after you

bunboni こと 荻原和也 の 音楽案内所 musicaholic ブログ(隔日刊 2009年6月2日より)にようこそ。

Searching for good music of the world

カテゴリ: 西・中央ヨーロッパ

Ireke  AYÔ DELE
痛快なアフロ・グルーヴを聞かせたデビュー作で、
さまざまなリズムを研究して咀嚼していることに感心させられた、
フランスのビートメイカー・デュオ、イレケの2作目。

ジュリアン・ジェルヴェとダミアン・テッソンの二人は黒子に徹して、
ヴォーカルの女性たちを前面に押し出すのは今作も同様。
今回フィーチャーされた歌手は3人となっています。

前作に続き、アニエス・エレーヌがフランス語で5曲を歌っています。
フランス語の発音が大の苦手なぼくでも、この人のフランス語は苦になりません。
ダンサブルなリズムにのる歌声は涼感たっぷりで、心地良いことこのうえなし。
ベニン出身のナエル・ホクソは、ヨルバ語と英語で歌とラップを4曲で披露します。
このほか、ドウデリンのリード・ヴォーカル、オリヴィアが歌う1曲もあります。

ソングライティングが向上して、キャッチーなトラック揃いになった今作、
よりファンクな要素が前景化して、エレクトロの存在感も強く打ち出されています。
ブロークン・ビートにダブ、アフロビートが交叉するプロダクションは
見事な仕上がりで、洗練度がぐっと増しています。
しなやかなサウンドと丸みのあるグルーヴが、このユニットの美点だな。

Ireke  "AYÔ DELE"  Underdog  UR850862  (2025)

Roforofo Jazz  FIRE EATER  Roforofo Jazz  RUNNING THE WAY
うわー、こんなグループがいたんですねえ。
パリのアフロビート・バンド、ロフォロフォ・ジャズ。
世界各地から次々登場するアフロビート・バンドにヘキエキしていたせいか、
視界に入らなかったのかもしれませんね。

フェラ・クティの「ロフォロフォ・ファイト」から
その名を取ったのだろうロフォロフォ・ジャズは、
ギタリストでアフロビート・アクティヴィストのマルタン・スミスが結成した7人組。
19年のフェラブレーションに招待されて演奏した実績もあるグループです。
20年に出したデビュー作 “FIRE EATER” を聴いていっぺんで気に入り、
23年のセカンド作 “RUNNING THE WAY” と一緒にオーダーしました。

キッチュなアートワークも強烈な “FIRE EATER” ですけれど、
一聴で気に入ったのはフロントのMC、Days (RacecaR)の存在感ゆえ。
こういう力量のあるヴォーカリストがいると、聴きごたえが違います。
ぼくがあまたあるアフロビート・バンドの多くを評価しない理由のひとつが、
ヴォーカリストの力量不足。フェミ・クティをボロカスに言うのも、
そのヘナチョコ・ヴォーカルゆえ。
https://bunboni.livedoor.blog/2021-02-21

Days (RacecaR)は、ヴォーカリストというよりもラッパーだけれど、
重厚でオールド・スクールなヒップ・ホップの味わいがあり、
畳みかけてくるフロウにはフェラ・クティの面影もあって、感じ入っちゃいましたよ。
ギター、キーボード、ベース、ドラムス、バリトン・サックス、トランペット6人の
演奏力も高く、ライヴ・バンドらしいエネルギーに満ち溢れていて、申し分ないですね。

聴きごたえがあるのは、楽曲がよく練られていることもありますねえ。
構成がけっこう凝っていて、がらっと場面展開するし、リズムもどんどん変化していくし、
ライヴ感たっぷりのグルーヴを打ち出しながらも、
単調になる瞬間を作らずに進行していくハイブリッドなアレンジが見事です。
メンバーがデモを持ち寄り全員で作曲していくという手法を取っているそうで、
ふんだんなアイディアはそうした作曲手法が功を奏した結果なのでしょう。

アフロビート、アフロ・ファンク、ジャジー・ヒップ・ホップ、ジャズを独自解釈した
ロフォロフォ・ジャズ、ライヴ観たいねえ。

Roforofo Jazz  "FIRE EATER"  OfficeHome  OH004CD  (2020)
Roforofo Jazz  "RUNNING THE WAY"  OfficeHome  OH006CD  (2023)

Grand Tabazù  BAZAÀR
フランスから痛快な祝祭音楽オーケストラが登場!
スーザフォン、バリトン・サックス、アルト・サックス/ソプラニーノ、トランペット、
トロンボーン2の6管に、バンジョー、アコーディオン、パーカッション4の12人組。

『バザール』のアルバム・タイトルどおり、
世界各地の音楽がこれでもか!てくらい盛り込まれていて、
その音楽性の幅広さには、舌を巻きました。
デビュー作というけど、この連中ただもんじゃないと思ったら、
インペリアル・カルテットとマザルダが合体したユニットだったんだね。
Imperial Quartet  All Indians
サックス2、ベース、ドラムスのインペリアル・カルテットは、
クレオール・ジャズを志向するユニークなグループ。
4作目の “ALL INDIANS?” では米国南部ルイジアナをテーマに、
先住民、アフリカン・アメリカン、ケイジャンが混在する文化にアプローチしていました。
一方マザルダは、ライ歌手ソフィアン・サイーディとの共演作で、
まさしくワールド・ミュージック全面展開の音楽性を発揮していたグループ。
https://bunboni.livedoor.blog/2018-04-28

なるほどこの両グループの精鋭が集まれば、この音楽ができあがるのもナットク。
ンバラ、マンデ・ポップ、アフロ・ペルー、シャービ、ケイジャン、セカンド・ライン、
参照される音楽の多彩さに、もう目も眩みそうですよ。

シークレット・トラックでは、渋さ知らズに変異したような
アヴァンギャルドなプレイも聞かせます。
う~ん、ライヴ観たいですねえ。

Grand Tabazù  "BAZAÀR"  Airfono  AF04434200  (2025)
Imperial Quartet  "ALL INDIANS?"  Compagnie Imperial  ci006/1/1  (2022)

Laíz & The New Love Experience  ELA PARTIU.jpg

サン・パウロに生まれ、アメリカ経由でベルリンへ渡ったライズは、
ブラジリアン・ソウル、ファンク、トラップ、レゲエ、アフロビートをミクスチャーした
カラフルなブラジリアン・ヒップ・ホップを聞かせてくれます。

ジャンル横断の豊かな音楽性は、ベルリンという地で、
同じディアスポラである移民ミュージシャンたちとの共同作業から
生み出されたもののようで、生演奏というのが嬉しいですね。
ブラジリアン・ヒップ・ホップでは、かつてサウンド・クリエイターの才能に瞠目した
クリオーロ以来の逸材といえるんじゃないのかしらん。
クリオーロがUKから世界配給されたように、
ライズはベルリンから世界に発信されたのですね。
https://bunboni.livedoor.blog/2012-09-28

ライズはマルセロD2(・デー・ドイス)のヒップ・ホップを通じて
サンバの伝統を向き合ってきたのだそうで、
スラム育ちのサンバの本質を、ストリートのヒップ・ホップが継いでいるのが、
ここでも証明されたといえそうです。

ゲスト陣には、ジェンバー・グルーヴのガーナ人シンガー、エリック・オウス、
https://bunboni.livedoor.blog/2024-05-16
スーダンのトラップ・ラッパー、ゼヨ・マン、
コート・ジヴォワールのシンガー、VOVAが参加しています。

ベルリンのアンダーグラウンドなヒップ・ホップからブラジル音楽を再発見し、
ブラジル人のアイデンティティを探し求める旅のなかで、
リトル・シムズやサンファ・ザ・グレートに共感する感性が、
才能豊かなディアスポラのミュージシャンを呼び寄せたのでしょう。
主役のライズのフロウが埋もれがちになるほど、演奏は雄弁で、
ネオ・ソウルの洗練や、ジャジーなホーンのジャズ・テイストに、
耳をそばだてさせられます。

Laíz & The New Love Experience "ELA PARTIU" Besser Samstag & Agogo AR165CD (2024)

Wolfgang Valbrun  FLAWED BY DESIGN.jpg

胸をすくソウルフルな歌いっぷりに、聴き惚れました。
この人もまたレトロ・ソウルの文脈にのって出てきた新人らしく、
下敷きにしているのは70年代ソウルですね。

経歴を見て、驚きました。
ニュー・ヨーク出身。音楽好きの母親の影響で、
ソウル、ゴスペル、ジャズを聴いて育ち、
10代でパリに引っ越してヒップ・ホップ、ブラジル、ラテンへと興味を広げ、
その後ベネズエラで生活してサルサ、メレンゲを吸収し、
フランスに戻ってロンドンをベースとするソウル・コレクティヴ、エフェメラルズに、
ヴォーカリストとして参加したという人です。

エフェメラルズは、70年代のディープ・ソウルにターゲットを置いたグループで、
エフェメラルズのメンバーのバックアップで制作された
ウォルフガング・ヴァルブランのデビュー作も、同路線といえます。
エフェメラルズのソロ・プロジェクトといえるのかもしれませんね。

サイケデリックな感覚も強いローファイなサウンドで、
ラグドなフィールが横溢するも、あざとさはありません。
狂おしく歌うウォルフガングのヴォーカルに真実味があって、
それが歌に説得力を与え、聴く者の胸を打ちます。

パリに住むウォルフガングが、ロンドンにいるメンバーと
レコーディングするというのも一苦労ありそうで、
サックス奏者はベルリンにいたとのこと。
ファイル交換によるレコーディングが、COVID禍ですっかりお馴染みになったとはいえ、
全員揃ってせーの!で録音しなけりゃ、
なかなかこの一体感はでないですよね。

Wolfgang Valbrun "FLAWED BY DESIGN" Jalapeno JAL443CD (2024)

Parranda La Cruz.jpg

フランスのリヨンから、また面白いグループが登場しました。
ベネズエラ、カラカス出身のシンガー、レベッカ・ロジャー・クルースが
18年に結成したパランダ・ラ・クルースは、グループ名が示すとおり、
ベネズエラのカーニヴァル音楽パランダを標榜する4人組。

ベネズエラのカリブ海沿岸で繰り広げられるカーニヴァル音楽のパランダは、
生命感あふれる祝祭の音楽ですけれど、
彼らが演奏するのは伝統音楽ではなく、大西洋とインド洋の狭間から、
国際的なフォークロアの坩堝を新たに生み出そうとするものです。

レベッカがリヨンで活動するマロヤのコレクティヴ、
チ・カニキのシンガー、カマルゴー・ドラトゥールと出会ったことから、
アフロ・アトランティック音楽の新たな冒険が始まったとのこと。
チ・カニキでルーレを叩くリュック・モインドランゼも
パランダ・ラ・クルースの一員となっています。

パランダ・ラ・クルースは、アフロ=ベネズエラ音楽の太鼓クマコ、
3台一組の細長太鼓クロ・エ・プヤ、竹筒キティプラス
(竹筒を石や地面に叩きつけて音を出す楽器)に、
レユニオンのパーカッションのカヤンブ、ルーレ、
さらにコンガやカホンも使って歌うパーカッション・ミュージックで、
ハイブリッドなアフロ・アトランティック音楽をクリエイトしています。

デビュー作となる本作には、アフロ・ベネズエラ音楽の重鎮フリオ・サンティアゴ、
「ベネズエラの黒い声」ベツアイダ、ネレイダ・マチャドの3人をゲストに迎え、
ベネズエラのカリブ海沿岸で繰り広げられるカーニヴァル音楽の祝祭を蘇らせます。
パランダのリズムにマロヤのリズムが交錯するところが、聴きどころですね。
生命力あふれる声と打楽器が奔流となって、
伝統と現代を共鳴させることに成功していますよ。

それにしても、リヨン、すごいな。
アフロ・ミュージック新時代を発信する最重要地じゃないですか。
https://bunboni.livedoor.blog/2017-04-17
https://bunboni.livedoor.blog/2022-10-02
https://bunboni.livedoor.blog/2022-11-07
https://bunboni.livedoor.blog/2024-04-12
https://bunboni.livedoor.blog/2024-04-18

Parranda La Cruz "PARRANDA LA CRUZ" Lamastrock & P.A Gauthier Éditions LAM114-387 (2023)

Wassa Sainte Nébuleuse  NOIRE TO PEAU.jpg

コレはいったい、どういう出自の音楽なんでしょう???

西アフリカのさまざまな音楽を参照しているんだけど、
歌う主の声はアフリカンではなく、白人なのは明々白々。
ヨーロッパ白人がアフロ・ポップをやると、
どうしても音楽がファッションになりがちなんだけど、
この音楽には個人的な切実さがあって、演奏も借り物らしからぬこなれ感がある。

メランコリックでダウナーなトリップ・ホップのようなフィールと
アフリカのグルーヴが同居する魔訶不思議な音楽。
ワッサ・サント・ネブリューズとは、いったい何者?
デジパックのパネルに長い献辞があるものの、
ミュージシャンのクレジットがなくて、皆目正体がわかりません。

調べてみると、ワッサ・サント・ネブリューズは、
ジャケットに映る女性歌手ナニ・ヴィタールのプロジェクトなのですね。
ナニ・ヴィタールは、ブルターニュのモルビアン湾に浮かぶ
小島ゆいいつの混血家族に生まれ育ったのだそうです。
トーゴ出身の祖父と母の話を聞きながら、西アフリカへの情熱を育む一方、
自分が「カフェ・オ・レ」であることを周囲から教わり、
みずからのアイデンティティを探す旅に出たといいます。

マンディンゴの伝統的なレパートリーと、
アフロ・コンテンポラリーな表現を探求するダンサーとして8年間活動した後、
ナント出身のエレクトロ・ワールド・グループと1年半を過ごし、
その後自身の作曲に取り組むようになったとのこと。
ナニが憧れるウム・サンガレやロキア・トラオレと同じバンバラ語で歌詞を書き、
その歌を表現すべく、15年にワッサ・サント・ネブリューズを結成したのですね。

ミュージシャンたちはすべてフランス人のようで、
コラを弾いているのがゆいいつのアフリカ人音楽家で、
トゥマニ・ジャバテの甥っ子のアダマ・ケイタですね。
ワッサ・サント・ネブリューズをアフロ・フュージョンと称するテキストもみかけますが、
深い内省とデリカシーに富んだこの音楽に、
そんなチープなラベリングをするのは不適切だな。

そもそもフュージョン寄りのサウンドではなく、
ドラムスはかなりロック的だし、ギターはマンデ・スタイルであったり、
トゥアレグのイシュマール・スタイルであったりと、曲によって弾き分けています。
ノクターンをイメージする詩的な音楽は、ヨーロッパの知性を強く感じさせながら、
そのインスピレーションをアフリカに求めているのが、とても新しく聞こえます。

Wassa Sainte Nébuleuse "NOIRE TO PEAU" no label no number (2024)

Otis Sandsjö  Y-OTIS TRE.jpg

首を長くして待っていたオーティス・サンショーの新作!
オーティス・サンショーはベルリンを拠点に活動する、
スウェーデン人テナー・サックス奏者。
アルト・クラリネット、フルート、バリトン・サックス、
ドラムス、ローズ、シンセサイザーもプレイし、実験的なジャズを演奏しています。

本作は、コマ・サクソ率いるベーシスト、ペッター・エルドと
https://bunboni.livedoor.blog/2023-12-16
キーボード奏者ダン・ニコルズの3人による “Y-OTIS” プロジェクトの3作目。

Otis Sandsjö  Y-OTIS.jpg Otis Sandsjö  Y-OTIS 2.jpg

18年の初作では、
アブストラクトなアクースティックなジャズのフォーマットがベースにあって、
そこにエレクトロやサンプリングを付け加えていくという作りになっていて、
実験的な試みがまだ手探り状態でしたけれど、
20年の第2作になると、プリ・プロダクションの段階から
曲のイメージを膨らませて完成形に仕上げているようで、
コンポジションと即興の自由度が増したのを感じます。

おそらく断片的なサウンド・メモを膨らませて、
曲に仕上げていくような作曲をしているんじゃないかと思うんですが、
ラフ・スケッチとなるアイディアがさまざまに繋げられていて、
それによってリズムの構造も多彩になっている面白さがあります。
今作では、トロンボーンやパートごとに複数人のドラマーを起用するほか、
アディショナル・サウンド・デザインとクレジットされたゲストも参加しています。

実験的なのにエクスペリメンタルな感じはしなくて、
柔らかに浮遊するようなドリーミーな空気感がすごくいい。
ムーンチャイルドとかキーファーあたりにも通じるムードといえばいいかな。
サンショーはこの音楽をリキッド・ジャズと呼んでいますが、
さまざまなジャンルが溶解して液体になったという意味なんでしょうか。
ヒップ・ホップを通過した世代のエレクトロニカ・ジャズのサウンド・テクスチャが、
たまらなく魅力的です。

Otis Sandsjö "Y-OTIS TRE" We Jazz WJCD63 (2024)
Otis Sandsjö "Y-OTIS" We Jazz WJCD08 (2018)
Otis Sandsjö "Y-OTIS 2" We Jazz WJCD26 (2020)

divr  IS THIS WATER.jpg

衝撃のピアノ・トリオが登場!
1曲目のイントロではや、ぎゅっと耳をつかまれちゃいましたよ。
無機的な音魂を叩くピアノ、いびつにずれたリズムを叩くドラムス、
チェンバロのようなトレモロを響かせる内部奏法。

なに、このカッコよさ!
スイスのトリオのデビュー作で、ぼくが注目するフィンランドのウィ・ジャズからの新作。
このレーベルの作品って、ぼくのツボに見事ハマるなあ。
グループ名はディヴルと読めばいいのかな。
一聴で金縛りにあっちゃって、CDが届くのを首を長くして待っていました。

抽象的なコンポジションを、
フリー/アンビエント/ミニマルな手さばきで演奏するジャズ。
まったくエレクトロを使用しないアクースティックの編成なのに、
電子音楽のようにも聞こえる不思議さ。

モチーフの断片から即興的に発展したような曲が多くて、
ミニマルなフレーズの連なりにいっさい甘さのないところが、いい。
物憂げなコードも抒情を呼びよせないので、音楽がキリッと引き締まります。
ピアノがギザギザとした弧を描いて、エネルギッシュにかけあがっていく
レディオヘッドのカヴァー ‘All I Need’ など、もうドキドキが止まりません。

実験的なアンビエント・ジャズのキーボード奏者ダン・ニコルズが、
ミックスとポスト・プロダクションをしていて、
このポスト・プロダクションがかなり利いていますね。
ピアノをガムランのような音に加工したりしていますよ。
アブストラクトにしてエレガントな仕上がりは鮮やかです。

まもなくウィ・ジャズから届くオーティス・サンショーの新作も、
ダン・ニコルズ、ペッター・エルドとの3人による作品なので、
こりゃあ、めちゃめちゃ楽しみだなあ。

divr "IS THIS WATER" We Jazz WJCD60 (2024)

Nguyên Lê Trio  SILK AND SAND.jpg

ヴェトナム系フランス人ギタリスト、グエン・レの新作。
19年の前作も年の暮れに聴いた覚えがありますけれど、
今回もまた年末に聴いているのでした。今年の3月に入荷していたんだけど。
https://bunboni.livedoor.blog/2019-12-29
今作もグエン・レらしいワールド・ジャズが全面展開した作品となっていますね。

ぼくがグエン・レのジャズをワールド・ジャズだという解釈をしているのは、
ジャズがグローバル化しているというのとは別の文脈で、
ワールド・ミュージックのジャズ的展開と捉えているからです。
グエン・レは、音楽教育機関を経ずに独学でジャズ・ミュージシャンとなった人で、
マルチニーク、カメルーン、セネガル、モロッコ出身ほかのミュージシャンが集まった、
ウルトラマリンというグループへの参加がキャリアのスタートでした。

グエン・レはロック、ファンク、ジャズをベースに、自身のルーツである
ヴェトナムの伝統音楽を自分の音楽に取り込むのと同じ作法で、
アフリカ、カリブ、アラブ、アジアなどさまざまな音楽家との交流を経ながら
マルチカルチュラルな音楽世界を生み出してきました。

グエン・レのワールド・ジャズが、けっして無国籍音楽とならないのは、
それぞれの音楽要素がフュージョン(融合)して溶けて消えてしまうのではなく、
それぞれの独自性を輝かして、ハイブリッドな音楽に昇華させているからです。
まさしくそれは、パリを拠点に活動する移民系音楽家のなせる業でしょう。

トリオ名義の本作は、前作に続くカナダ人ベーシストのクリス・ジェニングスと、
スティングのバンドで活躍するモロッコ人打楽器奏者ラーニ・クリジャが参加。
ゲストにサラエボ出身のトランペッター、ミロン・ラファイロヴィッチ、
ウルトランマリン時代の仲間のカメルーン人ベーシスト、エティエンヌ・ムバッペ、
フランス人フルート奏者シルヴァン・バロウが加わります。シルヴァンはここでは、
インドの竹笛バンスリ、アルメニアのダブルリードの木管ドゥドゥクを吹いています。

冒頭から変拍子使いで、クランチ・サウンドのギターが楽しめます。
グエン・レの楽曲は11拍子を多用するんですけれど、
今作には十進記数法を逆手に取った ‘Onety-One’ なんてタイトルの曲もあります。

これまでワールド・ジャズと形容していたグエン・レのジャズですけれど、
むしろマルチカルチュラル・ジャズと呼んだ方がいいのかもしれないと思い直しました。

Nguyên Lê Trio "SILK AND SAND" ACT 9967-2 (2023)

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