after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

Searching for good music of the world

カテゴリ: インド洋

Maya Kamaty  SANTIÉ PAPANG.jpg

レユニオン新世代の女性シンガーのデビュー作が登場です。
ジャケットがステキで目にとまったんですが、このマヤ・カマティ嬢、
マロヤをロック化したレユニオンを代表するバンド、ジスカカンのリーダー、
ジルベール・プニアの娘さんだそうです。

詩人や文学者でもあるジルベール・プニアは、
カリスマティックなアーティストとして知られる人で、
マヤが小さい頃には、アラン・ペテルスもよく家に遊びに来ていたんだそう。
アランはジルベールと同い年で、親友同士だったんですね。
アラン・ペテルスは95年、マヤが10歳の時にアル中で亡くなってしまいますが、
13年にマヤが女性アーティストとして初のアラン・ペテルス賞を受賞するとは、
縁のある話というか、よしみがあったことを感じさせますね。

マヤの音楽性は、父親たちのいかにもヒッピー世代らしい、
エキセントリックな面の強いマロヤ・ロックとは感覚の異なる、現代っ子らしいもの。
オーガニックなアクースティック・サウンドをまといながら、マロヤを知的な作風で聞かせます。
バックはウクレレ兼ギター、キーボード兼ギター、パーカッションの3人がメインで、
曲によりベース、ドラムス、トランペット、チェロなどがゲストで加わっています。
微量なエレクトロも交えた洗練されたサウンドが、よくこなれています。
アフロ色強いマロヤが苦手な人にとって、聴きやすいサウンドともいえそうです。

ウクレレの音色が運ぶ潮騒の香りと、カヤンブの横揺れのスウィング感が、
猛暑にうだるオツムにやさしく響きます。

Maya Kamaty "SANTIÉ PAPANG" Sakifo 88875013552 (2014)

Thominot  Hazolahy.jpg

話題の映画『ギターマダガスカル』、もうご覧になりましたか?
関東近郊のアフリカ音楽ファンは、みなさん観たことと思いますが、
これから全国各地で公開されるので、お近くの際はぜったい必見の映画であります。
こんな本格的なアフリカ音楽のロード・ムーヴィーが日本で製作されるなんて
夢のようですよ、ホント。監督含む製作スタッフの若い世代の活躍に、
惜しみない拍手を送りたい気持ちでイッパイです。

映画にも出演しているギタリスト、デ・ガリが06年5月に来日した際、
当時小学6年生だった次女と一緒に日比谷公園のライヴに行ったことがあったので、
「観る?」と誘ったら、「行く~♡」というので、一緒に観てきました。
次女も今は大学3年生で、時の流れを感じずにはおれませんね。
デ・ガリのライヴ(イヴェント「アフリカン・フェスタ」への出演)を観ていた当時、
まさか彼が出演する映画を日本人が撮るなんて、想像だにしませんでしたもの。

D'Gary.jpg

映画館に行ったら、出演者のCDも販売していて、
トミノのマダガスカル盤が置いてあったのには、びっくり。
トミノのCDは持っていなかったので、これ幸いと買ってきました。
実はこの映画を観てはじめて、トミノがやっているマンガリバという音楽が
マダガスカル南東部にあることを知ったんでした。

いや、正確にいうと、マダガスカル南東部にすごく面白い音楽があることは、
トラニャロ(フォール・ドーファン)のグループ、ラバザで気付いていたんですけれど、
https://bunboni.livedoor.blog/2012-04-13
それをマンガリバと呼ぶことは、この映画で初めて知ったんです。

しかも、ラバザのリーダーであるR・クリスト・ベニーは、トミノのグループ、
ハズライの元メンバーで、04年にハズライを脱退し、ラバザを結成したのだそう。
アンタヌシ人の伝統音楽をポップ化したこのマンガリバは、
前のめりに疾走するダンス・ミュージックで、映画の中でも、
トミノに「故郷のステップをやってくれよ」と促された少女が、
鮮やかなダンスを披露するシーンが印象的でした。
マンガリバという音楽は、トミノの父親が60年代に作り出したというので、
そうだったのかあと、思わず膝を打ったのでした。

この映画を初めて見た時、5人ものミュージシャンのロード・ムーヴィーという贅沢な内容に、
これを完成させるまで、いったい何度現地に足を運び、
何年かかったのかと思わずにはおれませんでした。

106分に詰め込まれた情報量の多さは、
たとえば、故郷へ向かうギタリストの旅に同行し、親戚一同との再会シーンばかりでなく、
憑依儀礼や改葬の儀式といった宗教儀礼まで撮っていて、
撮影の許可を得るのは、けっして容易ではなかったはずです。
ちらっとしか登場しないシーンに、
使われずじまいとなったフィルムに記録されているだろう部分を想像しては、
その内容の濃さに圧倒されてしまいました。

だから、この映画がたったの2か月間で一気に撮ったという話を聞いた時は、
そんなことが可能なものなのかと、本当にビックリしてしまいました。
アフリカで仕事をした経験のある人なら、よくわかると思うんですが、
とにかく思うように事の運ばないのが、アフリカという土地柄です。
日本なら1日でできることが、平気で1週間、
ヘタすれば1か月かかってもできないなんてことがザラな場所で、
これを2か月で撮ったなんて、奇跡としか言いようがありません。

その秘密を、パンフレットにあったトミノの言葉に見つけました。
「撮影の中で一番印象深かったことは何ですか」という問いにトミノは、
「私の生まれた村を訪ねた時、私たちが訪ねたライ・アマン・ドゥレニベと呼ばれる
村々の長たちに対し、日本の人たちが示した敬意です」と答えています。
『ギターマダガスカル』でマダガスカルの人々が彼らの生活と文化を包み隠さず見せたのは、
撮影クルーたちが敬意と共感を持って彼らに接した、その姿勢こそにあったのでしょう。

Thominot "HAZOLAHY" Gasy Karavane no number (2013)

Radama Antoine  Ry Malala.jpg

今回手に入れたマダガスカル盤のディスクは、すべてCD-R。
インレイ、ディスクがちゃんと印刷されているCDが3分の1、
ソフトケース仕様のCDが3分の1、
インレイもレーベルも家庭用のジェットプリンターで印刷した
ホームメイドCDが3分の1といったところで、
正直、この粗製CDじゃ、海外で販売しようにも、輸入業者は扱わないでしょうねえ。
先月入手したセネガル盤もほぼ全部CD-Rでしたけど、
パッケージのクオリティは一応ちゃんとしてたもんなあ。

というわけで、地産地消されるのみの、国外には知られぬままのマラガシ・ポップ。
かつてのワールド・ミュージック・ブーム時代には、
ヘンリー・カイザーとデヴィッド・リンドリーが水先案内人を務めたり、
フランスのコバルトがマダガスカルのさまざまな音楽を紹介していましたけれど、
それも今や昔。またもミュージック・リスナーにとって、秘境の地に戻った感があります。

マダガスカル音楽の記事連投の最後にご紹介するのも、そんな現地仕様の1枚。
ソフトケース入りの粗製CDで、ミャンマーやカンボジアのCDソフトケースより一回り小さく、
ディスク1枚ぎりぎり入る四角形のサイズ。
そのボロっちさにタメ息ももれますが、
現地の人にとっては、このCDだって、けっして安い値段ではないはず。

聴く前から、いろいろ考えさせられてしまいますが、
ラダマ・アントワーヌとは、ジャケットにも写るギタリスト兼作曲家の名前。
タリカ・ラダマ・アントワーヌのタリカ(グループの意)を省いて、グループ名にもしていて、
脇に写る奥さんのハガが歌手を務めています。

中央高原南部フィアナランツォアのグループのようで、ラダマが弾くギターのほか、
ベース、シンセサイザー、ドラムスにサックス2人が加わった7人編成のようです。
「ようで」を連発して恐縮ですが、クレジットはないし、情報がなくてよくわからないのですよ。
軽快なハチロクに加え、歌謡調ポップスも歌っているところが、
中央高原のグループらしいところ。
ハガのヴォーカルがさわやかで、メンバーとのハーモニーも飾らない素朴な美しさがあり、
とても気持ちよく聞けます。

ヴァリーハなどの伝統楽器を使用せず、普通のギター・バンド編成ながら、
マダガスカルらしさを溢れさせているところがこのグループの良さで、
とりわけ、シンセのセンスがいいのには感心させられました。
アフリカのローカル・ポップスのダメさが、シンセの使い方にあるといっても過言でないので、
このグループのシンセ奏者のパートごとに音色を使い分ける的確さは、花丸もの。

べったりと和音でスペースを埋めるようなことをせず、サウンドに適度なスキマを与え、
アコーディオンやヴァイオリンの音色を模したりしながら、華やかに盛り立てています。
サックスの使い方も効果的で、こういったサウンドの組み立てが全くできない、
今のナイジェリアのフジのミュージシャンたちに、これをお手本に聴かせてやりたくなりますね。

Radama Antoine "RY MALANA" S’Peed Pro/Super Music Pro/Mada Pro no number

Onja.jpg

ダミリやテタといったギター・バンド・ミュージックで、
すっかり有名になったマダガスカル南部の音楽、ツァピキ。
これまで男性シンガーしか聴いたことがありませんでしたが、
オンジャという南部トリアラ出身の女性シンガーを知りました。

09年の本作がデビュー作だそうで、
ぴちぴちとはじける健康的な歌声は、痛快そのもの。
すっかり気に入っちゃいました。
でも聴く前は、ちょっと心配してたんですよねえ。
というのも、深澤秀夫先生が「音楽や曲として見るべきものがありません」と、
ブログで酷評されていたもんだから。
オンジャがソロ・デビュー前に在籍していたトリアラの人気グループ、
ティノンディアで再出発すべきとまでおっしゃられてたので、どんなものかと思ってたんですが。

伝統色を強く打ち出すティノンディアに比べ、
オンジャの方はポップ色を強く打ち出していて、
そこが先生はお気に召さなかったのかな。
でも、ぼくはこのデビュー作、いい出来だと思います。

のっけからすごいスピード感で飛ばしていて、
ハイトーンでシャウトするオンジャのヴォーカルは切れ味鋭く、爽快です。
南ア音楽とも親和性の高い、ツァピキ特有のグルーヴィなサウンドが全面展開されていて、
アコーディオンや硬質なベース・ラインがいいアクセントとなっています。

3曲目の泥臭いコール・アンド・レスポンスなんて、もろに伝統音楽といった感じで、
女声のヒーカップ唱法も飛び出すかけ声の激しさに、気分もあがります。
ハチロクの3拍目を強調したこのリズム、すごく耳残りしますねえ。

オンジャのインタビューを読むと、南部で行われる伝統的な儀式で、
男たちの格闘技の試合の際に、選手を激励するために女性たちによって踊られる
ロドリンガというリズムを取り入れているほか、バナイキというリズムもやっているそうです。

そうした南部のルーツを取り入れつつ、レゲエやスローな歌謡調のナンバーも取り上げ、
バラエティ豊かにポップにまとめあげたサウンドは、上出来じゃないですかね。
楽曲もオンジャ自身が書いていて、ソング・ライティングの才能も確かです。
ちなみにオンジャは、ティノンディア時代に07年の民音の招きで来日しているんですね。
その時はティノンディアTinondia が、ティノディアTinodia と書かれていました。

最後に、お断りを。
出身によって、「ツァピク」「ツァピカ」とさまざまに発音されますが、
今後は「ツァピキ」で統一したいと思います。

生気溢れる健康的なツァピキ、ぴっちぴちのオンジャです。

Onja "TAMBITAMBY" Tropik Prod/Super Music Pro no number (2009)

Barinjaka.jpg

マダガスカル南部のダンス・ポップで、キララキというスタイルが流行しているということは、
何かの記事で読んだような、おぼろげな記憶はあったものの、
代表する歌手やバンド名もわからなければ、
ぼくもそれ以上、YouTube などで探したりもしなかったので、
すっかりキララキという名前自体を忘れていました。

つい最近深澤先生のブログで、ツィリバという男性シンガーが
キララキのトップ・スターだということを知り、がぜんキララキに興味がわいたんですが、
VCDはあるものの、CDが見つかりません。
現在のマダガスカルのメディアの主流はVCDなので、
人気歌手でもCDがなく、VCDとDVDしかないということも珍しくないんですよ。
なんだか、インドネシアやミャンマーあたりの事情と似ていますね。

結局ツィリバはベスト盤しか見つからず、ベスト盤を敬遠するワタクシとしては、
他にキララキのシンガーを探して見つけたのが、バリンジャカという若手シンガー。
ヤスっぽいジャケット・デザインが、もろにローカル仕様ではありますが、
主役のバリンジャカくん、まだ十代にも見えるルックスで、ティーン・アイドルといった雰囲気。
マラガシ・ガールから、キャーキャーいわれてるんじゃないですかね。

さー、どんなサウンドが出てくるのかと、CDをトレイにセットすると、
急速調のダンス・ナンバーが飛び出し、あ然。うひゃー、こりゃ痛快ですねえ!
身体が痙攣するかのようなこのビート感、シャンガーン・エレクトロに通じるところもありますよ。
前のめりに突っ走るリズム感の気持ちよさったら、ないですねえ。

ベースがヴォーカルとユニゾンでメロディを弾いたり、奔放なラインを生み出すあたりは、
ジンバブウェのスングラをホーフツとさせます。
カボシをカッティングする軽やかなリズムが、風のように吹き抜け、
曲によって使い分けられたアコーディオン、オルガン、シンセの鍵盤楽器が、
サウンドを豊かに染め上げていきます。
バリンジャカくんのヴォーカルには、うっすらとオートチューンもかけ、
コミカルな味も出しつつ、キュートな魅力をアピールしていますよ。

プロダクションはローカルそのもののチープさなのに、
それが音楽をまったく損なってないという、このすばらしさ。
むしろ立派なスタジオで高価な機材を使ったら、
このサウンドの味は出せないだろうなあと思わせるところが、痛快です。

このキララキを生んだのは、チュレアールに次ぐマダガスカル西部第2の港町のムルンダヴァ。
メナベ地域圏の州都であるムルンダヴァは、マダガスカルの代表的な風景として有名な、
バオバブの並木道で知られるところですね。

あの風景の下では、こんな音楽が奏でられてるのかあ。
人々が中腰で連なりながら、腰を振ってダンスする様子が、ヴィデオでも観れますけど、
ああ、現地でキララキを体験してみたいですねえ。

Barinjaka "BEVOHOKA TSY MANAMBADY" no label no number (2013)

Vaiavy Chila.jpg

社会人類学を専門にマダガスカルで長年研究されている深澤秀夫さんから、
最近のマダガスカルのポップスで面白い人を、いろいろと教えていただきました。
なんせマダガスカルのローカル・ポップはあまりに数が多くて、
どの人を聞けばよいのやら、困っていたところだったんです。

現地を誰よりよく知る深澤さんの水先案内があれば鬼に金棒なわけで、
教えていただいた名前を頼りにCDを聴いてみたら、これが全部大当たり。
うっひゃー、マダガスカルのポップ・シーン、活気に溢れていますねえ。
見てくれこそ、ボロっちい感は否めないローカルCDですけれど、
中身の音楽はピカイチ。欧米人が関わってお行儀よく作られたアフリカン・ポップスを
蹴散らすような痛快なアルバムばかりで、すっかり嬉しくなってしまいました。

まず、このけばけばしいジャケをご覧くださいな。
まるでテクノ・クンビアみたいなお水っぽいデザイン。
これ、アフリカン・ポップスのセンスと、ちょっと違うよねえ?
強烈な場末感漂うCDは、水先案内がなければ、とても手を伸ばせません。

もろウィッグとわかるパツキン・ヘアのぽっちゃりオネエさんは、ヴァイアヴィ・シラー。
マジュンガ州北西部出身のサレギの女性歌手です。
のっけから、スピード感いっぱいのハチロクのサレギが飛び出して、
うひゃーとのけぞり、目の覚める思いがしました。
主役をステージに呼び込むかの如く、
コーラスが「シ・ラー! シ・ラー! シ・ラー! シ・ラー!」と掛け声を上げ、
いきなりもう総立ちなライヴ気分。いやー、アがるねえ!

ブレイクを多用したリズム・アレンジ、
打ち込みなど一切使わない、人力リズム・セクションの小気味よさといったらありません。
シンセを使いつつも、アコーディオンを巧みに絡ませるので、
サウンドが単調にならず、チープな印象もぜんぜんないところが花丸もの。

ティアンジャマというグループのダンサーからキャリアをスタートし、
歌手に転向してからは、サレギのトップ・グループ、
ジャオジョビのジュニア・メンバーなどの活動を経て、
04年にソロ・デビューをしたシラー。

サレギ初の女性歌手で、「サレギのクイーン」と称されるニニ・ドニアにあやかって、
当初シラーは「サレギのプリンセス」と呼ばれたそうですが、
人気の移り変わりが激しいマダガスカルのポップス・シーンにあって、
いまや「サレギのクイーン」の称号はシラーのものになってしまったのだとか。
それもナットクの、全編ゴキゲンなダンス・ミュージック、
サレギ100%なヴァイアヴィ・シラー、11年の4作目です。

Vaiavy Chila "ZAHO TIAN’NY VADIKO" Tropik Prod no number (2011)

Lindigo Mile Sek Mile.jpg

すごいぞ、ランディゴ。進化し続けてますね。

前作からまたひと回りスケール感を増した新作を聴いて嬉しくなり、
リーダーのオリヴィエに、「素晴らしいね」とフェイスブック経由でメッセージを送ったら、
10分と経たずにリプライが帰ってきました(あれ? レユニオンとの時差って…)。
文面は、今まさにノッてるミュージシャンならではの、
自信に満ち溢れた言葉が溢れていて、来日した時の人懐っこい、
くりっとしたオリヴィエの目が思わず瞼に浮かびましたよ。

新作はパーカッション音楽であるマロヤをミクスチュアしてモダン化する方向性と、
ルーツを掘り下げながら自分たちの立脚点をしっかりと見据えようとする二つのベクトルが
がっぷり四つに組んで、どちらも譲らぬところにスゴみを見せた快作といえます。

なんでもオリヴィエの自宅の中庭で、たった3日感で録音したそうですが、
聴けばなるほどとナットクできる、すさまじい集中力がびんびん伝わってきます。
日頃のライヴで鍛えた実力が、ぎゅっと凝縮されて爆発していますよ。
ヘヴィーなビートを繰り出すパーカッション陣と
コーラスとコール・アンド・レスポンスするオリヴィエのヴォーカルが弾けまくりながらも、
演奏はけっしてラフにはならず、キリリと引き締まっているところが素晴らしいんですねえ。

一方、アフロビートやファンク、エレクトロの要素を取り込んで、
マロヤをイマの音楽として前進させようとする取組みも、前作以上にこなれています。
共同プロデューサーでもあるフランス人アコーディオン奏者のプレイが、
まるでマダガスカルのアコーディオンのように響き、
う~ん、インド洋音楽がわかってるなあ、という感じがします。
サックスを起用したトラックでも、新たな可能性を感じさせてくれますよ。

そして今回ウナらされたのが、南インドの打楽器を取り入れたトラック。
まるでインドの民俗音楽のように聞こえるこの曲は、
レユニオンに南インドから大勢の季節労働者が流入した歴史を踏まえています。
04年にこの世を去った伝統マロヤの重鎮グランムン・レレのアルバムで、
マロヤにタミール文化が溶け込んでいることを示す曲があったことを思い出しました。

ラストにボーナス・トラックとして収録された、オリヴィエ家の中庭で行われたとおぼしき、
マロヤ・セッションのセルヴィ・カバレに、伝統マロヤがいきいきと息づいているのが感じられます。

Lindigo "MILÉ SÈK MILÉ" Hélico HWB58125 (2014)

Teta  BLUE TSAPIKY.jpg

潮騒の響きと超絶技巧のギターが鮮烈だった、
マダガスカル南部ツァピキのギタリスト、テタのデビュー作。
https://bunboni.livedoor.blog/2011-11-21
3年のインターバルを経てリリースされた2作目は、
前作同様、テタのギターと歌をクローズ・アップしたアルバムに仕上げられています。

キラソア・ノメンジャナハリーがバッキング・ヴォーカルと小物打楽器を奏するほかは、
1曲でアコーディオンがゲストに加わるのみというシンプルさで、
その一貫した制作姿勢には潔さを感じますね。
ツァピキの魅力を広く世界に紹介する、フランス生まれのマダガスカル人プロデューサー、
フランソワ・バラフォマンガの仕事です。

自在に指盤を飛び回りながら、弦を爪弾くギターと、
つぶやくように歌うかと思えば、奔放にシャウトもする、
ちょっと若い頃のジルベルト・ジルに通じる、ひょうひょうとしたヴォーカルの魅力は、
今作でも存分に発揮されています。
テタが弾くギターのフレージングって、
彼が歌うヴォーカル表現そのままをなぞったものなんですね。
アフリカン・ギターの中でももっとも高度なテクニックを駆使したギターと、
野性味あるヴォーカルは、ツァピキの泥臭い音楽性を純化させた結晶のように、
ぼくには聞こえます。

マダガスカルの太陽、風、海の匂いを運ぶオーガニックなサウンドは、
インド洋音楽らしい突き抜けたものを感じさせる素晴らしさ。
アフリカ音楽ファン、ギター・ファンの双方にアピールする快作です。

【お断り】 当初この記事は「ツァピク」と書いていましたが、
その後「ツァピキ」が一般的な読み方と判明したため、タイトル・本文を修正しています。
https://bunboni.livedoor.blog/2015-06-07

Teta "BLUE TSAPIKY" Balafomanga 860262 (2014)

Chébli Msaïdie  HEZA.jpg

うわぁ、すごく軽やかになったなあ。
コモロ(グランド・コモロ島)出身のシンガー、シェブリ・ムサイディの新作。
前作でもアクースティック主体のヌケのいいサウンドを聞かせていましたけど、
本作はさらに前作の路線を推し進めて、
シンプルなサウンドを保ちながら、より完成度をあげることに成功しましたね。

シェブリ・ムサイディはフランスのアフリカ音楽レーベル、ソノディスク社のプロデューサーで、
パパ・ウェンバやコフィ・オロミデなどのプロデュースを務めるかたわら、
ソロ・アルバムを制作してきた人です。
ソロ・デビュー当初は、スークース調の無国籍風アフロ・ポップといった感じで、
あまり興味を持てなかったんですが、前作の“HALLÉ” からプロダクションがぐんと良くなりました。

今作もアクースティック・ギターを軸に、ソプラノ・サックス、アコーディオン、親指ピアノのサンザに
男性/女性コーラスなどを曲によりフィーチャーして、爽やかな海洋性ポップを聞かせます。
リシャール・ボナの影響をうかがわせるコーラス・ワークなど、
ナイーヴな美しさに満ちたサウンドの心地よさは、もうパラダイス気分になりますね。

前作では自身のルーツであるターラブを歌っていましたけれど、今回はターラブはなし。
かわりに、ムラユぽいメロディをチャチャチャにのせて歌う“Parfum” のほか、
ハワイ音楽を聴いているような錯覚を覚える“Mungu” など、
コモロ人らしいインド洋文化混淆の音楽性をさりげなく示しています。
う~ん、アフロ・オリエンタル・ポップでしょうかね。

異色のトラックは、コロンビアのボゴタでリミックスしてチャンペータに仕上げた“Ulaya Colombia”。
ルンバ・コンゴレーズとチャンペータをミックスするとは面白い試みです。
元バントゥー・ド・ラ・カピタールのヴェテラン・シンガー、テオ・ブレイス・クンクをゲストに迎え、
デュエットしたルンバ・コンゴレーズのラスト・ナンバーまで、あっという間の13曲。
長年のプロデューサー業の手腕が冴えたインド洋ポップスです。

Chébli Msaïdie "HEZA" Weedoo no number (2013)

Lala Njava  MALAGASY BLUES SONG.JPG

マダガスカルでこんなブルージーな歌、はじめて聴きました。

『マラガシ・ブルース・ソング』というタイトルそのものの曲が並んだアルバム、
5人兄弟姉妹グループのジャーヴァで歌手を務めていた
ララ・ジャーヴァのソロ・デビュー作です。

ララは若い頃、近所に暮らしていたママ・サナが歌うシャーマニックな歌に強い影響を受け、
マダガスカルの伝統的なメロディにエモーショナルな歌の表情を吹き込んだ、
独自の個性を作り出していったんだそうです。

内面にぐーっと沈み込んでいくような歌は、なるほどシャーマン的。
喉をつめた苦味のある発声はブルージーな薫りを放ち、聴き手を捉えて放さない魔力があります。
ララがフランスのディープ・フォレストや
フレデリック・ガリアーノのアルバムにゲストに起用されたのも、
心の奥底の襞を揺らすような、ディープな歌声の質にあったのかもしれませんね。

このアルバムでは、元ジャーヴァのメンバーたちがララのバックを務め、
ギター、ベース、ドラムスという標準編成で、マダガスカルの伝統楽器はまったく使っていません。
それにもかかわらず、ヴァリハのフレーズを移し変えたギターなど、
サウンドは強烈にマダガスカルの伝統を感じさせるものとなっていて、
従来のマラガシ・ポップにない新鮮さに溢れています。

以前、マリのグリオ歌手バコ・ダニョンが、ンゴニやコラなどの伝統楽器を一切使わず、
ギターを中心にしたアンサンブルで聞かせたアルバム“TITATI”(07) がありましたけれど、
ララが本作で聞かせたアンサンブルも、あの名作に匹敵するものといえますね。

マダガスカルを代表するアコーディオン奏者レジス・ジザヴがゲスト参加しているんですが、
ララの音楽性をよく理解し、アコーディオンの華やかな響きを抑えたのは大正解。
ハーモニカのようにも聞こえる蛇腹の響きを強調し、
ブルージーなサウンドを盛り立てて効果を上げています。

寄せては返す波のような静かな反復を繰り返す“Blues Song” は、
メロディが希薄で語り物ともいえるような曲ですけれど、
マラガシ・ブルージーな魅力をいっぱいに湛えています。

Lala Njava "MALAGASY BLUES SONG" Riverboat TUGCD1069 (2013)

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