
3月に母が亡くなり、以来二世帯住宅の階下で暮らしていた
両親の遺品整理をずっと続けているんですが、
思いがけないものを見つけました。
トリオ・ロス・パンチョス、62年来日時の公演パンフレット。
3歳の時、父の膝の上で
トリオ・ロス・パンチョスのコンサートを観たことを前に書きましたけれど、
https://bunboni.livedoor.blog/2022-01-13
その時のパンフレットだったんですね。これは見たことがなかったなあ。
胸がきゅうっとなって、しばし声が出ませんでした。
2・3歳のぼくが、父がかけるレコードで夢中で踊っていたのは、
ソノーラ・マタンセーラやペレス・プラードといったキューバ音楽でした。
ところが、今回父のコレクションを整理していたら、
圧倒的多数を占めているのはメキシコ歌謡だったんですね。
高校生の時に父のレコード・コレクションを再発見して、
片っ端から聴いたので、レコードは全部見覚えはあったものの、
こんなにメキシコものがあったのかと驚かされました。
あらためて昭和30年代のラテン・ブームは、
メキシコ歌謡が人気の筆頭だったことを思い知りました。
リラ・ダウンズの新作を聴いていて、
父がリラを聴いたら、どう思っただろうなあと考えてしまいました。
カンシオーン・ランチェーラやノルテーニャのコリードやクンビアを、
シンガー・ソングライターの立ち位置から取り入れているリラの音楽は、
伝統音楽とは別物だということは、すぐに聴き取れたはずです。
そのうえで、チューバがぶりばりと低音を響かせるバンダのサウンドは、
きっと気に入ったんじゃないかなあ。
それで思い出したのが、ポール・サイモンの‘Take Me To The Mardi Gras’。
この曲でオンワード・ブラス・バンドがストリートを練り歩いていくようなシーンが
出てくると、きまって父は「ここがいいねえ。ポール・サイモンは
ニュー・オーリンズの音楽をわかっているね」と嬉しそうに言ったものでした。
この曲がきっかけで父もポール・サイモンが好きになり、
74年にポール・サイモンが来日した時は、父と一緒に武道館へ観に行ったんだっけな。
たしか中学を卒業した春休みでしたね。
父のレコード・コレクションには、ニュー・オーリンズ・ジャズの
クラリネット奏者ジョージ・ルイスのレコードもありました。
メキシコからニュー・オーリンズ、ポール・サイモンへと話が脱線しちゃいましたけれど、
ブラスバンド/バンダ、シンガー・ソングライターという共通項に、
父の笑顔が目に浮かびました。
Lila Downs "LA SÁNCHEZ" Sony 196588445125 (2023)