
グローバルな活躍をみずからの音楽性にこれほど見事に還元している
アフリカ人アーティストは、ジュピテール&オクウェスをおいて他にいないんじゃないかな。
前作 “NA KOZONGA” の記事で「野性と洗練」と題しましたけれど、
4年ぶりの新作にも、まったく同じことがいえます。
今作では12曲中9曲をメキシコ・シティでレコーディングしていて、
リオ出身のブラジル人シンガー、フラヴィア・コエーリョ、
メキシコの先住民(サポテカ)ラッパー、マーレ・アドバテンシア・リリカ、
コンゴ民主共和国のシンガー、ソイ・ンセレをゲストに迎えています。
20年の南米ツアー中に構想された本作は、
ツアー終了後の帰国前にコロナ禍でメキシコでの小休止を余儀なくされ、
ラテン・アメリカの文化にどっぷりと浸かる貴重な体験によって生み出されたといいます。
グァダラハラとメキシコ・シティのスタジオで時間を過ごし、
サントラ『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で注目を集めた
プロデューサーのカミーロ・ララほかと仕事をしたんですね。
コンゴ民主共和国の抑圧や不正義に対抗するジュピテールたちの意思が、
世界中の抑圧されたコミュニティの権利と正義を求める
メキシコ先住民サポテカ人ラッパーと共鳴しあうのも当然で、
パワフルなオクウェスのサウンドと相乗効果をもたらして爆発しています。
刻むギターのきしむ音や弾むベース・ラインがドライヴして、
熱帯雨林の破壊への怒りをダイレクトに伝えています。
大西洋を隔てた2つの大陸でアフリカの人々が共有してきた歴史に
インスパイアしあった作品で、ダークでヘヴィな面ばかりでなく、
軽快な身のこなしを聞かせるダンス・トラックでは、
異文化の出会いのなかにも両者が共有し合う親密さを感じさせ、
ジュピテール&オクウェスの音楽性の成熟を見る思いがします。
Jupiter & Okwess "EKOYA" Airfono AF03801204 (2025)