after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

Searching for good music of the world

カテゴリ: 東アジア

Makav 真愛  TREASURE
うわー、タイラそっくり!
CDショップが「台湾のTYLA??」と書くのも無理ない、
めっちゃチャーミングなR&Bシンガーが台湾から登場しました。
ご本人がタイラを意識しているのかどうかはわかりませんが、
歌い口がクリソツなのは、タイラのひとつ年下という同世代感なんだろうなあ。

24年の金曲獎で新人賞と最優秀原住民語アルバム賞をダブル受賞し、
昨年このデビュー作を出したという真愛。
v の発音が聞こえないので、マカと書いていいのでしょうか。
台湾の先住民 (*) であるブヌン(布農族)の出身で、
アルバム冒頭でしゃべっている言語がブヌン語なのでしょう。

* ちなみに、台湾では「原住民」と呼ばれる用語ですが、
日本で蔑称のニュアンスが強いこの語をそのまま使うことに抵抗をおぼえるので、
固有名詞をのぞいて「先住民」と書きかえることをお断りしておきます。
さらに言えば、「族」という表記も「人」と書き換えたいところなんだけど。

本作は、歌手活動を越えて台湾先住民文化のアンバサダーとして活躍する
ABAOが主宰するレーベル、Nanguaq 那屋瓦からのリリース。
近年大きな盛り上がりを見せている台湾先住民ポップス・シーンの
ハイブリッドぶりを象徴する作品ですね。
そのABAOも ‘Kingdom Lifestyle’ にフィーチャーされています。

なんとマカはすでに来日もしていて、Nanguaq 那屋瓦に所属する
パイワン(排湾族)出身の Kivi と Dremedreman(曾妮)とともに、
上野公園のTAIWAN PLUS 2023に出演していたのだそう。
なんとこのイヴェントには、薛詒丹(ダン・シュエ)も出演していたんだそうです。
https://bunboni.livedoor.blog/2025-11-17

台湾先住民の伝統音楽や民謡と、インディーロック、ヒップ・ホップ、エレクトロニカが
架け橋されてハイブラウな音楽が続々生み出されてるという事実に、まずドキドキ。
かつての垢ぬけない山地ポップスが、これほどハイ・クオリティの
インターナショナルに通用するポップスへ変貌しているのだから、
その落差たるや眩暈を覚えます。時代は変わりましたねえ。

Nanguaq 那屋瓦の作品はどれも、きらっきら輝く才能が溢れんばかりになっていますね。
フィジカルのヴィジュアルにもそれが現れていて、マカのこのデビュー作も
17センチ四方のポリプロピレン・ケースの中に、
大判の正方形に切れ目を入れて折りたたまれた厚手の用紙にくるまれ、さらにその奥に、
ブックレットが収められCDが付属されているという、凝った造りになっています。

新しいシーンの胎動を実感できるマカのデビュー作、
このワクワク感は、新年の聴き始めにぴったりですよ。

Makav 真愛  「TREASURE」  Nanguaq 那屋瓦  no number  (2025)

薛詒丹  孤獨金魚圖鑑
台湾のシンガー・ソングライター、薛詒丹(ダン・シュエ)の新作。
19年の初作EPのメロウネスにヤラれ、
22年のフル・アルバムでぐっと成長した歌声に、すっかりファンとなりました。
https://bunboni.livedoor.blog/2023-01-06

そして、3年ぶりの2作目。
一年半かけて作曲したという楽曲のクオリティは申し分なく、
優秀な演奏陣の豊かな音楽性が作品に深みを与えて、
柔らかく繊細なダン・シュエの歌声が、都会の孤独や愛を題材に、
さまざまな感情の移ろいを投影した作品に仕上げています。

たおやかなピアノときらきらしたシンセに導かれて、
ダン・シュエのシックな低温ヴォイスが流れてくる1曲目で、はや昇天。
東アジアならではの情感が溢れ出すコントラルト・ヴォイスは、
ダン・シュエ最強のユニークネスだな。

陳君豪(ハウ・チェン)のベースとドラムスが生み出すジャジーなグルーヴが
心地良いオープニングの「金魚」は、ひねりの利いたコード展開もある
フックの利いた曲で、ダン・シュエのソングライティングの良さが光ります。
後半で披露されるスキャット・ヴォーカルのさりげなさもいいなあ。
技巧のある人なんだけど、それをひけらかさないところが彼女の良さ。

前作同様、鍾衛宇と翁光偉を中心とする布陣で制作されていて、
ストリングス・セクションやホーン・セクションもフィーチャーした
生演奏によるネオ・ソウルは、ジャズに寄せたサウンドで、ヒップ・ホップ成分はなし。
オーストラリア人ベーシスト、ダミエン・バンジゴウが
切れまくったベース・ラインを聞かせる「厭倦⼀個⼈旅⾏」では、
ブレイクやリズム・チェンジを巧みに取り入れたアレンジが、めちゃくちゃカッコイイ。

リニオン、雷擎(レイチン)に続くオルタナティヴR&Bの
新世代シンガー・ソングライターとして期待されていると評判の
The Crane をデュエット相手に選んだラヴ・ソング、
「差⼀點的我們」の美しさにも胸打たれます。

それにしても、台湾の音楽シーンに集う才能の多国籍ぶりはスゴいなあ。
先のオーストラリア人ベーシスト、ダミエン・バンジゴウばかりでなく、
アトランタ出身の黒人ピアニスト、ジェイ・ダブや
ハンガリー人フリューゲルホーン奏者ゲルゴ・ビレが本作に参加しています。

薛詒丹  「孤獨金魚圖鑑 GOLDFISF IN THE TANK」  火氣音樂  no number  (2025)

Yuhan Su  OVER THE MOONS
うぉー、カッコえぇ~、めちゃくちゃ攻めてるなあ。
台湾出身ヴィブラフォン奏者ユーハン・スーの新作。
これまでスー・ユーハンと中国語表記に準じてカナ書きしてきましたが、
本人のオフィシャル・ページの英文表記に準じてユーハン・スーに改めました。

マット・ミッチェルのピアノとマーティ・ケニーのベースは前作に引き続き参加。
アルト・サックスは前々作のアレックス・ローレが復帰し、
テナー・サックスにカナダ人サックス奏者アンナ・ウェバー、
ジェイムズ・ポール・ナディアンがドラムス、
ギターのインダ・チェンとエレクトロニカのシンヤ・リンの8人と、
編成が大きくなっています。

いや~、オープニングからのけぞりました。
いたずらっぽい音を各楽器が鳴らし始めるフリーぽい演奏が始まったかと思うと、
急にギザギザしたラインをサックスが空間を切り裂き、
ついでギターとピアノがリズムを壊していくという複雑な構成。
その後もブレイクダウンあり、対位法ありのめくるめく展開が続いて、
大胆不敵なコンポジションにノック・アウトをくらいました。
う~ん、この曲の譜面を見てみたくなるなあ。

各楽器が重層的なレイヤーを生み出して、
濃密なサウンドスケープを作り上げていくかと思えば、
突然ピタッと全員がユニゾンで合わせてみたりもする。
リズムもぎくしゃくと複雑で、一定のパターンを作ることなく、
主導する楽器のソロに変幻自在に動いていきます。

作曲と即興のバランスが絶妙なユーハン・スーのジャズですけれど、
今作では作曲と即興の境目がよくわからないほど、構成が緻密です。
コンテンポラリーなモーダル・ジャズというより、
ぐっとフリーに寄せてきた印象さえありますね。

ユーハン・スーのナレーションにギターがユニゾンで付いていくイントロでスタートする
'Genius and Dumb' も、めっちゃカッコいい。
途中からスーのヴォイスが加工されて、パーカッシヴな楽器音のように断片化。
ヴィヴラフォンのソロの背後で、ギターとエレクトロニクスがインプロを繰り広げ、
ドラムスが断片的なビートで緊張感を生み出すスリリングさに、シビれます。

テナー・サックスのアンナ・ウェバーって、スゴイなあ。
オーヴァートーンやマルチフォニックをすごく効果的に使う人で、
すっかりファンになりました。
この人とスティーヴ・リーマンの2管でユーハン・スーと共演させてみたいなあ。

Yuhan Su  "OVER THE MOONS"  Endectomorph Music  EMM36  (2025)

竇靖童   空中飛人
前作『春遊』ですっかりトリコになった竇靖童(リア・ドウ)。
配信のみだった新作『空中飛人』がフィジカル化されて、CDが手に入りました。
前作も配信から1年遅れのフィジカル化だったんですよね。

この人の歌い口が、ほんとに好き。
実験的なサウンドでもこのヴォーカルがのると、ちっとも尖って聞こえない。
自己主張の強い、尖った個性のアーティストが苦手な当方には、
リア・ドウの脱力した柔らかな歌声を聴くと、ホッとするんですよ。
わざとやさぐれた声を演出する曲もあったりするんだけど、
ふんわりした感触の方が勝って、心が解きほぐれていくのを感じます。

ここ数か月、韓国のイ・ジナやヴェトナムのレナをずっと聴いているんですけれど、
アジアから出てくる若手の女性歌手に、
ぼく好みの歌声を聴かせる人が多くなってきたのは、嬉しい傾向だなあ。

移ろう景色を眺めるような浮遊感のあるアンビエントなサウンドは、
この人の夢幻的な音楽世界にぴたりと合っていますね。
デリケイトかつ繊細なプロダクションであると同時に、作り込み過ぎてもいなくて、
生演奏の感触を強く残している音作りが、すごくいい。
実験的でもナチュラルなサウンドに着地させる手腕が見事です。
5曲目なんて、ティアーズ・フォー・フィアーズを思い浮かべたりして。

ラストの奥行きのあるピアノのサウンドや、
クラリネットの生々しい響きが効果的で、充足した聴後感を与えてくれます。

竇靖童 (Leah Dou)  「空中飛人」  広東星外文化伝播有限公司  no number (2025)

Bando  SHAPE OF THE LAND
韓国の若い世代の間で伝統音楽を見直そうという気運が高まって、
ざまざまな文脈からさまざまな解釈による試みが行われていることを、
ミュージック・マガジンの特集記事「韓国トラディショナルの新潮流」で知りました。

そういえば、伽耶琴と玄琴をまったく新しい感覚で演奏する、
女性デュオのダルムがあったなと思い出しました。
そのダルムを含むアルバム・ガイドには、知らないアーティストがずらり。
あれこれ試聴してみたなかで引っかかったのが、この「半島」という名前の4人組でした。

ギター、サックス、コムンゴ、ドラムスの編成で、
韓国の風物や暮らしをモチーフとした楽曲を演奏しています。
短いモチーフを発展させたラフ・スケッチのような曲が多く、
アブストラクトな即興の要素が強く出ています。

ジャズ・イディオムを押し出さない演奏となっているので、
インスト・ロックといった感じでしょうか。
かつてのニュー・エイジとか、アンビエントなムードも少しあるかな。
韓国民謡も過度に強調されていなくて、
いわゆる<ジャズ×韓国民謡>といぅた図式から離れて
アプローチしているところに、新鮮味を感じました。

Bando  “SHAPE OF THE LAND”  NPLUG  MBMC2162  (2023)

Lee Jin Ah  HEARTS OF THE CITY Slip Case  Lee Jin Ah  HEARTS OF THE CITY  CD
韓国のシンガー・ソングライターでジャズ・ピアニストのイ・ジナ。
2年前に出た3作目を一聴して、トリコになりました。
いまヘヴィロテしてるヴェトナムのレナにも通じるコケティッシュな歌声。
ひそやかな歌い口には、王菀之(イヴァナ・ウォン)を思い起こしました。
ぼく好みの声のアジア人女性シンガー・ソングライターが続くのは、嬉しい限り。

穏やかなメロディで始まる1曲目から、心臓が高鳴りました。
楽曲を柔らかに包み込むストリング・アンサンブルに、
思わず涙がこぼれそうになりましたよ。
さりげなく転調して曲の風景を変化させたり、
はっとさせるコード展開を聞かせたりと、楽曲が凝っています。
落ち着いた静かな曲のなかに、
サンバやゴスペルをモチーフにした曲があるのも効果的です。

こうしたソングライティングや短いピアノ・ソロなどに、
なるほどジャズ・ピアニストの才を感じさせるものの、
この人にとってジャズはあくまでもスパイスでしかないようです。
ジャズとの距離の置き方が、メイ・シモネスと共通していますね。
ジャズを勉強してもジャズ・プレイヤーになるんじゃなくて、
シンガー・ソングライターを志向しているところが。

イ・ジナは91年広州市出身。
本作は「韓国大衆音楽賞(KMA)」で最優秀ポップ・アルバムを受賞したそうです。
上下に空いたスリップケースに、ジュエル・ケース入りのCDと、
56ページに及ぶブックレット(ステッカー入り)が収録されています。
上にスリップケースの表紙(横向き)の画像と
CDブックレットの表紙画像を載せましたけれど、
サブスクにはブックレット内の写真がジャケット画像として掲げられています。
これじゃ、どれがオフィシャルなジャケットなのかわかりませんね。

前回書いたユン・ソクチョル・トリオと昨年10月に日本ツアーをしていたんだそうで、
あちゃー、気付くのが遅すぎましたねえ。観に行きたかったなあ。

Lee Jin Ah  “HEARTS OF THE CITY”  Antenna  L200002771 (2023)

Yun Seok Cheol Trio
AORかシティ・ポップ、はたまたヨット・ロックかとおぼしきジャケ写なんですが、
これが韓国のジャズ・ピアノ・トリオのアルバムというのだから、えぇ?ですよね。
で、聴いてみれば、キャッチーなメロディのかなりポップな曲がずらり。
ジャズというより、フュージョン/スムース・ジャズのテイスト濃厚なアルバムであります。

ユン・ソクチョルはソウル出身のジャズ・ピアニスト。
K=ポップのプロデューサー、セッション・ミュージシャンとしても活躍している人で、
童顔の写真にまだ若い人なのかと思ったら、すでに40歳。
ベースのチョン・サンイ、ドラムスのキム・ヨンジンとのユン・ソクチョル・トリオも、
すでに結成15周年だそうです。

オープニングの1曲のみ、テナー・サックス、
アルト・サックス、トランペットがゲスト参加。
海沿いの道路をドライヴするBGMにぴったりな、疾走感溢れるトラックです。
ユン・ソクチョルはアクースティック・ピアノと
シンセサイザーの両方を弾いているんですが、
録音とミックスに特徴があって、ピアノの音がデッドに聞こえるピアノの響きが独特です。

中音域がとてもファットで、ミュートしているような高音域のくぐもった響きは、
かなり変わった音処理に聞こえます。
前面にせり出してくるドラムスのスネアやベースにも生々しさがあって、
こういう録音って、ジャズやフュージョンで聴いたことがないですね。
どういうエフェクト処理をしているのかしらん。

ポップな楽曲と独特のサウンド処理に、
繰り返し聴きたくなるアクースティック・フュージョン作です。

Yun Seok Cheol Trio  “MY SUMMER'S NOT OVER YET”  Antenna  L200003051  (2024)

鄭宜農  給天王星   鄭宜農  圓缺
鄭宜農(イーノ・チェン)は台湾インディのシンガー・ソングライター。
俳優、作家としても活動をしている人だそうです。
前作『水逆』(22)で初の台湾語アルバムを制作して、
金曲獎の最優秀台湾語アルバム賞と最優秀台湾語女性歌手賞をダブル受賞。
それに続く台湾語アルバム第2作となる新作が届いたので、聴いてみました。
せっかくなので同時入荷した19年の旧作『給天王星』も購入。

まず『給天王星』を聴くと、柔らかなイーノ・チェンの歌声と
たゆたうエレクトロが心地良い1曲目の「2017,你。」から、
映像的な広がりを持つサウンドスケープに引きこまれます。
一転、タイトなリズム・セクションがリードするグルーヴィな「街仔路雨落袂停」では、
ホップするシンセ音が幾層にもレイヤーされたプロダクションが心地いいったらありません。

アクースティック・ギター一本で始まる『賊』も、
途中からシンセが優しく楽曲を包み込むように加わっていくアレンジとなっていて、
シンセサイザーの使い方がすごくセンスがいい。
クレジットをチェックすると、シンセサイザー奏者の名は何俊葦(チュンホ)。
南瓜妮歌迷俱樂部 PUMPKINney Fan Club という
4ピース・バンドのメンバーだそうで、多くの曲でプロデュースやアレンジに関わっていて、
 才能を感じさせます。

そして最新作の『圓缺』は、つぶやきヴォーカルの『給天王星』から一転、
ヴォーカルががらりと逞しくなって、印象激変。
5年の間に音楽性もだいぶ変化をしていたようで、
ハードエッジなエレクトロ全開のサウンドに変貌しています。
こりゃまた『給天王星』とは別世界ですねえ。

めちゃめちゃ攻めたサウンドに仕上げた『圓缺』を、
イーノ・チェンと共同プロデュースしたのは、なんとチュンホ。
いやぁ、『給天王星』でデリカシーに富んだアレンジをしていたのと同じ人だとは。
テクノぽいビートばかりでなく、かなり実験的な音使いも随所でみられます。
両極を示すこの2作は、リスナーが分かれそうですねえ。

ところで本作のパッケージは、かなり凝った特殊仕様となっています。
ブックケースのような形状ながら、真ん中で切断されていて、
中に銀紙が巻かれたスリップ・ケースの中に、
スポンジ台座の上に載せられたCDトレイとブックレットを収めていて、
ダブル・スリップのような作りになっています。
前作の成功で豪華パッケージの制作費が出たのかしらん。

鄭宜農  「給天王星」  火氣音樂  FIREON0022/RW0039  (2019)
鄭宜農  「圓缺」  邊走邊聽  WMCL001  (2024)

Otis Lim  PLAYGROUD
自分の犬が可愛くってしょうがないという気持ちは、
犬を飼っている人の誰もに共通する感情。
そんな犬バカの気持ちが、
CDジャケットやインレイの写真の数々から伝わってくるCDですね。

偶然耳にして気に入った韓国のR&Bシンガーのデビュー作。
音だけ先に聴いてオーダーしたので、
CDが届いてはじめてヴィジュアルを見て、ほっこりしちゃいました。

愛犬を抱っこしている主人公のショットや、
芝生広がる冬の晴れた公園で、ボールを投げようとする主人公と、
その後ろから駆け出し始めている犬のショットなど、
主人公と犬の愛情がにじみ出て、微笑ましい限りです。
じっさい本作は、主人公オティス・リムの愛犬に捧げたものだそうで、
写真のモデルが彼の愛犬なんですね。

K-POPをまったく知らないので、
韓国のR&Bもぜんぜん聴いたことがないんですが、
この人を聞くと、すんごいレヴェルが高いのがわかりますね。
シティ・ポップみたいな曲もあるなど、
ドリーミーでポップなトラックが多く、
丸みのあるほがらかなR&Bは、幅広い支持を得られそう。

ムーンチャイルドばりの浮遊感のあるサウンドはスムースに流れるけれど、
細部にかなりこだわったアレンジが聴きとれますね。
要所要所にファニーな音を加えたりしていて、遊びゴコロも満載。
ドラムスのクレジットがないあたり、ドラム・パッドを使ってるのかな。
人力にしか聞こえないんだけど、最近の機材やアプリって、スゴイね。

こうしたサウンドづくりもすべてオティス自身が手がけていて、
デビュー作で作曲のみならずアレンジとプロデュースもこなすとは、
こりゃあ大器だな。

Otis Lim  “PLAYGROUND”  EMA  YP0425  (2024)

竇靖童 春遊.jpg

うわー! カッコえぇ~。
今の中国って、こんなことになってんの!?
なんのプロフィールも知らずに聴いた
中国人シンガー・ソングライターのアルバムを聴き終えて、
ほおっとため息がでました。

ものスゴイ才能の持ち主なのに、才気走ったギラギラ感がなくて、
育ちの良さが透けて見える、穏やかな人物像が好感もてますねえ。
表に出るのは鋭さではなく、まるっこさで、
これ見よがしな風を切る様子なんて、みじんもない。
なんせ終始つぶやくようなヴォーカルに徹しているし。
こういう若い才能に出会うと、アタマが下がるというか、降参!て感じ。

ギターと口笛で始まるほんわかとした「早上好」は、
猫の鳴き声やさまざまな日常風景の音が取り入れられた脱力ソング。
続くキュートなキーボード音に、懐かしいスクラッチ音が
たっぷりフィーチャーされる「Monday」のなんてカワイイこと!
ふんわりしたムードのままに続く、
ゆる~いジャジー・ヒップホップの「北京!咖啡!」なんて、ヌジャベスだぁ!

コンガの響きとギターのカッティングのベーシックな音の上に、
素っ頓狂なギターにコーラス、スクラッチなどなど、
奇妙な楽器音が行き交うよじれたアフロビートの「中場休息」。
ダウン・ストロークのギターを浮き彫りにして、歌やコーラスに
ざまざまな楽器音が現れては消えていく、はかない「狗熊」。

スティール・ギターがたゆたい、ストリングス・セクションと
かすかな電子音が交じり合う白昼夢のような「河流」。
スクエアな太鼓のビートと電子ビートが、
無機的なサウンドをかたどるアンビエント・エレクトロな「Hello」。
古いアップライト・ピアノがぽろんぽろんと弾かれる
「同一片天空下」は、その温かな響きに泣きそうになりました。

ひととおりアルバム聴き終えて、竇靖童(リア・ドウ)のバイオを
すぐさまチェック、ウィキペディアを読んで腰抜かしました。
なんと、竇唯(ドウ・ウェイ)と王菲(フェイ・ウォン)の娘だって!
なんだってぇ~、まぢですか! うわぁ、知らずに聴いてよかった。
フェイ・ウォンの娘だなんて聞いたら、ぜったいに手を出さなかったよ。
フェイ・ウォンはボクの天敵ですもん(苦笑)。
スカしてるヤツが大ッキライな当方とは、一番相性の悪い相手です。
ドウ・ウェイはぜんぜん問題ないんだけど。

Leah Dou GSG MIXTAPE.jpg

このあと、一緒に買った20年作を聴いたら、
ダウナーなエレクトロ・ヴァイブに満ちていて、本作とだいぶニュアンスが違う仕上り。
なるほどオルタナ気分の尖ったところなど、フェイ・ウォンの片鱗は感じられるな。
それでも母親みたいなスカした感じがないのは、二世の育ちの良さか。

『春遊』は、リア・ドウにとって初の北京語のアルバムなのだそうで、
トリップ・ホップやエレクトロ・ポップを通過しながら、
中華圏らしい優雅な美学の境地に至ったのを感じさせる作品です。

竇靖童 (Leah Dou) 「春遊」 広東星外文化伝播有限公司 no number (2024)
竇靖童 (Leah Dou) 「GSG MIXTAPE」 広東星外文化伝播有限公司 no number (2020)

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