのひ弱なフォーキー・サウンドとはまるで違っていて、
おおっと思ったものでした。

歌声もアンジェリーク・キジョばりのファットな感触があって、
イマドキの女性シンガー・ソングライターにありがちな線の細さがなく、好感触。
「クレオール娘」とその心意気や良しといったタイトルも好ましいんですが、
全体にレゲエ色が強く、セーシェルのアフロ・クレオール性が
はっきりと打ち出されていないのは、惜しい気がしました。

Grace Barbe  Welele!.jpg

ところが13年に出した2作目で、
セーシェルのアフロ・クレオール・ミュージックであるセガとムティヤを前面に押し出し、
これこそ「クレオール娘」の名にふさわしいアルバムに仕上げていたんですね。

オープニング・ナンバーのタイトルは、ずばり「アフロ・セガ」だし、
タイトル曲はセーシェル独自のアフロ・リズム、ムティヤで聞かせるんだから、
セーシェル・クレオールで攻めてます。
有名なセーシェル民謡“Mous Pran Fler” をセガにアレンジし、
ルンバ・マナーのギターとアニマシオンをフィーチャーするアイディアも、ニクイばかり。
このグレースの2作目が『ポップ・アフリカ800』に入れたかったアルバムで、
今回エル・スールに入荷したCDです。

デビュー作・2作目ともに、イギリス、ソールズベリー出身のギタリスト、
ジェイミー・サールが音楽監督を務め、グレースと曲を共作しています。
2作目の方では、グレースの妹のジョエル・バルベがドラムスを叩いています。
ソングライティングはいいし、アレンジばっちり、
プロダクションもしっかりしているという、申し分ないディレクションで、
う~ん、やっぱり、ブライアン・マトンベじゃなくて、
こっちに差替えるべきだったかなあ。

Grace Barbé "KREOL DAUGHTER" MGM Distrubution no number (2008)
Grace Barbé "WELELE!" Afrotropik ATCD01 (2013)

Ote Maloya.jpg

インド洋レユニオン島で75年から86年に出されたシングル盤から、
マロヤのナンバーを選曲したコンピレーション。

サブ・タイトルに「エレクトリック・マロヤ」とあるように、
フランス人プロデューサーが海外向けに制作した伝統マロヤではなく、
現地のヒット・ソングとして聞かれていた、ポップ・ロック化したマロヤを集めているので、
ドス黒いパーカッション・ミュージックが苦手な人にも、
親しみやすいアルバムになっていると思います。
エレクトリック化したポップ・マロヤは、なんともローカルな味わいで、
垢抜けない電子楽器の使用もチープながら、ほほえましく聞けますね。

そして今回のストラット盤に驚かされたのは、32ページにおよぶライナーの解説。
いやあ、これはすごい勉強になりました。
セガを起源とするというマロヤ発祥の17世紀までさかのぼり、
マロヤの歴史を解説していて、これはマロヤ史の第一級の資料といえます。

これまでセガとマロヤは、別系統の歴史を持つとされていたのが、
マロヤがセガから生まれたという新説は、興味深いものがあります。
セガ=アフリカ+ヨーロッパ、マロヤ=アフリカ+スワヒリ+インドという理解が、
新たな視点によって新たな発見が生まれるかもしれません。

Georges Fourcade  LE BARDE CRÉOLE.jpg

このほか、ジョルジュ・フルカド(1884-1962)について、
1928年に“Caïamb Et Sombrère” のなかで、
「ポルカを踊るのは好きじゃない。ぼくが踊るときはマロヤで踊るのさ」と
いう歌詞があるという指摘にも驚かされました。
あわててタカンバ盤の“LE BARDE CRÉOLE” をチェックしてみると、
確かにはっきりと maloya と歌っています。
これまでジョルジュ・フルカドを、ヨーロッパナイズされた歌手とみなしていたので、
認識を改めさせられました。

マロヤ初のLPをレユニオン共産党が制作したことや、
のちにマロヤがプロテスト・ソングに組み込まれていくこととなった
レユニオンの政治状況なども、今回初めて知りました。
おかげで、ダニエル・ワロが共産活動家だったという背景が、ようやく理解できました。
ほかにも、マロヤの宗教音楽としての側面から、
セガとマロヤとが歌謡化していくなかで互いに影響していく関係などが、
具体的なエピソードで書かれていて、なるほどとうなずくことしきりでした。

世界遺産に指定されたことで、マロヤの伝統文化の面については、
広く知られるようになりましたけれど、大衆歌謡史という面からは、
ほとんど言及されてこなかっただけに、この解説はとても貴重なものです。
解説はナタリー・ヴァレンティン・ルグロとアントワーヌ・ティションのお二人。
ストラット、いい仕事してます。

Caméléon, Michou, Jean Claude Viadère, Ti Fock, Gaby Et Les Soul Men, Vivi, Maxime Laope, Gilberte and others
"OTE MALOYA : THE BIRTH OF ELECTRIC MALOYA IN LA REUNION 1975-1986" Strut STRUT151CD
Georges Fourcade "LE BARDE CRÉOLE" Takamba TAKA0105

Bann Laope.jpg

もう1枚入手したセガ近作が、
セガの名クルーナー、マキシム・ラオープが05年に亡くなる1年前に、
マキシムの子供や孫たちによって結成された、バン・ラオープ。
マキシム・ラオープをご存じない方は、以下の記事をご覧ください。
https://bunboni.livedoor.blog/2013-02-15

はじめはプライヴェートなパーティやコンサートなどを催して、
演奏活動をしていたらしんですが、マキシムが亡くなったあと、
06年5月のコンサートで、初めてプロ・デビューしたそうです。
14年にリリースしたデビュー作では、
マキシムがかつて歌っていたレパートリーを歌っています。

正直、歌はアマチュア芸の域を脱していませんが、
親族やマキシムゆかりの友人たちによる演奏は、なんとも温かくって、
悪口を言う気になりません。
手作りのぬくもりが伝わるサウンドは、ドラムス、ベースとも人力。
カヤンブ、ジェンベなどキレのあるパーカッションのビートが利いています。
トランペットとサックスの2管を擁しているのも嬉しいですね。
打ち込みは使っておらず、シンセも1曲のみバックでうっすらと鳴らす程度。

本デビュー作では、マキシムの代表曲“Célia” はじめ、12曲が歌われています。
レゲエ・アレンジで歌われる“Lapesh Kameleon” は初めて聞きましたが、
トボけた味がなんともマキシムらしくて、いい曲ですねえ。
原曲はシャンソン・クレオールなのかな。

マキシム・ラオープのセガのほっこりとした味をよく再現した、
心あたたまるアルバムです。

Bann Laope "I SHANTE MAXIME" no label no number (2014)

Bèf Séga  POU TWÉ.jpg

レユニオンというと、いまではすっかりマロヤの方が有名になっていますけど、
もともとはセガが盛んだった土地柄。
セガは、レユニオンばかりでなく、モーリシャスやロドリゲス、セーシェルなど、
マスカリン諸島からセーシェル諸島、チャゴス諸島に広く伝わる、
奴隷として渡ったアフリカ系住民が産み落としたダンス音楽です。

レユニオンではシャンソン・クレオールと結びついて、早くから歌謡化し、
戦後になると、観光開発にともなって、ヨーロッパからやってくる客を目当てにした、
カラフルな民族衣装を着た女性たちのダンスで有名になりました。
音楽の方もあまりに観光化されすぎて、LPやCDはつまらないものが多く、
地元民が楽しむ歌謡セガの美味しいところは、
EP盤でないと聴けないという時代が、長く続いたんですよね。

いまではタカンバが復刻したCDで、
往年の歌謡セガのヴィンテージ録音も容易に聞けるようになりましたけれども、
いま現在、地元でどんなセガが聞かれているのかというと、
とんと伝わってくるものがなくて、マロヤ再評価の影に隠れてしまった感があります。

今回入手したベフ・セガは、サン=ピエールを拠点に活動しているグループとのことで、
プロダクションは、はっきりいって地元仕様のチープさは免れません。
とはいえ、90年代主流だった打ち込みとシンセで組み立てられたサウンドではなく、
生のドラムス、手弾きのベースで、打ち込みで代用していないところは好感が持てます。
ギターやピアノも、アクースティックとエレクトリックを効果的に使い分け、
トランペットも加わり、ユーモラスな雰囲気を盛り立てています。

お気楽な軽いタッチのノリのセガばかりでなく、
パーカッション・アンサンブルを前面に立てた
アフロ色濃厚なマロヤもやっていて、演奏力は確かなグループですね。
プロデューサーに恵まれれば、もっといい作品も作れそうです。
マロヤばかりでなく、セガも、インターナショナルに飛び出して欲しいな。

Bèf Séga "POU TWÉ" Arts Et Vivre AAV001 (2010)

Meddy Gerville  TROPICAL RAIN.jpg

うおぉぉ、ついに、出たぁ~。
マロヤ・ジャズのピアニスト、メディ・ジェルヴィルの新作。
レコーディングはとっくに終わっていると聞かされてたのに、
いっこうにリリースされる気配がなく、お蔵入りになっちゃうのかとヤキモキしてたんです。

届いた新作は、これまでメディのアルバムを出してきた自主レーベルではなく、
12年に誕生したアメリカのジャズ・レーベルからのリリースで、
何があったのかは知りませんが、とにかく無事リリースされて、よかった、よかった。

カヤンブを抱いたジャケットに表されているとおり、
今作もマロヤのルーツをしっかりと見据えたマロヤ・ジャズを展開していて、
レユニオン音楽史に残る大傑作、“FO KRONM LA VI” に並ぶ快作に仕上がっていますよ。
メディのシャープなリズム感と華やかな運指のピアノもさることながら、
変拍子をびしばしキメたアレンジも快感。
メロウな歌い口のヴォーカルにも味わいが増していて、サイコーですね。

メディ・ジェルヴィルなら、
JTNC界隈の人も反応できると思うんだけれどなあ、どうかなあ?
菊地成孔が“FO KRONM LA VI” を気に入っていて、
ラジオで何度もプレイしているようなので、そういう影響力のある人が騒いでくれると、
メディを日本のジャズ・クラブで観れる日も遠くないんじゃないかと、
秘かに期待してるんですが。

クレジットによると、録音は14年の5月1日と2日、
レユニオン島のスタジオで行われたとあります。
全13曲を、たったわずか2日間で録音したとは、ちょっとびっくりなんですが、
参加ゲストがまた豪華。ランディ・ブレッカー、グエン・レ、ドミニク・ディ・ピアッツァ、
ダミアン・シュミット、アミルトン・ジ・オランダ(!)と、
そうそうたるメンバーが集まっていて、
レユニオンでジャズ祭でも開かれてたんでしょうか。

レギュラー・メンバーは、同郷のドラマー、エマニュエル・フェリシテに、
プエルト・リコ出身のパーカッショニスト、ジョバンニ・イダルゴ、
マルチニーク出身のベーシスト、ミッシェル・アリボ
(トニー・シャスールの30周年ライヴでも光ってましたね)と、
ここまではメディの旧作でもなじみのある面々ですが、
もう一人新たに加わっているのが、ギタリストのリオーネル・ルエケ。
うわー、いらねぇ、なんでコイツがいるんだ。
どうしてリオーネルって、こんなに重用されんのかなあ、わかんないなあ。

前にもどっかで書きましたけど、ぼくはリオーネルの草食系ギターがキライです。
ここでも相変わらず、か細いトーンで気まぐれフレーズをパラパラと弾くばかり。
このキャスティングだけが、今作の難といえます。
せっかくグエン・レが骨太な肉食系ギターを弾いているんだから、
ゲストじゃなくて、全曲グエンに弾いてもらいたかったなあ。

収録曲は、伝承曲のマロヤ・メドレーと、
シャルル・アズナブールの“La Bohème” のほかは、全曲メディの自作。
マロヤ・メドレーではランディゴのオリヴィエ・アラストと
ファブリース・ルグロが歌っています。
https://bunboni.livedoor.blog/2012-08-01
https://bunboni.livedoor.blog/2015-01-22
https://bunboni.livedoor.blog/2013-05-06
マロヤにアレンジした“La Bohème” も面白い仕上がりとなっていて、
シャンソンが苦手なぼくでも抵抗なく聞けました。

ソングライティングも相変わらず巧みで、
多彩な曲調を書き分けるメディの才能がここでも光っています。
ジャズ・ピアニストにしてこのポップ・センスは、貴重だよなあ。
もっと、もっと、注目されなければいけない人ですよ、メディは。
新世代ジャズに注目を浴びる今だからこそ、もっと聞かれて欲しい、
メディ・ジェルヴィルの新作です。

Meddy Gerville "TROPICAL RAIN" Dot Time DT9060 (2017)

20160830_Damily.jpg

マダガスカル南西部トゥリアラ地方が生んだツァピキが、ついに日本初上陸。
ツァピキといえば、亀井岳監督の映画『ギターマダガスカル』に
超絶ギタリストのテタが登場したのが記憶に新しいところですけど、
https://bunboni.livedoor.blog/2011-11-21
https://bunboni.livedoor.blog/2014-10-22
今年のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドにダミリが招かれて、
ついに生のツァピキを体験をすることができました。

20160830 Damily SikiyakiTokyo.jpg

いやあ、サイコーのダンス・ミュージックでしたねえ。
土埃舞うマダガスカルの風景をホーフツとさせる、田舎くささがタマりませんでした。
普段着姿のメンバーが、ばらばらとステージに現れると、
ヴォーカリストのおっさんがかけ声イッパツ、すごい声量でパワフルに歌い出して、
観客をリズムの渦に、いきなり巻き込んでいきます。
CDで聴いたとおりの、せわしないハチロクのビートが疾走して、
ノッケから客を煽ること煽ること。気持ちよく踊らせてくれましたよ。

現地のライヴでお約束の拡声器も、ちゃんとマダガスカルから運んできていて、
ダミリのギターを拡声器につないで、音を出していました。
拡声器がトレードマークになっていることは、
ダミリのデビュー作と2作目のCDジャケットでおなじみですね。
https://bunboni.livedoor.blog/2011-06-28
さすがに日本ではPA装置がしっかりしているので、サウンドはクリーンでしたけど、
現地では音が割れたり歪んだりして、
それがかえって野性味たっぷりの、トランシーなサウンドになるんですよねえ。

外国人相手にステージを演出するようなところもまったくなく、
現地で演奏するのとなんら変わらないパフォーマンスをしてくれたところが良かったですね。
男女のメンバーがア・カペラで歌っている脇で、
ダミリがお構いなしにギターのチューニングをやったりして、
うわはははは、自由だなー。

写真の風貌から、ダミリは野人ぽい人なのかと思えば、
ステージ終了後に会ったら、とても控えめで物静かな人だったのは意外でした。
ジャケットにサインをしてもらうと、「ツァピキ」「トゥリアラ」と書き添えるので、
「ツァピカ? ツァピキ? ツァピク?」と念のため確かめてみると、
やはり「ツァピキ」と発音していました。

ドラムスとベースのコンビネーションにも、目を見張りましたね。
片一方がステデイにリズムをキープして、もう一方が自由奔放に演奏するんですけれど、
曲中でその役割を何度も交替しながら演奏するところが、超絶面白かった。
すごくフレキシブルなんですよね、リズム処理が。
ンバクァンガに代表される、南ア音楽の影響を色濃く感じさせるリズム隊でありました。

あっという間の45分。
さっと登場して演奏し始めたかと思えば、ステージを去る時もあっという間で、
え? もう終わりなの? と腰が砕けちゃいました。もっともっと聴きたかったなあ。

Damily "VERY AOMBY" Hélico HWB64126 (2015)

Labelle.jpg

レユニオンといえば、セガやマロヤといった伝統系の音楽しか
このブログでは取り上げてきませんでしたが、
今回はちょっと珍しく、エレクトロニカの作品をご紹介。

ゼロ年代からレユニオンには、クラブ・ミュージックやエレクトロニカのアーティストが現れ始め、
まだまだアンダーグラウンドとはいえ、
一部には、フランスで高い評価を受ける人も輩出するようになってきています。
あまりそちら方面の音楽には、個人的な関心がないので、
横目で見てるだけみたいな感じだったんですが
ラベルことジェレミー・ラベルのデビュー作には、ちょっと驚かされました。

「マロヤ・エレクトロニクス」を標榜しているので、ん?と触手が伸びたんですが、
聴いてみると、マロヤの要素は10曲目のリズム・トラックで聴ける程度のもので、
むしろ、インド音楽のアーラープ、ガムラン、西アフリカのグリオといった多彩な音楽要素を、
鮮やかに消化した独特の世界観を作り出していて、ウナらされてしまいました。

これほど多国籍な音楽をミックスしても、いわゆる欧米のクリエイターが作るような
無国籍音楽とならないところは、インド洋音楽の伝統を幹とする強みでしょうか。
リズム処理に示すアフリカン・ビートの理解の深さは、レユニオン育ちを証明します。

なんでも、母親がフランスのシンセサイザー音楽の第一人者
ジャン・ミッシェル・ジャールの大ファンで、
父親からは、マロヤなどのレユニオンの伝統音楽の影響を受けたのだそう。
さらにデトロイト・テクノ好きの兄に感化され、
ラベル自身も14歳でデトロイト・テクノのDJプレイを始め、
やがてダニエル・ワロのマロヤをミックスするようになっていったとのこと。

なるほどそんな経歴のせいで、マロヤ・エレクトロニクスを標榜するようになったようですが、
デビュー作で披露する音楽は、もっと広い世界を表現していて、
エスノ・フューチャリスティック・ミュージックとでも形容したくなります。
スキマを生かしたヌケのいいサウンド・スペースに、
サンプルされたハープ/リュート属弦楽器やバラフォンの響きが交わり、
不均等な肉体感のあるビートが交叉するエレクトロニカは、とても魅力的です。

Labelle "ENSEMBLE" Eumolpe EUM02 (2013)

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